ネコ奴隷

裕雨(ゆう)

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青い瞳のネコ

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 休日の昼頃にふと電話がかかってきた。

「相談ごとですか?」

「ええ、この後時間開いてないですか?」

「別に構わないですよ?」

「それなら1時半頃に私の家まで来てくれます?」

「はい、分かりました」

 近所の山口さんから相談ごとがあるという電話だった。
 近所での付き合いが殆ど無い私にとっては頼られるということは少し嬉しかった。

 玄関の前まで来た。家からもそこまで遠くは無く、徒歩約五分程度だった。
玄関のチャイムを鳴らそうとすると手をのばすと、急に背後から冷っとする様な視線を感じた。びっくりして後ろを振り向いたがそこには誰もいなかった。
 私はほっと息を漏らすと、チャイムを鳴らした。
 しばらくすると山口さんが出てきた。こうして顔を合わせるのは久しぶりだ。

「いらっしゃい、あがってください」

「お邪魔しまーす」

 そう言って私は家の中に入った。一人暮らしのため、家は思ったより小さかった。
 和室に連れて来られ、お茶を入れて来るということで、何もない部屋に一人取り残された。机の側に座布団を敷き、その上に正座して正面を向いたままぼーっとしていた。

 すると、不意に何かが膝を掠れるのが分かった。そのまま目を落とすと、そこには全身真っ黒の黒猫がいた。

「うっわ!びっくりした」

 気配が感じられなかったもので、思わず声が出てしまった。

「あらあらごめんなさいねえ、うちの子がびっくりさせちゃったみたいで」

 そう言いながら、お盆の上にコップを二つ乗せて山口さんが戻って来た。

「すみません変な声出してしまって……」

「別に構わないですよ」

 山口さんは私の向かい側に座ると、にっこりと微笑んだ。

「以前ネコが苦手って言ってませんでしたっけ?」

 山口さんの膝の上に乗っかろうとするネコを見て私は言った。

「ちょっと前まではあまり好かなかったのだけど、このネコが来てからはネコのことが好きになったの」

 膝の上でネコを撫でる山口さんを見ていると、また、不意に冷たい視線を感じた。辺りを見回すがそれといった物は見受けられない。そこで私は再び山口さんに視線をもどそうとしたときだった。ネコが青く光る目をこちらに向けて私をじーっと見つめているのだ。目があってしまった私は寒気がした。
 山口さんに撫でられているのに、少しも気持ち良さそうにしていない、ただ私の方を青いく光る目で見つめているのだ。
 怖くなった私は目を逸らすと、山口さんに話かけた。

「で、相談というのは?」

「あ、そうそう。ちょうどネコに関係すること何だけどね。最近ここらで野良猫が多いでしょ?私の中庭にもよく痩せこけたネコが来るのよ。それでたまにご飯を上げたりするとどんどん数が増えちゃって……誰かに引きっとて欲しいのよ……この子も元はといえば野良猫なの」

 こちらに訴えかけるようにお願いしてくる山口さんを見ながら私は不審に思った。

「ここら辺ってネコがいるんですか?」

「ええ?あんた来るとき見たでしょ?」

「いえ、何も……」

「そんなはず無いわ。だってあなたをお出迎えしたときに、あなたの足元にも数匹いたじゃない」

 真剣な顔で言われて私は怖くなった。
 確かに足元は見てなかったかもだけど、流石に来るときや、数匹もいたのなら気配で気づくはず。しかもそこまでこの家と距離が離れていないのに、野良ネコを私は今まで見たことがない。

「おかしいわねえ……」

 考え込む山口さんを見て私は衝撃を受けた。
 山口さんの目が何かに取り憑かれた様に青く光っているのである。私は反射的にネコの方を見た。するとネコの目も同様に青く光っている。
 私の体がぶるっと震えた。謎の恐怖が私を襲った。大体おかしいと思ったのだ。あそこまでネコを毛嫌いしていた山口さんが今はネコの虜にされているのだ。
 すると、私の視線に気づいたのか、山口さんの膝の上に乗ったネコが私の方を見つめ返してきた。じーっと見つめて来るその目に引きずり込まれるような感覚におちいった時、私の体が恐怖で奪われる前に立ち上がって言った。

「すみません!急用を思い出したので帰ります!ネコの件他の人をあたって見てください!」

 早口で喋ると、私はさっさとこの部屋を出て、家の玄関を開けた。するとネコの鳴き声がすぐ近くでした。私は恐る恐る下を向くとそこには、同じ目をした三毛猫が私を見上げていた。ショックを受けた私は倒れそうになるのを踏ん張って、そのネコを
またいで速歩きで歩き出した。

 しばらくすると、冷たい視線が後をつけて来ているのが分かった。私は家が見えると一目散に走り出した。全速力で走って走って家に辿り着くと、すぐさま玄関をしめて、その場に座り込んだ。
 ここまで走ったのは何年ぶりだろう……
 すると、後ろから複数のネコの鳴き声が立て続けに聞こえた。すぐそこにまでネコが来ていたのだ。私は恐怖のあまり体が凍ったように動かなくなってしまった。



    
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