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しおりを挟む夕食を終えて夜になりそれぞれの部屋へと戻った後、エレノアは侍女に彼の部屋に行くからと準備をお願いして、軽くお化粧をしたり、髪をいつものカチューシャをつけて軽くセットしてもらってから、部屋へと向かった。
ノックして声が返ってきてからゆっくりと扉を開く。
それから何をしているところかな、とにんまりしながら覗き込んだ。
すると執務机からこちらを振り返り意外そうな顔をした。
「エレノアから会いに来るなんて珍しい」
「たまにはいいだろ」
「いいけど……何か用事?」
会話をしながら部屋の中に入る。これで彼を本当の意味で愛してるぞと宣言できると思ってエレノアは部屋履きでスキップしそうだった。
「お前の秘密を当てに来た」
そんな風に要件を伝えつつもイスに座ったままこちらを振り返るアレクシスのそばへと向かう。
しかし、せっかくエレノアが自信満々に言ったのに、アレクシスはあまり期待していない様子で「そうなんだ?」と言ってちらりとエレノアを見上げる。
さあ、言ってみて? とそんな風に聞こえてきそうな仕草に、エレノアは慌てふためかせてやると思って腰に手を添えて「ズバリ!」と大きな声で言う。
「アレクシスは……多重人格なんだ!」
……き、決まった!
ここまで長かった。エレノアでなければ言い当てられなかっただろうと思う。
小説とか歌劇とかそんなフィクションの世界でしか見たことがない精神疾患の一つだが、まさか実際に罹患している人間が近くにいたなんて思わなかった。
しかし、そういう事ならグラディスが言っていたことだって納得だ。
精神病なら簡単に話をすることは出来ないだろう。特に言いふらされて王族にふさわしくないなんて言われたら困る。
責任をもって秘密を隠し通してくれる存在でなければ明かせない。
だからこの時期になってしまったのだと言われれば彼を責めることは出来ないだろう。
……でもこれが正解だからと言って、私はどうしたらいいんだ?
いざ、それでもアレクシスを愛せると言おうとしてから、エレノアは疑問に思った。あまり違和感がない程度の違いしかない多重人格なのだとして、エレノアは何をしたらいいのだろう。
なにを求められていたのかまるで分らない。
そしてまったく返答を返さないアレクシスに、これからどうしたらいいのかという意味で視線を向ける。
すると、はぁ、と彼は一つため息をついてそれから、偉そうにしていたエレノアの手を取って言った。
「不正解。……じゃあ外したからペナルティー」
そういいながらエレノアの手を引いて座っている自分に向かって引き寄せる。
先日はあんなに驚いてエレノアとの接触を拒んでいたのに、どういう心境の変化か彼はまったく恥ずかしがる様子もなくエレノアの背に手を回して抱きしめた。
「っ、は、外したらペナルティーがあるなんて聞いてない」
「言ってないから当然だろ」
「なっ」
……そんなの今更いうなんてっ。
まったく予想外の反応に困惑しつつもエレノアはアレクシスのシャツをぐっと引っ張って引き離そうとする。しかし、魔法もなにもない状態では勝てるはずもなく抱き寄せられたままアレクシスを見上げた。
……それに、こういう事をしてごまかすのはずるいんじゃなかったのか。
昨日の夜、エレノアから触れようとしたときには拒んだくせに、どういう神経をしているんだと思う。
「ずるいって、アレクシスが、昨日っ言ったじゃんか」
「そうだっけ? 覚えてないな」
彼は飄々と嘘をついて、エレノアの髪を後ろによけながら頬を包み込むようにして触れる。
その感触は自分から触れているときとは間違って、暴れようと顔を動かすと耳にアレクシスの指先が触れて、ゆっくりと淵をなぞられる。思わず情けない声が漏れそうになって唇を引き結んだ。
「……」
「あれ? エレノア、どうした。随分静かだ」
何も言えないのだと分かっている上でのそんな言葉にカチンときて、眉間にしわを寄せて睨みつけるが、アレクシスはそんなことは意に介さずに、エレノアに口づける。
チュッと音を立てて、キスをして、アクアマリンの瞳を細めてエレノアの反応を間近で観察する。
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