悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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恐ろしい事があった日は……。3

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 あの日に私をけちょんけちょんにしたのだから、それで満足しておけば良かったものを、わざわざエントリーを偽装してまで、私を引きずり出して来て再戦させようとするのが悪い。

「……ああ……最悪の気分だわ、クラリス」
「……そう」
「わたくし、昔から、お前のことが憎くて憎くてたまらなかったわ」

 シャーリーは大剣を構えて、話をしながらこちらに攻撃を仕掛けて来る。鉄のぶつかり合う音が響く、重い攻撃に魔力を強くして素早くガードしていく。

「ローレンス殿下の寵愛を受けて、我が物顔でわたくしに指図するのが、たまらなく屈辱的だったわ」
「っ、ふっ……っ、」
「だから、お前が罪に溺れた時、心底嬉しかったのですわ」

 光を孕んだ瞳が私を捉える。力押しで攻撃をしてくる彼女に私も同じだけの熱量で睨み返す。

 ……どうでもいいよ、そんな事、早く試合を終わらせたい。

「それなのに……お前は平然とわたくしの前に現れるんですもの、許し難い、ただ、お前と言う存在が許し難いわ」
「くっ、……もう、話は終わりましたの?決着をつけてもいいかしら?」

 早く終わらせたくて口を開く、お嬢様言葉なのはシャーリーにつられたからだろう。魔力を込めて、彼女の大剣を弾き。段々と体が痛くなってきた、早くしなければ明日の筋肉痛は確実だろう。

 最後の一太刀に力を込める、そんな時にシャーリーは試合前と同じようにふふふっと笑って、口角を変に上げながら言う。

「だから、わたくし、お前だけでなく、お前を支える愚物共にも制裁を加えることにしましたの」

 思い浮かぶのは、私の優しいチームメイトの二人だ。ヴィンスやサディアスも大切だが、この会場にいるし何があるとも思えない。

 先日から少し様子がおかしかった、二人のことが脳裏にチラついて、振り上げていた剣を止める。

 すると、シャーリーはその隙を見逃す事はなく大剣で、私に重たい斬撃を食らわせる。肩の痛みとともに今は剣に集中しなければと思うが、どういう事なのかそれが気になって、次の攻撃を正面から受け止めてしまう。

「あら、動きが悪くなりましたわね。どうしましたの?」
「っ、さっきの話はっ!どういう」
「そのままの意味だわ。今この時にも、彼女達は下賎な平民共に暴行を受けているはずよ。まったく、頭の悪い協力者がいてくれて助かりましたわ」

 自慢げにシャーリーは続ける。彼女と言ったということは、やはりチェルシーとシンシアの事だろう。

 二人がどうして?そんなはず、そもそも、だって、二人は強い、私なんかよりずっと、そんなことはありえない私を動揺させるための嘘に決まっている。

「信じないのは自由よ、けれど、呑気に公開試合が終わるまで待っていたら、あの子達は、もう帰ってこられないわね。……何も悪くないというのに、お前に付き従ったばかりに……災難だわ」
「ッ、う、嘘だ!……っぐ、」
「そう思うならそれでも構わなくてよ?……後で、わたくしに逆らった事を後悔する羽目になるだけですのよ」
「っ、……!」

 帰って来られない?後悔する?何か酷いことをされているの?確かにチェルシーもシンシアも強いけれど、彼女たちはまだ学生で成人もしていない、子供で女の子なんだ。

 それに、サディアスが言っていた、本職の騎士や魔法使いなんかがいるって、それだと、もしかしたら、なにかの拍子に負けてしまうことだってあるのかもしれない。

 お祭り気分で浮かれた街では、諍いごとが多いように感じた。彼女達が無理やり誘拐されていても、街の人に気がついて貰えないかもしれない。

 ……どうしたらいい?どうするべき?私は今……。

「ゔっ!!……っ、……」

 またも同じ場所に剣を受けてしまい力が入りづらい。痛みがじんじんと主張してきて、上手く考えられない。 

「ふふふっ……クラリス、今、ここで、一切抵抗せずに、降参もせずに無抵抗に嬲られてくれるのなら、彼女たちの居場所を教えてあげても良くてよ?」

 シャーリーは形成が逆転したとわかると、ここぞとばかりにまるで慈悲深いような顔をしながら、残酷な提案をしてくる。

 そうだ、確かに今すぐに助けに行きたいけれど、どこにいるかも分からない、目の前には、それも知っていて、私が痛い目に会うだけで、居場所を教えてくれる人がいる。

 振り上げられる大剣に、私は魔力を弱めなければと咄嗟に考えるが、自らの中のサディアスの魔力がそれを許さないとばかりに主張する。

 体がちぐはぐになりそうな魔力に突き動かされて、剣を握り直しシャーリーの攻撃を跳ね返した。

「っ!」

 自分を犠牲にするのは許してくれないらしい。それに、私が酷いことをされてそれで二人が助かる保証はない。

 ……でもっ、それでも二人を守らなきゃ。私の大切な友達なのだ。

 シャーリーは私をきつく睨みつける。瞳の中に蠢いているこの私に向けられた憎悪が、チェルシーとシンシアを苦しめているのだと思うと、いてもたってもいられない。

 ……すぐにでも探さないと。シャーリーが具体的に何をしているかは分からない。でも私の大事な人を守らなければ。

 そうと決まれば、と、私は魔力を片手に集中させた。私は基本魔法は、だいたいヴィンスを見習ってスピードに重きを置くようにしている。けれど今だけば、彼女を倒さなければならない今だけは、パワーの方が必要だ。

 力を貯めるために、流した魔力と石に反応して、魔法玉についているアタッチメントからパキンッと、弾けるような音がした。

 流し込んだ魔力が、何故か次々に消えていく。それでも攻撃を辞める選択はなく、私はシャーリーに剣が壊れんばかりの斬撃をくらわせて、ガードの意味もなく吹っ飛ぶ姿を横目で見つつ、ヴィンスとサディアスを探す。

 未だに魔力はゴリゴリ削られていき、彼らを見れば、現在進行形で、チェルシーとシンシアが攻撃を受けているのだとすぐにわかった。

「ヴィンス!!サディアス!!」

 私の勝利を告げる声も無視して、全力で走り出す。二人の試合が私の前に終わっていて本当に良かった。
 出場者席に戻りつつ、彼らが半球状の盾の魔法で囲まれて居ることに、やっぱりと思い魔法玉を取り出す。

 随分前に買って、それから一度も日の目を見なかった、皆と揃いで買ったアタッチが煌々と輝いている。

 これは、私のものと対になっているアタッチをつけている人全員に私の魔力が切れるまで、防御魔法を展開できるという代物だ。

 本来なら、団体戦で、初撃を完全に防いで、勝負を有利に運ぶために使う予定で買ったが、私の予想外の固有魔法や、いろいろな要因が重なって使う機会を失っていたのだ。



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