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持つ者の義務 8
しおりを挟む「そ、そこを何とかお願いできませんか。リヒト殿」
「……」
「とても優秀で、よい姫たちなんです。必ず、あなた方を楽しませることを約束いたしますから!」
「……な、何故食い下がるのか、分からないんだけど」
必死に言い募る彼に意味が分からなくて、やや困惑気味にそう返した。そんなに女性たちを俺たちに会わせたいとなると何やらよくない事でも企んでいるのではないかと勘繰ってしまう。
それに、万が一にもお姫様に手を出したのだから責任を取ってこの世界にいなければならないなんて言われたら困るし、言い訳できない事態になってしまう。
俺の若干引き気味の態度に、アルベリクは口をつぐんで、険しい顔をする。しかし、そんなにごり押しされたって望まれてもいないのに、やってくるお姫様が可哀想だろう。
それにきっとそんなところを誰かに見られたりしたら、社内でもいち早く社員同士の恋愛事情が噂として流れるように、彼女たちも身内から噂されたりしてしまうかもしれない。
「それに、姫というからには嫁入り前の女の子なんだろう。こんな年増の男と変な噂でも流れたら本人がかわいそうじゃないかな」
一応は信用できないという方の理由ではなく、彼女たちをいたわるような体で話をする。しかし彼は俺の言葉を聞いて、それから跪いた。
「っ、アルベリク王子殿下」
「王子殿下っ」
後ろから慌てたようなルシアンとリシャールの声がする。一国の王子である彼がやってはいけない行為だったのだろう事はそれで想像がついた。元の世界の元の国でも尊い方が膝をついただけでニュースになっていたし。
「そんなことは無いのです。むしろ、まったく構いません。そして誓ってお二方の不利益になるようなことにはしないと約束いたします。お願いしたします、リヒト殿、俺は、ただほんの少し彼女たちに機会を与えたいだけなのです」
「おやめくださいっ、アリスティド王太子殿下や、アルセーヌ王子殿下に知られればどんなことを言われるか」
「頼みます、リヒト殿、どうか」
ルシアンが止めるように言うのにアルベリクは体勢をそのままにして俺に懇願する。そんなことをされる意味がやはり分からなかったが、なにやら普通ではない雰囲気に下階の宴に酔いしれている人間達も俺の方へと視線を向けていた。
これだけ断っているというのに、その頑として譲らない態度には若干の苛立ちもあるが、彼もまだ若い。理由を聞かずに否定していてはこの状況が悪化するだけだろう。
「分かった、話を聞こう、だからすぐに俺にひざまずくのをやめろ」
「事情は、部屋に伺った本人たちからきちんと話をさせます、どうか。良いと一言、お返事を下さい」
「……君な、ちょっと傲慢じゃないかな。こっちだって譲歩したのに」
「何と言われようとも、これだけは譲れないのです。俺の信念にかけて」
俺が怒気を孕んだ口調で睨んでも彼は決して屈することは無く、強くこちらを見返して、決意を瞳に宿らせてその場を動かないと示す。
信念にかけてというだけあって、強い意志のある熱意が伝わってくるようだった。
彼らの兄とは違って真摯な気持ちが彼にはきちんとある。そういう、真面目な強い意志は、どうあってもそぐのは難しいし、そういったことをのらりくらりとかわすことだってできなくはないが、彼の兄がそのタイプでまったくそれとは違う彼の事を好感を持っていると思ったのに、自分がその対応をするのは流石に抵抗があった。
「……」
しかし、押し負けるようなことは看過できない。
「はぁ、分かった。いい……けどな」
根負けして折れたようなことを口にしながら俺は、彼を強くにらみながら続ける。
「君も必ず共に来ること、その後どうするかは話を聞いてから決める。それ以上は譲歩しないかな」
伝えると彼は、ゆっくりと深く頷いて、窮地から救われた人間のように、ほっと息をつきそれから立ち上がった。
「その条件で構いません。感謝申し上げます」
「……ああ」
それだけ言って鋭い切れ目を若干優しくさせて、去っていく。俺は面倒な用事が増えた事を憂鬱に思ったが、そう言えばここは前の世界と違って、仕事もない、売れる恩は売っておいて損はないかもしれない。
……何より、暇じゃない方がいいか。
それに、よく考えてみれば教育に悪いからナオに部屋には、そのお姫様は送り出すことは出来ないが、俺のところに来る分には問題なかったかと考え直す。今日もどんなに酒を飲んでも酔わないようだし、手を出しさえしなければ、なんてことないだろう。
襲われそうになったなどと言われて犯罪者にされないようにルシアンをそばにおいて置けばさらに完璧だ。
とにもかくにもこの後の予定が決まった。楽しみではないがやることがあるのはいい事だと思う。
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皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
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