ゴミ捨て場で男に拾われた話。

ぽんぽこ狸

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 セージと名乗った彼は、予め出していていた缶ビールをカシュッっと音を立てて開けつつ、またアルコールが回ってきたのか、ワイシャツの袖を折り返し、ベストを脱いで、ソファーの背もたれに引っ掛けた。

「ユキは、なんであんなところにいたの?」

 次の質問にボクは、水が飲みたいことを伝えるタイミングを見失って、のどを潤すためにとりあえず、またお酒を飲みつつ、答えを適当に探す。

 一から十まですべて説明するのは面倒くさいし、どうせこの質問に意味なんてないだろう。明日には、この家ともセージともおさらばするつもりなのだ、適当な説明でいいだろう。

「逃げてたんだ。ただ行く当てもなかったし、一文無しだったから、腹が減って草臥れて野宿してた。そんだけ」
「……へぇ、ところで、君を拾った俺が言うのもなんだけど、何でついてこようと思ったの?」
「……、……」

 本当に、何故だなどと、セージが聞くことではないと思うし、何なら、腹が減って限界だったから以外に理由などないのだか、それを言ってしまうのは、なんだか自分の底の浅さを露呈させるようで、素直に返答を返すのは憚られる。

「……別に。……、セージが、来ないかって言って引っ張ってきたんだ、ボクは従っただけ」
「そっか、まあ、そうだね。ていうか君、予想道理というかなんて言うか……かわいいね」
「知らねーよ」

 彼はまじまじとボクを見ながらそう言って、また空いたグラスに、並々と酒を注ぐ。

 だんだんとお腹も膨れて、酔いもいい感じに回ってきた。なんだかここ数日の不幸な出来事が、先ほどまでは地続きで繋がっていてここから先の人生、その不幸から一生逃れることなく、同じような不幸が続いていくのだと確信していたのだが、今はどうだろう。

 暖かいシャワーを浴びることができて、美味しい食事と、好みの酒、着心地の良い洋服。

 なんだか現実味がない程、フワフワしていて、あとは、このセージの思惑さえボクに都合が悪くないものなら、あんな五日だか一週間だか前の出来事だって、過去のものにできる気がした。

「お酒、おいしい?」
「ん。美味しい……」

 問われれば、口は素直にセージに返答を返す、そうするとセージはあはは、と声を上げて、けれども控えめに笑って、ボクに振舞っている酒のボトルを片手少し倒して弄ぶ。

 そうして機嫌よさげなセージとぽつぽつと会話をしつつご飯を食べ進め、小さなショットグラスだからと、何度もグラスを開けているうちに、カーテンの隙間から淡い光が差し込むようになった。

 その頃ボクは、ボトル一本分の酒を飲みほしていて、つけっぱなしにしていたテレビからは「おはようごさいます」という朝の挨拶が聞こえて来ていた。



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