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しおりを挟む……こんなつもりじゃなかった。自分は女じゃないからと油断していたし、何よりセージは、まったくこういった強引を働くような人間に見えなかった。
ただしかし、結局セージの思惑が、彼の望んでいたことが、はっきりとして安心する気持ちもある。
ボクみたいな惨めな人間にご飯を与えて、自己満足をするエゴイストとか、人間をゲージに入れてペットとして売りさばく闇商人みたいな、理解できない別世界の人間ではなかったのだ。
つまりは、きっとセージは、ボクと少ししか歳の差がないように見えるがそれなりに金持ちで、仕事も充実していてあとは、性を満足させてくれる相手が欲しいのだろう。文字どおり、ペットみたいにここで生活をさせてやるから相手になれとかそういう感じだろうか。
……でもそれじゃ、犬か猫じゃ無理じゃないか?とにかく、性的にでもなんでも癒しになれば、なんでもよかったのか?
なんだか矛盾があるような気がするが大方は、わかった。だからといって、はいそうですか、というわけにはいかない。なんせボクは、男相手なんて論外だ、いや女が相手だろうが、セックス自体が好きでもない。
そもそも、初めからそういうことなら、ついてきたりしなかったし、とにかくそんなつもりじゃなかったんだ。つまり騙されたようなものなのだからセージを押しのけて逃げ帰ってもいいはずで……。
「……」
「どけ、っこんなことするつもりじゃ、っ!」
抵抗しているボクを片手で制しつつセージは、ボクの使っていたショットグラスを手に取ってそれから、ボクの口元につけて傾ける。
半分ほど残っていたシェリー酒がこぼれそうで、仕方なく少し口に含んで嚥下する。セージはそれを見て、声を出さずにふっと笑って、口を開く。
「……ユキ。じゃあ、どういうつもりで、ついてきたの?」
「っ、っだから、!んっ」
さらに、セージはグラスを傾けて、ボクは、アルコールでのどが焼けるのを感じながら、ごく、ごくと飲み干す。
「まったく、何も見返りも無いと考えて、いっさい警戒して無かったとは、言わせないよ。君は見返りが何かはわかってなくても、それがあっても良いかと、許容してここに来たんだろう?」
「、……でも、こんなの。無理だろ」
確かに、その通りだ。
そんなつもりじゃなかったといくら主張したって、自らの身に何か起きるかもしれない事をボクは理解していたし、それでも、目の前のうまい話に乗っかって、リスクを飲んだ。
自分では腹いっぱい食べることだって、お酒を飲むことだって、今夜の宿すら見つける事すらできなかったのだから、その代償があるのだって当たり前だと言われれば、ぐうの音だって出やしない。
「……ユキ、君一文無しだって言っていたね。……このお酒、親父からもらった限定品のものでね、中身は一般的にも流通している物だけど、このボトルは限定品で市場価値がつけられないぐらいには高級品なんだ」
唐突に何かと思えば、とんでもない話だった。コトっとテーブルに、グラスを戻しつつセージは続ける。
「脅すつもりはないよ。ただの提案だ。いまここで、この行為を許してくれさえすれば、何不自由ない生活を君に約束してあげるよ、もちろん、常識的な範囲の話だけど」
「っ……」
「俺に飼われてみない?……ねえ、ユキ。俺、ペットは死ぬほど甘やかすよ」
吐息がかかりそうなほど間近で言われて、思考が鈍る。今のボクにその提案はあまりに魅力的に思えて、さらには、なんだかよくわからない高級な酒を飲み干してしまったことだって、チャラにしてくれるという事なんだろう。
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