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しおりを挟む……だから、まあ。この感情は飲み込むべきなんだろうね。
わかっていても、あんなに傷ついている姿を見てしまうとどうしても心が痛い。たとえ、俺のことをユキが嫌いでも、俺はユキと出会って日も浅いのに、随分好意を寄せてしまってる。
少し先のことを考えて、また大きくため息をつく。そのうちにユキが愛想をつかして、ここから出ていきたいと言ったら、自分はどんな手段に出るだろう。
ペットと飼い主という関係性は、今というのを維持するには優秀に思えるが、今後のことを考えた時にはあまりいい結末が、待っていそうになくて、いつか彼が、自分の手によって酷い目にあわされるのではないかと思うと、可哀想で同時に、それはそれで、別にいいのではないかとも思う。
だってそうなったときには、きっと、ユキに起こった事で、俺に関係ない事なんてなくなってる。
暗い思考を煙で吐き出すように、霧散させる。火種が根元まで移動してしまった煙草を押しつぶして、部屋に戻った。するとなぜか、目元が赤いままのユキがパジャマ姿でお気に入りのタオルを手に持って、俺のベットに座っていた。
「……煙草?」
「あ、ああ、うん」
それから、ユキは俺の机をちらっと見て、少し微笑む。
「じゃあもう、今日は仕事終わりか?」
そういうわけではなかったのだが、ユキがなんだか、嬉しそうにそういうので「うん、そうだよ」と返答を返す。それから、少しテーブルの上の資料なんかを片付けて、PCの電源を落とす。
「なあ、セージ、この後どうする?酒でも飲むか?」
「……」
……誘ってるのかな。ユキは多分、お酒はあまり好きじゃない。わざわざこうして俺の部屋に来て、こうしているところを見る限りは、誘惑されているんじゃないかと思う。
ユキのそばに寄って、頭を撫でてみる。そうすると撫でられることに慣れてるネコみたいに目を細めて、視線を伏せる。
……こうして触ってるときは、懐いてるように見えるんだけどな。
肩を軽く押せば、簡単にベットに倒れこんで、少し熱のこもった瞳で俺のことを見上げる。
「電気、消す?」
「……別に、いい」
「そっか」
相当、参っているのか、それともそういう気分なのか、いつものように恥ずかしがるそぶりもない。ユキの可愛い三つ編みを解いて、耳にキスをする。
「ん、」
小さく反応するユキはまた、その瞳に涙をにじませて、少し顔をゆがめる。
「、なぁ……セージ……ごめん」
抱き寄せられて耳元で小さく謝罪される。何の脈絡もないように思えたけれど、きっと関係ないと言ったことだろうと思う。あれは明らかな拒絶だった。だから、謝ってくれるのだろう。この家の家主の俺と気まずくならないように。
…………いいよ。それでも。謝罪じゃなくて俺が欲しいのは説明だけど、ユキが話したくないなら、仕方ないからね。
「あはは、怒ってないよ。かわいいね、ユキ」
「……」
口からは薄っぺらい言葉が滑り出て、けれどそれらはあながち嘘じゃない。
「ほんとう……?」
「うん、ほんと」
嘘を完璧に見抜かれないように、心底、彼を可愛いと思いながら、笑顔を作る。そうすると、ユキは、なんだかつらそうな表情をして、少し起き上がって、俺に子供みたいにチュッとキスをする。
「なあ、せーじ……今日は、優しくしないで」
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