【R-18】17歳の寄り道

六楓(Clarice)

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第13章、東野編

【6】高校卒業、東野涼太

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翌日は、待ち合わせ時間ギリギリについた。

駅前の駐車場に車を停めることにし、俺だけ先に降りて待ち合わせ場所に向かう。
千晴はもう駅に着いているらしいが、白川は少し遅れているらしい。

噴水前での待ち合わせ。この地域じゃ定番だ。
……千晴はまだいない。

ちょうど3時、噴水が派手に噴き上がり、鳩時計が出たり引っ込んだり。
それを見ながら、俺はしつこく良心の呵責に苛まれていた。

やっぱり浅野に黙って会うのはフェアじゃない。
それに、セフレ話もやはり捨て置けない。

俺はクリアな気持ちで白川に告白したい。
ずるい真似はしたくない。

スマホを取り出し、浅野に発信する。
何度かコール音がした後、「なにー?」のんきな声で浅野が出て、イラッとした。

「……お前、セフレいるらしいな?」
『え?何て?聞こえね』

俺の質問がよくわからなかったらしく、もう一度言わされる。

「セフレだよ!いるんだろ?」
『は?いねえよ。誰がセフレだよ』

目力Bだよ!

「名前はわかんねーけど、経済史の時間に会った奴らだよ」

すると、浅野もはっきりしない様子を醸し出す。

『あー、……セフレじゃねえけど、新歓コンパの後で、酔ってたからあんまり覚えてないし』

何かあったことは事実なんだな。このヤリ○ンが!
俺は、激しめの水飛沫が己に掛かっていることにも気付かずに、浅野に宣言する。

「俺は、今から白川と会うんだよ。好きだったって言うつもりだし」
『あー。言えばいんじゃね?』

何だと?
まだ意地を張り続ける浅野に、俺は周りに人がいることも忘れて全力で罵った。

「興味ないふりしてんじゃねえ、寒いわ!お前がまだ未練あることぐらいわかってんだよ!『浅野はセフレ作って楽しくやってる』って白川に言っといてやるわ!バラされたくなかったらすぐ来い!」

通り過ぎゆく女性数名が、スマホ片手に大声を出して騒ぐ俺を見、早足に去って行った。
完全に危ない輩だと思われている。

浅野は数十秒黙っていたが、重々しく聞いてきた。

『…………そこ、どこだよ』
「学園駅前だよ!来い!」

それを告げるとすぐに電話が切れた。



つい、呼びつけてしまったが……本当に来るのか?

ていうか、今……自分の首を思いっきり絞めた気がする。
そして、俺も浅野も振られたら、世にも寒々しい展開になる。

早まったかもしれない……。

ちょっと後悔しながらスマホの画面を呆然と見ていると、ぽんっと背中を叩かれた。

「涼太ー?変わってないねー。久しぶり~。何でシャツ濡れてんの?」

千晴だった。

「ああ、久しぶりだな。白川は……?」
「碧は急遽午前中バイト入ったらしくて、さっき上がって今向かってる途中だってー。三浦君は?」
「今、駅前駐車場に車停めてて……あ、来た」

ミウが後ろから爽やかな笑顔で走ってきて、「あれ?涼太、何で服濡れてんの?」と一言聞いてきた。




「東野君、久しぶりだね!なんか私服だとイメージ違うね!」

白川が遅れてやってきた。
かわいい。やっぱりすげーかわいい。

白いフワッとしたシャツに、フワッとした膝上スカート。
セーラー服からのフワフワ私服がグッときた。
それを見抜いたのか、千晴が俺をちらりと確認し、“いつ告んの?”という視線を送ってきた。
“まだです……”と視線を返すと、千晴が“さっさとしなさいよ”という目をする。

わかってます……。
でも、さっき浅野に盛大に宣言した手前、逆に身動きが取りづらくなってしまった。
オウンゴールのフラグが立っている気もしてきて焦る。
浅野がバイクで来るとしても、1時間半はかかる。電車ならもっとだ。

「ボーリングするー?何か食べるー?どうしよう。碧、お腹空いてる?」
「あっ、大丈夫だよ!おにぎり食べてきたから」
「じゃあ、どうしよう?ボーリング?それにしても久しぶりだね~碧ちゃん」

千晴とミウと白川で俺の前を歩き、話を弾ませながら行き先を決めていた。
まずはボーリングに行こうという話にまとまったようだ。

このあたりは、カラオケ、ボーリング(オッサンにはゴルフの打ちっぱなし有)、あとはスーパー銭湯、大きな公園ぐらいしか娯楽がない。

数ヶ月ぶりに会い、やっぱり好きだなぁとしみじみ思いながら、ガーター連発の白川に癒されていた。
だらだらゲームをしながら、近況報告に興じる。

2ゲーム目が終わるころ、「……顔ニヤついてるよ。怪しいからやめな」と千晴に言われ、速やかに顔を元に戻した。
こいつの忠告にはどきりとさせられる。

「で、どうすんのよ。告るなら三浦君とジュース買いに行くけど……早く決めてよね」
「せ、急かすなよ」
「アンタが頼んできたんでしょ。こっちにも都合があるのよ」

そりゃあそうか。千晴に協力を求めたのは俺の方だ。
でも、状況が変わってしまった。今、浅野はこっちに向かってるかもしれないし、すべては俺が招いた結果なんだけど……。
困惑する俺をしらっとした目で見ている千晴。

「じゃ、じゃあ、今から10分。10分したら戻ってきて」
鼓動が早鐘を打ち始め、汗がどっと噴き出してきた。

「……はーい。了解」
千晴は面倒くさそうにしつつも、ミウに声を掛けて立ち上がり、自販機へ行ってしまった。

「ボーリング、みんな上手だね~。私下手で……」

運動の苦手な白川は、ボーリングも苦手だろうに俺らに合わせてついてきてくれたんだよな。
いや、下手なのも可愛かったです……と思いながら、隣に座った。
心臓が口から飛び出るかもしれない。

ちらりと千晴たちの動向を確認すると、遠いところで俺らに背を向けて二人で楽しげに話している。
ミウは千晴にフラれたのにいい関係築いてるな……。
フラれても、あんな関係になれるもんなのかな?


俺が千晴たちを見ているのに気付いた白川が、にこにこと俺に話す。

「それにしても会えてよかったよね~。みんな全然変わってなくて、ホッとしたよ~」

う、可愛い。
ドキドキしながら足を組み、こほんと咳払いをする。


好きだって伝えなきゃ……。

彼氏いるの?
浅野とはどうなってる?

聞きたいこともあるけど、まずは、俺の気持ちを――。
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