23 / 64
無謀で無茶による次の道へ
しおりを挟む
「古典的なザク式稽古ね。御婆様の時代だとそれが普通だったんだろうけど私そういうの苦手だったな。
気付きなさいと言われてもそう簡単に気づかないし、まぁそこが肝心なところだとは分かっているけどさ」
アルマが首を振るとラムザが言った。
「教えない、というやつですよね。昔の武芸というか習い事及びほとんどそんな感じだったみたいですけど。
それでヤヲさんはそれに延々と付き合ったということで」
「時間は小一時間ぐらいだがえらく長く感じたものだ。
まぁ構えてすぐに剣が飛ばされているから実質的には拾いに行って構える時間が大半だけどな。
何十回かまたは百回かそれぐらいそうなった」
「……御婆様のことはひとまず置いておいて、まずあなたのことだけど、ちょっと弱すぎない? もっと強いはずよ。
本来のあんたなら、及ばないまでも多少はというところがあってもおかしくないはずなんだけど」
俺はアルマの言葉に違和感しか覚えたものの黙っているとラムザが反論した。
「おいおいアルマ。相手はあの剣星だぞ」
「いいえ、いくら御婆様がザク剣術の最高傑作であったとしても、それは第二次聖戦の最中に確立されたものであって、第一次聖戦序盤のその頃はまだ十代半ばでしょ?
私より少し年下なだけのほぼ同い年よ。強いには強いがそれでもまだまだなはず。
それなのに芸もなく工夫もなく延々と剣を弾かれるって、あんたは弱すぎといっても過言ではないわ。ますます、疑わしい」
「それは御婆様の稽古に付き合ったためで」
「そこ、違うよね。名目上は御婆様に稽古だけど実質的にこれってあんたの稽古になっていない?」
「ああ、そうだな」
アルマに指摘に対し俺は頷いた。
「後から振り返ると実際稽古をつけられていたのは俺の方だった。
あの時は夢中でそんなことを考えることもなかったがな。どうにかして剣を飛ばされないようにして、稽古を成立させないといけないという思いで頭が一杯で。
そうして無言で茶を呑み終え一日目が終わり、俺はあの構えを忘れぬよう自主練をした明くる日に、また稽古に付き合った」
「今度はうまくいったのでは?」
ラムザの言葉に俺は首を振った。
「昨日のように弾かれた」
「あーあ……」
アルマの失笑と嘆息。
「それでも昨日とは少しだけ違った。手に抵抗感が、そして飛んだ剣がちょっと近くだった」
「へぇ……ふーん」
アルマが言葉少なげに言うとラムザが続けた。
「成果が出ていますね」
「だがその時の俺はそこに気が付かない。なんでだ! と嘆いて自分が昨日よりも力んでいるからと先ず思った。
俺にとってそんな小さな変化よりも大きな変化を剣が飛ばされないことを願っていたんだ。
小さなことに気付かない故に大きな変化を逃していたみたいだ。まぁそんなので俺はまた剣を拾いに行くことを続けた。
昨日のように何度も何十度かあるいは百度も……そして疲労と絶望感のなかでその日に俺はこう言った。逆に自分の方から撃たせてくれないかと」
「あまりに、無謀、過ぎやしないかしら?」
「そう思うか?」
「ここまでの話を聞くとそうなりますね。かなり無茶かと。約束されし敗北感すらあります」
「まぁそうだな。でもそういう時は気が付かないもんだ。あとから気づくが、時にはそういう無謀さや無茶でしか通らない道というものがある。
俺のその時はあの坂道を駆けて崖に手を掛けた時に続いて、彼女にある意味で挑戦をしたときに次の道に入ったようなものだった。
あれもまたひとつの試練といえたな」
気付きなさいと言われてもそう簡単に気づかないし、まぁそこが肝心なところだとは分かっているけどさ」
アルマが首を振るとラムザが言った。
「教えない、というやつですよね。昔の武芸というか習い事及びほとんどそんな感じだったみたいですけど。
それでヤヲさんはそれに延々と付き合ったということで」
「時間は小一時間ぐらいだがえらく長く感じたものだ。
まぁ構えてすぐに剣が飛ばされているから実質的には拾いに行って構える時間が大半だけどな。
何十回かまたは百回かそれぐらいそうなった」
「……御婆様のことはひとまず置いておいて、まずあなたのことだけど、ちょっと弱すぎない? もっと強いはずよ。
本来のあんたなら、及ばないまでも多少はというところがあってもおかしくないはずなんだけど」
俺はアルマの言葉に違和感しか覚えたものの黙っているとラムザが反論した。
「おいおいアルマ。相手はあの剣星だぞ」
「いいえ、いくら御婆様がザク剣術の最高傑作であったとしても、それは第二次聖戦の最中に確立されたものであって、第一次聖戦序盤のその頃はまだ十代半ばでしょ?
私より少し年下なだけのほぼ同い年よ。強いには強いがそれでもまだまだなはず。
それなのに芸もなく工夫もなく延々と剣を弾かれるって、あんたは弱すぎといっても過言ではないわ。ますます、疑わしい」
「それは御婆様の稽古に付き合ったためで」
「そこ、違うよね。名目上は御婆様に稽古だけど実質的にこれってあんたの稽古になっていない?」
「ああ、そうだな」
アルマに指摘に対し俺は頷いた。
「後から振り返ると実際稽古をつけられていたのは俺の方だった。
あの時は夢中でそんなことを考えることもなかったがな。どうにかして剣を飛ばされないようにして、稽古を成立させないといけないという思いで頭が一杯で。
そうして無言で茶を呑み終え一日目が終わり、俺はあの構えを忘れぬよう自主練をした明くる日に、また稽古に付き合った」
「今度はうまくいったのでは?」
ラムザの言葉に俺は首を振った。
「昨日のように弾かれた」
「あーあ……」
アルマの失笑と嘆息。
「それでも昨日とは少しだけ違った。手に抵抗感が、そして飛んだ剣がちょっと近くだった」
「へぇ……ふーん」
アルマが言葉少なげに言うとラムザが続けた。
「成果が出ていますね」
「だがその時の俺はそこに気が付かない。なんでだ! と嘆いて自分が昨日よりも力んでいるからと先ず思った。
俺にとってそんな小さな変化よりも大きな変化を剣が飛ばされないことを願っていたんだ。
小さなことに気付かない故に大きな変化を逃していたみたいだ。まぁそんなので俺はまた剣を拾いに行くことを続けた。
昨日のように何度も何十度かあるいは百度も……そして疲労と絶望感のなかでその日に俺はこう言った。逆に自分の方から撃たせてくれないかと」
「あまりに、無謀、過ぎやしないかしら?」
「そう思うか?」
「ここまでの話を聞くとそうなりますね。かなり無茶かと。約束されし敗北感すらあります」
「まぁそうだな。でもそういう時は気が付かないもんだ。あとから気づくが、時にはそういう無謀さや無茶でしか通らない道というものがある。
俺のその時はあの坂道を駆けて崖に手を掛けた時に続いて、彼女にある意味で挑戦をしたときに次の道に入ったようなものだった。
あれもまたひとつの試練といえたな」
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる