わがおろか ~我がままな女、愚かなおっさんに苦悩する~

かみやなおあき

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暗殺者派遣 (シノブ12)

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「あなた! 忍者を死刑に出来ないとはどういうことです! 私達の計画がバレてしまったらどうするのですか! バレてしまったのならどう責任を取るつもりで! あなたは婿ですから気楽なんでしょうが私の場合は本家という立場が……」
 部屋中に響き渡るキンキン声で以って捲し立てるのは大臣夫人であり激怒している。マチョの母親であるがあまり似てはいない。

「うるさいなぁ王子の強い意向だから仕方がないだろ。僕の立場を考えてくれよ。それに声が大きいよ。忍者に聞かれたらどうするんだ」
 いつものあれこれ詰め込み式な説教というか苛めに対して正面から向き合いたくない夫の大臣は背を向けている。マチョの父親でありどちらかというと彼女は父親似である。

「忍者ですって? 大丈夫よ、あの時はたまたまあいつが近くに来ていて聞いただけですし。警戒態勢は解いているのですからね」
「用心に越したことはないだろ。お喋りをしたせいで計画は露呈して今までの苦労が水の泡になるところだったんだからな。幸いなことに奴がマチョ暗殺に急いでくれたおかげでこの話は他に漏れていることはないようだし」
「それならいいのですけど。それでどうするつもりですか! どうするつもりで!」

 妻の突然の絶叫に夫は耳に指を突っ込む。地雷は踏むが避難は素早い。大臣とはそういう男である。
「いい加減うるさいなあ大声は暴力なんだぞ。僕を責めてもしょうがないだろ。でも手は打ってあるから安心してくれ。タカオにいるオオゼキ兄弟に連絡して後を追って貰った。彼らに、任せる」
「えっ! あの兄弟を!」

 妻の驚きと感心の反応と態度を見て大臣は満足感を覚えた。こいつの高慢ちきな鼻をへし折るのはいつだって楽しい。
 どうだい? こちらはできる男なんだぜ。お前はいつも小馬鹿にしているが実際はこれぐらい簡単に出来る男なんだ。お前は僕を馬鹿にして無能扱いすることで自分の自尊心を慰めているのだろうが実際はこれぐらいどうってことないんだ。

「そうだとも彼らを使わないといけないだろ? あの忍者はあのマチョと互角以上の戦いをしたんだ。ちょっとやそっとの力持ちじゃ太刀打ちは不可能さ。よって最強の手札をここで切ったわけだ。すごく強い敵がそっちに行くから処理を願う、ってね。彼らが途中にいる、そのためにカワグチコ行きを提言したわけさ」

 夫人は無言のまましきりに頷き唸っている。大臣は妻のいつもこの動作を見ながら思う。それって僕のアイディアの荒探しをしているのかな、と。まぁそうだよね。君は僕に文句を言うときすごく真剣になるものだ。文句を言ったら仕事をした気になるタイプだな。

「……まぁまぁ悪くはない手ですね。たしかにマチョと互角と言えていますぐに動けるのはあの兄弟ぐらいですし。でも……確実とは言い切れないですわよ」
 だから何が言いたいのかと大臣は夫人のいつもの意味不明な論理に対して勢いよく返した。

「言い切れるさ! オオゼキ兄弟の力を知らないとは言わせないぜ。一対一ならマチョの方が確実に強いがコンビネーションを用いればマチョだって勝てない。彼らの鬼殺法に対抗できるのはこの世でただ一人」
「ボウギャックだけ、ということですわね」
 夫人が自分の息子の名前を言うとその顔に微笑みが浮かべた。

 おっと機嫌が良くなったなと大臣は安堵しつつうんざりする。このヒステリックな女……要するに我が妻は息子を溺愛し期待し過ぎている。この場にあいつがいて自分の代わりに話をすれば妻は言うことを全て聞いてすんなり行くのだがな、と大臣は内心で溜息をついた。だがそれはしたくはないなと。

 何故ならあいつは最近ますます態度が大きくなっているからで。そもそも子供の頃から妻は自分という父親の権威を失墜させるべくあれこれしてきたのだからな。それが本家と跡取り的な態度というわけか? でもまぁそれはもうそれでいいんだ。こちらははじめから全部諦めている。

 あいつは次の王であり世界を統べるもの。それが我が一族の悲願であるのだから。所詮この自分はその目的のための道具に過ぎない。マチョもそうであるし自分だってそう。そこに文句を言ってはならない。そういう運命であったのだから。そこを否定したら自分は何のためにここにいるのか分からなくなってしまう。だから、考えない。

 大臣の心は寂寥感でいっぱいになったが気を取り戻し妻に言った。
「そうだともオオゼキ兄弟のコンビネーションを撃破できるのはボウギャックだけだ。これで秘密を抱いた忍者死亡は確実、いいな」
「もちろんですよ。あなたにしてはまぁまぁできましたわね。では死亡確認書を後ほどお願い致しますわね。私はマチョに説諭してきますので」

 やっとのことで妻が部屋から出ていくと大臣は息を吐いた。これでリラックスができると。あれがいると気が、休まらない。休まるはずがない。むしろ敵だ。慰めや安らぎを与えてくれず不安や恐怖を与えて来る存在など味方などではない。

「父上、話があります」
 突然息子のボウギャックが入ってきたので大臣は飛びあがった。敵襲再び!
 態度がでかいんだよこいつは! ノックをしないのが何よりの証拠! ああなんか緊張する。早く出て行け。

「父上、一刻も早く封印を解除してほしいと妹に強く言ってくれませんか。みながみな悠長すぎる」
 息子の進言を苦々しく聴きながら大臣は思う。こいつはほんとうに母親似だなぁと。
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