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ふわふわした自信に戦慄する忍者 (シノブ24)
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とんでもない存在を寄越してくれたものだなその神様、と思いながらシノブは頷きながら聞いた。
そいつはもしかして疫病神のお仲間では? 送ってくれるのならもう少しましな存在も良かったはずよね? 都合は良いには良いがよりによって、これか。そこまで贅沢は言わないから、せめてもうちょっと若くて多少かっこよくてそこそこ強くて性格が良くてそしてなによりも下心のない男だったらどれほどよかったか。これは酷いと思うよ。年頃の女の子にこれをあてがうとか残酷な神が支配でもしているの? それともなに? 都合は良さと下心ありはトレードオフな関係だとも? スケベさは女の子を守りたい心と表裏一体とでも? でもバランスが悪いよ。それとそういうのって都合が悪いから切り離して欲しいよね。別にいいでしょ? 多少は夢ぐらい見させてくれても罰は当たらないわよ。こんな露悪な現実をぶつけてきてあなた自分が何をしているのか分かっているの?
「その、まぁ、細かいことは抜きにしてそのアカイにとっての神様に導かれたのだから、自分には能力や才能が開花するって発想、私は分からないんだけど」
「たとえば魔法とか術とかがこの世界にあると思うんだ」
おっ知っているのかとシノブはちょっと感心した。ある意味見直した。どこか妙に遠いところからやってきてもそういったことは知っているのか。数少ないアカイが有している常識の発見にシノブは安堵した。
「シノブもその魔法や術を使えるものなはずなんだ。そうだろ?」
「なんで知っているの?」
シノブは無意識に立ち上がりアカイを見ながら構えた。脊髄反射的な構え、臨戦態勢、そう、そうなのだ。忍者として正体を知られてしまったからには何らかの対処をしなければならない。そういった教育が骨の髄まで染み込んでいるがための行動。私は暗殺の訓練も受けた忍者。仲間以外にはうち明けられない誰にも言えない存在。
だがアカイはそれには気づいていないボケっとしたままシノブを見上げている。そしてシノブはアカイの瞳の色を見て座り直した。勘で当てたのに違いはないと判断して。何故ならアカイの瞳は呆けた色をして緊張感が皆無であったからだ。妙にぎらつきテカる瞳の光沢。その色は自分に対する分不相応な欲望ゆえのものだとも理解している。
「ごめんなさい。驚きのあまり立ち上がっちゃって」
「いやいいんだ。俺こそ秘密を話してしまって。まぁ勘なんだけどね」
「怖いぐらい勘が冴えているね」
他は鈍いにも程があるのにますます不気味だなぁとシノブは首を振りながら落ち着くために水を口に運んだ。
「まっまぁそれは君が力を封じられてしまっていることからの逆算というか、そこは隠さなくていいし否定しなくていい。間違いなく君は力を封印された魔法使いか何かに決まっている。そうでなければこんな旅にはならない。俺達は出会わない」
論理展開には難があるもののアカイのいつもの持論にはシノブは内心で驚く他なかった。しかし一方で。
「ええ。隠しもしないし否定もしません。私は力を封じられた呪われしもの、そういう解釈でお願いします。実際に私は今は使えませんがそういったことに関わってきたものです。しかし残念ながらそういったものは長い年月による修練が必要であるものであって、今までそういうことをしてこなかったものが突然魔女か何かに力を授けてやろうと言われその力を身に着けられるものではありません。そこだけは残念ながらいけませんね」
もっとも私は天才で少しの訓練でめきめきと才能を開花させていきましたけどね、とシノブは内心で笑いながら思う。ああ早く元の力に戻りたい……物思いに耽ろうとするとアカイの目は輝いている。なんで? 今の話で諦めて暗い瞳をしているはずなのに。あんたじゃ駄目って言ったつもりなんだけど。やっぱり勘が悪いな。
「訓練すれば、もしかしたらがあるんだな」
「えっ? ええ。でも才能があればな話しな上にその才能というのもかなり稀少なもので」
「そこは大丈夫だ。俺には才能があり理由もある。あとはきっかけだけなんだ」
アカイはそう言うと机の上の料理を一気に平らげ、立ち上がった。シノブは既に食べ終わっておりこれにて夕食は終わり。
「そうだよ俺はやればできる男なんだ。魔法も術もな。どうか教えてくれ。そして君の目的の力になりたい」
シノブは呆れを通り越して戦慄する。この無根拠どころか地に足がまるでついていないふわふわしきった自信は何だというのか? 自分が神に選ばれしなにかだと勘違いしているのでは? 一日どころか一晩で目覚めるはずがないというの。この天才だってそれはできなかった。それをこの男はそんな……ハァッと溜息を尽きつつシノブも立ち上がる。もしかしたらがあるし、それに、だ。その目的が自分のためつまり使命達成のためだというのなら断る理由はない。無駄だとは思うがやってみようか仕方がない。
ただし、部屋ではやめよう。部屋に入って来る口実もしくは入れさせようとする口実かもしれない。眠り薬は入れられなかったのだから今夜は最大限の警戒で以ってことに挑もう。シノブはそう思った。
そいつはもしかして疫病神のお仲間では? 送ってくれるのならもう少しましな存在も良かったはずよね? 都合は良いには良いがよりによって、これか。そこまで贅沢は言わないから、せめてもうちょっと若くて多少かっこよくてそこそこ強くて性格が良くてそしてなによりも下心のない男だったらどれほどよかったか。これは酷いと思うよ。年頃の女の子にこれをあてがうとか残酷な神が支配でもしているの? それともなに? 都合は良さと下心ありはトレードオフな関係だとも? スケベさは女の子を守りたい心と表裏一体とでも? でもバランスが悪いよ。それとそういうのって都合が悪いから切り離して欲しいよね。別にいいでしょ? 多少は夢ぐらい見させてくれても罰は当たらないわよ。こんな露悪な現実をぶつけてきてあなた自分が何をしているのか分かっているの?
「その、まぁ、細かいことは抜きにしてそのアカイにとっての神様に導かれたのだから、自分には能力や才能が開花するって発想、私は分からないんだけど」
「たとえば魔法とか術とかがこの世界にあると思うんだ」
おっ知っているのかとシノブはちょっと感心した。ある意味見直した。どこか妙に遠いところからやってきてもそういったことは知っているのか。数少ないアカイが有している常識の発見にシノブは安堵した。
「シノブもその魔法や術を使えるものなはずなんだ。そうだろ?」
「なんで知っているの?」
シノブは無意識に立ち上がりアカイを見ながら構えた。脊髄反射的な構え、臨戦態勢、そう、そうなのだ。忍者として正体を知られてしまったからには何らかの対処をしなければならない。そういった教育が骨の髄まで染み込んでいるがための行動。私は暗殺の訓練も受けた忍者。仲間以外にはうち明けられない誰にも言えない存在。
だがアカイはそれには気づいていないボケっとしたままシノブを見上げている。そしてシノブはアカイの瞳の色を見て座り直した。勘で当てたのに違いはないと判断して。何故ならアカイの瞳は呆けた色をして緊張感が皆無であったからだ。妙にぎらつきテカる瞳の光沢。その色は自分に対する分不相応な欲望ゆえのものだとも理解している。
「ごめんなさい。驚きのあまり立ち上がっちゃって」
「いやいいんだ。俺こそ秘密を話してしまって。まぁ勘なんだけどね」
「怖いぐらい勘が冴えているね」
他は鈍いにも程があるのにますます不気味だなぁとシノブは首を振りながら落ち着くために水を口に運んだ。
「まっまぁそれは君が力を封じられてしまっていることからの逆算というか、そこは隠さなくていいし否定しなくていい。間違いなく君は力を封印された魔法使いか何かに決まっている。そうでなければこんな旅にはならない。俺達は出会わない」
論理展開には難があるもののアカイのいつもの持論にはシノブは内心で驚く他なかった。しかし一方で。
「ええ。隠しもしないし否定もしません。私は力を封じられた呪われしもの、そういう解釈でお願いします。実際に私は今は使えませんがそういったことに関わってきたものです。しかし残念ながらそういったものは長い年月による修練が必要であるものであって、今までそういうことをしてこなかったものが突然魔女か何かに力を授けてやろうと言われその力を身に着けられるものではありません。そこだけは残念ながらいけませんね」
もっとも私は天才で少しの訓練でめきめきと才能を開花させていきましたけどね、とシノブは内心で笑いながら思う。ああ早く元の力に戻りたい……物思いに耽ろうとするとアカイの目は輝いている。なんで? 今の話で諦めて暗い瞳をしているはずなのに。あんたじゃ駄目って言ったつもりなんだけど。やっぱり勘が悪いな。
「訓練すれば、もしかしたらがあるんだな」
「えっ? ええ。でも才能があればな話しな上にその才能というのもかなり稀少なもので」
「そこは大丈夫だ。俺には才能があり理由もある。あとはきっかけだけなんだ」
アカイはそう言うと机の上の料理を一気に平らげ、立ち上がった。シノブは既に食べ終わっておりこれにて夕食は終わり。
「そうだよ俺はやればできる男なんだ。魔法も術もな。どうか教えてくれ。そして君の目的の力になりたい」
シノブは呆れを通り越して戦慄する。この無根拠どころか地に足がまるでついていないふわふわしきった自信は何だというのか? 自分が神に選ばれしなにかだと勘違いしているのでは? 一日どころか一晩で目覚めるはずがないというの。この天才だってそれはできなかった。それをこの男はそんな……ハァッと溜息を尽きつつシノブも立ち上がる。もしかしたらがあるし、それに、だ。その目的が自分のためつまり使命達成のためだというのなら断る理由はない。無駄だとは思うがやってみようか仕方がない。
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