83 / 111
まだ終わりではない (アカイ36)
しおりを挟む
そう、いまの言葉を翻訳したら私はあなたの事が好きですになるのではないのか? そう考えても良いのではないのか? そうであっても良いのではないか? いいやそうであるべきだが、ひとまず俺の聴き間違いという可能性も考慮し己の耳を疑い確認して見よう。
「嫌、なのか」
恐る恐る確認のために小声で聞き返すとすぐさま返事が来た。あたかもコール&レスポンスのごとくに。
「嫌なの」
好きです、と俺には聞こえた、聞こえたのだ、聞こえていいのだ。俺は難聴型主人公であることを否定し耳が敏感な主人公をここに自認する。正直もう解釈を通り越してこちらの魂で以って勝手に判断しているわけだが、それでも俺はそう思わざるを得なかった。
シノブ……以前ならここはあなたがどの女と仲良くしていても別に私にとって死ぬ程どうでもいいから勝手にしていたら? といった無関心な態度をとるはずだ。それなのに今となってはもうそんな態度をとらなくなっている。はっきりと言ったのだ。俺は聴いたのだ。他の女のことを好きになっちゃ嫌だって。
どうしてそんなことを言うんだい? そんなの決まっているじゃないか。私はあなたの事が好きだから……ええい! 弁えんかアカイ!! 俺は心中において己を罵り引っ叩いて地面に転がし倒れた俺の腹に蹴りを入れた。この一人二役ってなかなか疲れんだよこれ。
まーたまた調子に乗るんじゃあない! そんなことあるわけないだろ! 愚かにもほどがある妄想が過ぎるんだよ。まるで痛々しいおっさんじゃないか! ガールズバーとかで若いだけの娘に揶揄われ騙されている哀れで寂しい中年オヤジ丸出し思考だろそれ。お前はああいうのとは違うんだから気をつけろ! そうだ俺はああいうのとは違うんだ! ああなってはおしまい! そうなる一歩手前で辛うじてとどまっておくんだ! お前がお前であるために、人間であるために、己という人間の尊厳を守るためにだ。
よって俺は客観的かつシビアに正しくクールにシノブの今の言葉を捕えることが可能なのだ。さて、いまのあなたの事が好きだが、これは文字通りの意味である。シノブは俺のことが、好き。こうなる。これはそのまま受け取って良いとはいえ、ただし、がつく。ここに気付けるのが弁えている証拠なのだ。他の男とちがってその点はちょっと賢い俺。勉強はできないが地頭が良いはずの俺。こんな無駄なことばかり考えているのは絶対に知能の無駄遣いだけどな。
さて話を戻し、ここは「ただし友達として仲間として同志としてあなたの事が好き」となる。
全く以てその通りだ。俺の心中において開催された会議はこれを以って満場一致で可決された。反対意見を言うものはこのアカイのように会場の外に連れ出されその腹に蹴りを入れられお陀仏だ。「一人の異性としてあなたの事が好きなはずだ!」といった早漏気味な気持ちの悪いことを言うアカイはこうして全員粛清され、俺というアカイの現実的な純粋さはより高まったと言えるのである。
だいたいそうでなかったら俺の冒険は終わってしまう。『愛する彼女に心の底から惚れられる』という素敵なゴール。こんなところで彼女の愛を手に入れてしまったら物語が中座してしまう。ほら見上げてごらんこの夜空のほにゃららを。上空には約束してくれた『大いなるもの』が出てくる気配がない。その大いなる力が舞い降りて来る気配すらないではないか。
これがなによりの証拠でもある。そうだ俺が試練を乗り越えた暁には何らかの形で以ってそれが現れ俺にエンディングをもたらすに決まっている。現在の空は静かで穏やかだ。何かが到来する予兆もこちらの予感すら、ない。よってこれはそうではない。
そもそもがだ、シノブはまだ俺に対する愛を自覚する段階にまで達しているとは到底に思えない。つまりはだ、シノブは俺に好意的な感情が芽生えここに恋心が始まったと考えるのが最も現実的かつ冷静かつ弁えている。しかもだ、自分の心の変化そのものにシノブはまだ気づいてはいないのだ。
俺が他の女の誘惑に負けそうになったことについて、どうしてかイライラしてなんだか嫌だというしかないこの不可思議さ。これは一言で言えば、恋の始まりだ。そうだシノブ君は俺に恋をし始めている。そうであって欲しいので、そうであるのだ、そうでなくてはならない。
だがしかし、俺はそこを指摘しない。俺のことが好きなんだろ? とかそんな究極レベルの無駄で余計なことなんか言ったりなんかしない。それは恋の芽をむしり取るようなことだ。よってここは自然に放っておくのが極めてベストなのである。
この初期段階である友達と仲間認定。ここから焦らずじっくりと段階を踏んでいけばいいだけのことだ。よってあの好きです、で浮かれてはならない。そうであるからここで取りべき反応はこうだ。
「ごめんごめん、もう二度としないよ」
仲間として男としての対応。あまり動き過ぎてはならない。これだクールにいくぜ。どうだいシノブ?
「嫌、なのか」
恐る恐る確認のために小声で聞き返すとすぐさま返事が来た。あたかもコール&レスポンスのごとくに。
「嫌なの」
好きです、と俺には聞こえた、聞こえたのだ、聞こえていいのだ。俺は難聴型主人公であることを否定し耳が敏感な主人公をここに自認する。正直もう解釈を通り越してこちらの魂で以って勝手に判断しているわけだが、それでも俺はそう思わざるを得なかった。
シノブ……以前ならここはあなたがどの女と仲良くしていても別に私にとって死ぬ程どうでもいいから勝手にしていたら? といった無関心な態度をとるはずだ。それなのに今となってはもうそんな態度をとらなくなっている。はっきりと言ったのだ。俺は聴いたのだ。他の女のことを好きになっちゃ嫌だって。
どうしてそんなことを言うんだい? そんなの決まっているじゃないか。私はあなたの事が好きだから……ええい! 弁えんかアカイ!! 俺は心中において己を罵り引っ叩いて地面に転がし倒れた俺の腹に蹴りを入れた。この一人二役ってなかなか疲れんだよこれ。
まーたまた調子に乗るんじゃあない! そんなことあるわけないだろ! 愚かにもほどがある妄想が過ぎるんだよ。まるで痛々しいおっさんじゃないか! ガールズバーとかで若いだけの娘に揶揄われ騙されている哀れで寂しい中年オヤジ丸出し思考だろそれ。お前はああいうのとは違うんだから気をつけろ! そうだ俺はああいうのとは違うんだ! ああなってはおしまい! そうなる一歩手前で辛うじてとどまっておくんだ! お前がお前であるために、人間であるために、己という人間の尊厳を守るためにだ。
よって俺は客観的かつシビアに正しくクールにシノブの今の言葉を捕えることが可能なのだ。さて、いまのあなたの事が好きだが、これは文字通りの意味である。シノブは俺のことが、好き。こうなる。これはそのまま受け取って良いとはいえ、ただし、がつく。ここに気付けるのが弁えている証拠なのだ。他の男とちがってその点はちょっと賢い俺。勉強はできないが地頭が良いはずの俺。こんな無駄なことばかり考えているのは絶対に知能の無駄遣いだけどな。
さて話を戻し、ここは「ただし友達として仲間として同志としてあなたの事が好き」となる。
全く以てその通りだ。俺の心中において開催された会議はこれを以って満場一致で可決された。反対意見を言うものはこのアカイのように会場の外に連れ出されその腹に蹴りを入れられお陀仏だ。「一人の異性としてあなたの事が好きなはずだ!」といった早漏気味な気持ちの悪いことを言うアカイはこうして全員粛清され、俺というアカイの現実的な純粋さはより高まったと言えるのである。
だいたいそうでなかったら俺の冒険は終わってしまう。『愛する彼女に心の底から惚れられる』という素敵なゴール。こんなところで彼女の愛を手に入れてしまったら物語が中座してしまう。ほら見上げてごらんこの夜空のほにゃららを。上空には約束してくれた『大いなるもの』が出てくる気配がない。その大いなる力が舞い降りて来る気配すらないではないか。
これがなによりの証拠でもある。そうだ俺が試練を乗り越えた暁には何らかの形で以ってそれが現れ俺にエンディングをもたらすに決まっている。現在の空は静かで穏やかだ。何かが到来する予兆もこちらの予感すら、ない。よってこれはそうではない。
そもそもがだ、シノブはまだ俺に対する愛を自覚する段階にまで達しているとは到底に思えない。つまりはだ、シノブは俺に好意的な感情が芽生えここに恋心が始まったと考えるのが最も現実的かつ冷静かつ弁えている。しかもだ、自分の心の変化そのものにシノブはまだ気づいてはいないのだ。
俺が他の女の誘惑に負けそうになったことについて、どうしてかイライラしてなんだか嫌だというしかないこの不可思議さ。これは一言で言えば、恋の始まりだ。そうだシノブ君は俺に恋をし始めている。そうであって欲しいので、そうであるのだ、そうでなくてはならない。
だがしかし、俺はそこを指摘しない。俺のことが好きなんだろ? とかそんな究極レベルの無駄で余計なことなんか言ったりなんかしない。それは恋の芽をむしり取るようなことだ。よってここは自然に放っておくのが極めてベストなのである。
この初期段階である友達と仲間認定。ここから焦らずじっくりと段階を踏んでいけばいいだけのことだ。よってあの好きです、で浮かれてはならない。そうであるからここで取りべき反応はこうだ。
「ごめんごめん、もう二度としないよ」
仲間として男としての対応。あまり動き過ぎてはならない。これだクールにいくぜ。どうだいシノブ?
0
あなたにおすすめの小説
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる