わがおろか ~我がままな女、愚かなおっさんに苦悩する~

かみやなおあき

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力が欲しいんだよ (アカイ44) 

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 スレイヤーは憂い顔で以って説明しだす。

「城内の忍者からの報告書は数通ほど届いているがそれは確かに不穏を告げている。『鬼ン肉一族の者たちの魔力がどうしてか高まっている』
『ここ数日王子の体調が優れず、そのことで大臣たちが会議を開いている』とな」

 俺はその報告を聞くとスレイヤーに質問をする。

「シノブは王子が王妃候補者に騙され害を受けていると言っていたが、このことではないのか?」

「それはあいつのやっかみに過ぎなくて……」

「ちょっとあなた。少しはシノブちゃんのことを信じてあげたらどうなの?」

 カオリのひじうちによってスレイヤーは一つ溜息をつき、それから目蓋を閉じながら言った。

「分かった。ではひとつ仮定してみよう。鬼ン肉一族は自らの力を取り戻すために王子の害を与えようとしているとしても、だが封印の件はもう遥か昔のことだ。現大臣の一人に鬼ン肉族のものもいる。彼らは差別もされていないうえに特に不満も聞こえてもいない。それが今更、しかも深く長い年月をかけてようやくとは、想像を絶するな」

「しかし可能性がないとは限らない、そうだな」

「そうだが……」

 まだ納得できていないスレイヤーに対して俺は考える。説得力のあることを言わなければ。シノブのために。俺は何も知らないが、だからこそ言えることがある。想像力で以って俺は可能性をでっちあげる! 感じろ俺! 悪い奴らの思考を、漫画とかから知った、彼らの動機を。救世主的に考えてこ世界が滅び修羅界となると考えたら欲しいのは。

「……力が欲しいんだよ」
「なっ? 力だと!」
「力が欲しい、と」

 スレイヤーとカオリがアカイに言葉を繰り返した。掴みは抜群! ならばこうだ。

「そう、力だ。シノブからその王妃候補者に敗れて追放されたと聞いた。シノブは最強忍者だったんだろ? 封印されてもその最強クラスの力の持ち主がもっともっと力を欲し、あるいは取り戻したくなると考えるのはそんなに不自然ではないはずだ。その一族はかなりストイックで修行好きなものたちだと思うし」

「確かにそうかもしれないが……」

「うちのシノブちゃんが負けると聞いてびっくりしたけど、まぁあの一族であるならその可能性もあるかなって感じだね。最近だとあの一族には過去最高傑作の強さのものが出たと評判だしね」

 カオリはこちらに傾いてくれているなと俺は思うもスレイヤーがまだ歯切れが悪い。むむっ強情な奴め。早く俺に陥落しろ。墜ちるんだよスレイヤー!

「力を取り戻すという長年の悲願が叶う時が来た。それを察したシノブが単独で解決しようとしたが返り討ちで追放。その間に王妃候補者が王子に対して害をなしその時が近づいている、筋は通っているんじゃないのか」

「通ってはいない!」

 スレイヤーは瞼を開きながら言った。

「一点だけ通らない。王子だ。王子に害を為すだなんて、有り得ない、というか、そもそもな話で不可能だ。王子は封印の魔力を有している。アカイ殿には想像はできないだろうがそれはとてつもい魔力と魔術だ。発動されればどんなに力の有るものも、たちまちのうちに何も持てないぐらいの虚弱な力しか有しなくなる」

 まるでシノブのようだなと俺は思ったが口にはしなかった。シノブが封印される筋合いなんてないし。

「あとはそのまま自滅するだけ、これがこの世界の平和の源だ。この世界の暴力は王子が完全に統制し支配しきっている。誰も上回るようにはなってはいない。かつては敵対していたその鬼ン肉一族も開祖様であるイエス王の魔力に屈し封印されそして現在に至っている」

「そうであるからそこから脱しようとして王子の魔力を逆に封印しようとしている、と考えられるな。分かっているスレイヤー。王子はそのようなことにはならないと言いたいのだろうが、もしかしたら現にそうなっているのかもしれない。現に二人は王子と最近は会ってはいないのだろう」

「……そうだな。大臣からの命令によって我々は動いている。シノブの件もそうだ」

「その大臣とは鬼ン肉一族のものとかではないのか?」

 スレイヤーが沈黙するもカオリが代わりに答えた。

「そうだね。私達の上に立つ大臣はその一族のものだ。もっとも彼は一族の本家本元への婿様だけどね。大胆な野心は特にないと感じる程度の人物。ちなみに王妃候補者との繋がりは不明だよ。代々のしきたりによってお披露目までそのものの正体は身内以外は知ってはならないからね。大臣の娘だとしても試験には下駄は履かせられないよ。あれは平等が大原則だからさ。そしてその可能性についてだけど……ねぇスレイヤーさぁ」

「なんだ?」

「大臣には娘がいてさ、しかもこれまたすごく強いらしいんだってね。でシノブちゃんに勝てるような女ってどんな女かな?」

「身体能力の怪物だろうな。小細工ではなく鉄の身体を持っていたらなんとか、な。もういいカオリ。お前の言いたいことは分かる。そうだなアカイ殿。シノブに勝てるような女は鬼ン肉一族のものであり大臣の娘。この可能性は高いといえようが、しかしな……」

 これぐらい話が通じているのならもはや問答は無用と思い俺は前に出てスレイヤーに告げた。

「とにかく俺を城に行かせてくれ。大丈夫だ。もしもシノブが間違えていたら俺は止める。だがシノブが正しいままであったら俺は行動を共にする。そしてこの世界を救う」
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