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第3部 私達でなければならない
初めての赤
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濁りゆく錆色の瞳がジーナに告げる。
「あなたがその願いを抱き叶えようとするというのなら、私はあなたの前に立ちはだかりそれを防ぐものとなりましょう」
敵だ、とジーナは手を振り解こうとするも力が入らず、驚く。そこまでの力があるというのか?
「ハイネ、手を離してくれ」
ハイネは首を振り急に微笑んだ。
「ところで、私が今日あなたをここに呼んだのはですね、既にお分かりでしょうが交渉する為でした。上の人達からの要請であなたを西方の将軍職に就いてもらうように説得するお役目だったわけですが、笑えません?」
「別に笑いはしないが」
何がおかしいのかハイネはまだ笑みを緩めない。
「おかしいですよ。これは誰もあなたのことなんて分かっていないってことですからね。条件はなんでもいいというか既に将軍職が破格の待遇だから、この度の戦争の英雄に対してはかなり敬意を表していると思っているのでしょう。あなたでも満足するでしょう……そういう腹積もりであったけれども」
笑みが引き、また瞼が見開かれその瞳が全貌を現す。
「あなたは当然受け取りません」
「ああ、そうだな」
「こんなの私は分かっていました。条件は龍に最初に会わせて欲しいというのなら頷いたでしょうが、そうさせないようにしたかったのだからこれは有り得ないですよね。私は承知しておりました。あなたは自分の思うように動き、自分の思うがままに事を為そうとする、と。それを誰も止められるものはいません。思えば龍の護軍に入り最前線を志願した時から、あなたは自分の思うようにやってきましたものね。前に前へと戦い道を切り開きここまでやってきた。立塞がり止めるものを斬り伏せて来て。けれども思い通りにならないものもありますよね……例えばこの私が、です」
「そう、なるな」
ジーナは言った。
「この私にとってのあなたも、そうですよ」
ハイネは苦笑いしながら答えた。
「だから私はあなたにはじめから交渉するつもりなんてありません。ちょっと長話をしましたけど、これは私の本心であり必要なことでした。ところでジーナ。どうして手を振りほどけないのですか?思い通りにならないにしては、ちょっと変ですよね?」
変だ、とジーナは言われるまでもなく分かっていた。
たとえ両手を使い全体重をかけたとしてもハイネの細腕では自分の力には及ばない、と疑いもないというのに。
「良いですよ、遠慮なく力づくできても。乱暴に、どうぞ」
「そうしているのだがな」
動かない。いや、動かしてはいる。だがハイネの腕力に屈している。どうして……
「ハイネ、なにをした?」
「まだ、わかりません?」
問いを問いで返すハイネの瞳がまた暗く濁る。それは失望の色か?
「……あなたは本当に私のことをわかっていなくて、がっかりしました」
本当に何を言っているのか分からず想像できずジーナは逃げ出したかったが、腕を振り切ることがまだできない。
「すごくがっかりした……よくあることですよね。自分が思い理解するよりも相手からはまるで思われないって……」
「何を言っているんだ?」
「あなたはこう思い考えたはずです。ポッドの中に毒が入っているのならハイネは呑まないはずだ、と。だから私が飲んだ後は安心してその後も何口か飲んだ……どうしてあなたは私があなたに毒を飲ませるのなら、自分自身も毒を飲むはずだと思ってくれなかったのですか? 私がそんな女だと思っていたのですよね……」
ハイネの瞳は潤み出しそれが錆色と合わさってジーナの心は切なさと恐怖で同時に湧き、そのわけのわからぬ感情ですなか、叫んだ。
「毒を入れたのか! それは有り得ない! だってお前が飲んだら」
「そんなことはどうでもいい!」
互いの絶叫が響きを相殺させ辺りには死を思わせる静寂が包み、それからハイネが呟いた。
「どうでもいいのです。問題はあなたの心です。いま、有り得ないと言いましたね。言いましたよね、有り得ないと……つくづくあなたは私を傷つけ苦しめるのがお好きですよね。あなたにとって私はこの身を張るような女ではない、そう思ったのでしょう」
湿った声が震えていた。
「その一方で……あの人に対してはあなたはそうは思わない、思わないはずです。もしも万が一に、です。あなたはあの人が龍になったときにはじめて会ったとしたら自分を受け入れてくれる……そういう信頼感があるのですよね?」
「意味不明なことを言って決めつけるんじゃない」
「決めつけていないし誤魔化さないで。だから、会いに行こうとしている。そうでもなければ行こうと思うはずがない」
そうではない、私は……とジーナは言えず思うしかなかったが、少しの沈黙のあとハイネが笑い出した。
聞き覚えのない粘っこい不快さが耳に入りそれから血の臭いが鼻をついた。
どこから、血は流れているのか? いったい、どこから?
「でもですねジーナ。あの人は龍となったら、失われます。あなたはこのことを知らない振りをしているでしょうから、私の口からはっきりと伝えておきますよ。実質的にはもう、失われているも同然です。龍化とはそういうものであり、これは龍身になられたときからそうなのです。誰も疑問にも思わず、誰も抗わず、誰もが受け入れています。あの人自身だって受け入れていますもの。そうであるのに、あなたは龍に会いに行き、何をなさるおつもり?」
ハイネは咳込みながら今度は乾いた笑い声をあげる。しかしこれは誰に対する笑いだ? とジーナはハイネを見る。
彼女はこちらを見ていない、どこも見ていない……では誰に対して笑う?
「ジーナよく考えてください」
笑いをやめハイネはジーナを見つめる。
「ここでもう一度深く考えてください。よく分からない感情に支配されて自分を見失ってはいけません。繰り返します。あの人は失われるのですよ。いえ、もう失われている。殆どの人はあの人のことを忘れ龍としか見ていない。あなただってそのうちに、忘れる。これが龍の力です。時間の問題だけであり、龍に会いに行くはそれを阻止することでしょうが、無駄です。その先に行ってもあなたが望むものは何もありませんよ。あなたの知っている何かはありませんしそれに殉じる必要なんてどこにもないのです」
そういうことではないのに、ジーナはハイネの言葉にどうしてか抵抗感を抱かなかった。
手応えが、あるのだろうハイネの声は軽くなったように浮きあがりジーナには頭上から聞こえる。
「簡単です、とても簡単なことです。龍の儀式が終わるのを待てばいいだけのこと。それだけで全てが上手くいきます。しばらく我慢すればよく、そうすれば無くなるのです。龍となればこの世界からその記憶は失われます。その後あなたは西方に赴けばいい。取るべき選択肢と進むべき道はこの一つだけ。そうすれば龍の実現とあなたの救済が果たせるのです」
簡単な……なんて簡単な、とジーナは思うとハイネが頷いた。きっといまハイネにはこの気持ちが伝わったのだなとジーナには分かった。
それからハイネの手が震えだした。もう一歩、なのだろう、この私は、とジーナは意識が浮かび上がる感覚の中にまだいた。
「あなたが龍に会わない……これが私の願いでもあります」
錆色であったハイネの瞳に潤いが戻ったようにそこには瑞々しい赤が甦っていく。そこにジーナはなにか温かいものを感じた。
その色はかつて見た夕陽の色と違い、初めて見る赤だった。
この新しい赤を受け入れることができれば、見慣れた赤から遠ざかることができるのなら……私はあの日の夕陽から離れ違うところへ行ければ行くことができれば……そのことを自分自身で願い叶えようとしていたのなら……今がその時だとしたら……ジーナは瞬きをするとハイネも瞬きをし、微笑みを浮かべた。
すると私も微笑んでいるのか? とジーナは分からなかった。
ただ自分が傾いているのが分かる。ハイネが近づいてきているのではなく、自分が傾きつつあるのだろう。
ハイネは動かない。このまま彼女の方へと倒れ互いの額が当たったとしたら、もう止まらないだろうとジーナは予感する。
当たっても止らず額から交わり一つになりだし、そこから自分が自分でなくなる……そうなるのだろう、それがハイネの願いなのだろう……
「ハイネ、お前は正しい」
傾き崩れ行く意識の中でジーナは告告げた。
「世界と私を思えば、それが最適なのだろうな」
掴んでいるハイネの手の力が緩むのを感じつつジーナは言う。
「そうだハイネ、お前を受け入れれば何もかもが済む。龍と無関係の世界へ私達は……」
足の爪先に力が入り、崩壊と傾きは停止するとハイネの表情が驚きに変わった。遠ざかっていくその温かさ、そうであるからジーナは、告げた。
「だが、できない。印を持つものとして私は龍に会い、そしてヘイムを忘れない」
「捕まえて」
ハイネが呟くと、どうやって合図が聞こえたのか僧兵四人が、こちらに向かって駆け出して来る。
その反対側からも足音が聞こえてきた。
「つまりは挟み撃ちです」
「手を離すんだ!」
ハイネの言葉と共にジーナは腕を思いっきり振ると、手の甲が空を切る感触だけが伝わってきた。
どうして! と同時に腰に衝撃がきてジーナは瞬時にその意図が分かり、やられた! と呻きながら、地面を転がっていくハイネを眼で追うしかなかった。
距離をとってから立ち上がるハイネの服と顔は土と草に塗れ、その笑みは歪んでいる。
「ずっと狙っていましたよこの剣を」
「あなたがその願いを抱き叶えようとするというのなら、私はあなたの前に立ちはだかりそれを防ぐものとなりましょう」
敵だ、とジーナは手を振り解こうとするも力が入らず、驚く。そこまでの力があるというのか?
「ハイネ、手を離してくれ」
ハイネは首を振り急に微笑んだ。
「ところで、私が今日あなたをここに呼んだのはですね、既にお分かりでしょうが交渉する為でした。上の人達からの要請であなたを西方の将軍職に就いてもらうように説得するお役目だったわけですが、笑えません?」
「別に笑いはしないが」
何がおかしいのかハイネはまだ笑みを緩めない。
「おかしいですよ。これは誰もあなたのことなんて分かっていないってことですからね。条件はなんでもいいというか既に将軍職が破格の待遇だから、この度の戦争の英雄に対してはかなり敬意を表していると思っているのでしょう。あなたでも満足するでしょう……そういう腹積もりであったけれども」
笑みが引き、また瞼が見開かれその瞳が全貌を現す。
「あなたは当然受け取りません」
「ああ、そうだな」
「こんなの私は分かっていました。条件は龍に最初に会わせて欲しいというのなら頷いたでしょうが、そうさせないようにしたかったのだからこれは有り得ないですよね。私は承知しておりました。あなたは自分の思うように動き、自分の思うがままに事を為そうとする、と。それを誰も止められるものはいません。思えば龍の護軍に入り最前線を志願した時から、あなたは自分の思うようにやってきましたものね。前に前へと戦い道を切り開きここまでやってきた。立塞がり止めるものを斬り伏せて来て。けれども思い通りにならないものもありますよね……例えばこの私が、です」
「そう、なるな」
ジーナは言った。
「この私にとってのあなたも、そうですよ」
ハイネは苦笑いしながら答えた。
「だから私はあなたにはじめから交渉するつもりなんてありません。ちょっと長話をしましたけど、これは私の本心であり必要なことでした。ところでジーナ。どうして手を振りほどけないのですか?思い通りにならないにしては、ちょっと変ですよね?」
変だ、とジーナは言われるまでもなく分かっていた。
たとえ両手を使い全体重をかけたとしてもハイネの細腕では自分の力には及ばない、と疑いもないというのに。
「良いですよ、遠慮なく力づくできても。乱暴に、どうぞ」
「そうしているのだがな」
動かない。いや、動かしてはいる。だがハイネの腕力に屈している。どうして……
「ハイネ、なにをした?」
「まだ、わかりません?」
問いを問いで返すハイネの瞳がまた暗く濁る。それは失望の色か?
「……あなたは本当に私のことをわかっていなくて、がっかりしました」
本当に何を言っているのか分からず想像できずジーナは逃げ出したかったが、腕を振り切ることがまだできない。
「すごくがっかりした……よくあることですよね。自分が思い理解するよりも相手からはまるで思われないって……」
「何を言っているんだ?」
「あなたはこう思い考えたはずです。ポッドの中に毒が入っているのならハイネは呑まないはずだ、と。だから私が飲んだ後は安心してその後も何口か飲んだ……どうしてあなたは私があなたに毒を飲ませるのなら、自分自身も毒を飲むはずだと思ってくれなかったのですか? 私がそんな女だと思っていたのですよね……」
ハイネの瞳は潤み出しそれが錆色と合わさってジーナの心は切なさと恐怖で同時に湧き、そのわけのわからぬ感情ですなか、叫んだ。
「毒を入れたのか! それは有り得ない! だってお前が飲んだら」
「そんなことはどうでもいい!」
互いの絶叫が響きを相殺させ辺りには死を思わせる静寂が包み、それからハイネが呟いた。
「どうでもいいのです。問題はあなたの心です。いま、有り得ないと言いましたね。言いましたよね、有り得ないと……つくづくあなたは私を傷つけ苦しめるのがお好きですよね。あなたにとって私はこの身を張るような女ではない、そう思ったのでしょう」
湿った声が震えていた。
「その一方で……あの人に対してはあなたはそうは思わない、思わないはずです。もしも万が一に、です。あなたはあの人が龍になったときにはじめて会ったとしたら自分を受け入れてくれる……そういう信頼感があるのですよね?」
「意味不明なことを言って決めつけるんじゃない」
「決めつけていないし誤魔化さないで。だから、会いに行こうとしている。そうでもなければ行こうと思うはずがない」
そうではない、私は……とジーナは言えず思うしかなかったが、少しの沈黙のあとハイネが笑い出した。
聞き覚えのない粘っこい不快さが耳に入りそれから血の臭いが鼻をついた。
どこから、血は流れているのか? いったい、どこから?
「でもですねジーナ。あの人は龍となったら、失われます。あなたはこのことを知らない振りをしているでしょうから、私の口からはっきりと伝えておきますよ。実質的にはもう、失われているも同然です。龍化とはそういうものであり、これは龍身になられたときからそうなのです。誰も疑問にも思わず、誰も抗わず、誰もが受け入れています。あの人自身だって受け入れていますもの。そうであるのに、あなたは龍に会いに行き、何をなさるおつもり?」
ハイネは咳込みながら今度は乾いた笑い声をあげる。しかしこれは誰に対する笑いだ? とジーナはハイネを見る。
彼女はこちらを見ていない、どこも見ていない……では誰に対して笑う?
「ジーナよく考えてください」
笑いをやめハイネはジーナを見つめる。
「ここでもう一度深く考えてください。よく分からない感情に支配されて自分を見失ってはいけません。繰り返します。あの人は失われるのですよ。いえ、もう失われている。殆どの人はあの人のことを忘れ龍としか見ていない。あなただってそのうちに、忘れる。これが龍の力です。時間の問題だけであり、龍に会いに行くはそれを阻止することでしょうが、無駄です。その先に行ってもあなたが望むものは何もありませんよ。あなたの知っている何かはありませんしそれに殉じる必要なんてどこにもないのです」
そういうことではないのに、ジーナはハイネの言葉にどうしてか抵抗感を抱かなかった。
手応えが、あるのだろうハイネの声は軽くなったように浮きあがりジーナには頭上から聞こえる。
「簡単です、とても簡単なことです。龍の儀式が終わるのを待てばいいだけのこと。それだけで全てが上手くいきます。しばらく我慢すればよく、そうすれば無くなるのです。龍となればこの世界からその記憶は失われます。その後あなたは西方に赴けばいい。取るべき選択肢と進むべき道はこの一つだけ。そうすれば龍の実現とあなたの救済が果たせるのです」
簡単な……なんて簡単な、とジーナは思うとハイネが頷いた。きっといまハイネにはこの気持ちが伝わったのだなとジーナには分かった。
それからハイネの手が震えだした。もう一歩、なのだろう、この私は、とジーナは意識が浮かび上がる感覚の中にまだいた。
「あなたが龍に会わない……これが私の願いでもあります」
錆色であったハイネの瞳に潤いが戻ったようにそこには瑞々しい赤が甦っていく。そこにジーナはなにか温かいものを感じた。
その色はかつて見た夕陽の色と違い、初めて見る赤だった。
この新しい赤を受け入れることができれば、見慣れた赤から遠ざかることができるのなら……私はあの日の夕陽から離れ違うところへ行ければ行くことができれば……そのことを自分自身で願い叶えようとしていたのなら……今がその時だとしたら……ジーナは瞬きをするとハイネも瞬きをし、微笑みを浮かべた。
すると私も微笑んでいるのか? とジーナは分からなかった。
ただ自分が傾いているのが分かる。ハイネが近づいてきているのではなく、自分が傾きつつあるのだろう。
ハイネは動かない。このまま彼女の方へと倒れ互いの額が当たったとしたら、もう止まらないだろうとジーナは予感する。
当たっても止らず額から交わり一つになりだし、そこから自分が自分でなくなる……そうなるのだろう、それがハイネの願いなのだろう……
「ハイネ、お前は正しい」
傾き崩れ行く意識の中でジーナは告告げた。
「世界と私を思えば、それが最適なのだろうな」
掴んでいるハイネの手の力が緩むのを感じつつジーナは言う。
「そうだハイネ、お前を受け入れれば何もかもが済む。龍と無関係の世界へ私達は……」
足の爪先に力が入り、崩壊と傾きは停止するとハイネの表情が驚きに変わった。遠ざかっていくその温かさ、そうであるからジーナは、告げた。
「だが、できない。印を持つものとして私は龍に会い、そしてヘイムを忘れない」
「捕まえて」
ハイネが呟くと、どうやって合図が聞こえたのか僧兵四人が、こちらに向かって駆け出して来る。
その反対側からも足音が聞こえてきた。
「つまりは挟み撃ちです」
「手を離すんだ!」
ハイネの言葉と共にジーナは腕を思いっきり振ると、手の甲が空を切る感触だけが伝わってきた。
どうして! と同時に腰に衝撃がきてジーナは瞬時にその意図が分かり、やられた! と呻きながら、地面を転がっていくハイネを眼で追うしかなかった。
距離をとってから立ち上がるハイネの服と顔は土と草に塗れ、その笑みは歪んでいる。
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