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chapter4

オリエンテーション 1

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どうも、藤川白斗です。
ついに始まったオリエンテーション。
緊張するが、ここからが勝負だ。
ちなみに僕の班のメンバーは先日話したとおり、僕、青矢、成瀬さん、桃華の4人だ。始めは皆で山を登り、中部が目的地になっている。そこで昼食をとり、そこから色々するみたいだ。そろそろ担任から声がかかり、これから登りが始まる。目標として今回はもっと仲良くなり、お互いの事を知るって感じでいきます。
よし、声をかけよう!。
:白斗「成瀬さん、一緒に登らない?」
:成瀬「もちろん!同じ班だもんね!」
そうだけどそうじゃないが一緒に登れるなら贅沢は言わない。
:白斗「成瀬さん、体力あんまりあるように見えないけど大丈夫?」
口が滑り冗談半分でdisってしまう。
:成瀬「もー失礼だよー?確かに体力は無いけど登りきって見せるんだから!」
プクーっとむくれて怒る。怒ったところはこれはこれで可愛い。
:白斗「なんかあったら言ってよ!力になるから!なんならおんぶだってする!」
ただ触りたい訳じゃないよ?
:成瀬「そう言ってくれて嬉しい!でもよっぽどの事がない限りおぶってもらったりなんてしませーん。」
:白斗「そりゃあそうですよねー」
僕と成瀬さんが一緒に進み、その少し後ろで桃華と青矢が遅れて付いて来ている。空気を読んでくれているのだろう。成瀬さんと二人で笑いながら山を登る。なんて幸せなんだ。今回で成瀬さんに近づきたい。


私、工藤桃華は鬱陶しいのに絡まれている。
:青矢「いいんですか工藤さんあれあれ、めっちゃイチャついてますよ?」
見れば分かるわ。
:桃華「何であたしに言うのよ?」
:青矢「え、だって、ねぇ、好きなんでしょ?白斗の事」
なぜバレたのか、それとも感がいいだけか、おまけにいつもヘラヘラしてるから考えてる事も分かんない。
まぁとりあえず誤魔化す。
:桃華「は!?!?えっ一体何を?え?何で?どこをどう見てそう思ったの?」
誤魔化しに力が入り過ぎてキョドる私。
:青矢「え、だって入学式の日、友達と昼飯食ってたら一緒に帰っていくの見たし、前に白斗の家に行った時に気付いたんだけど隣の家の表札工藤だったし、白斗に言われたことは工藤さんあんまり断らないし?だいぶ顔に出てる」
別に顔に出てないわよ、ここまで察せられると素直に認めるしかない、白斗を好きになった事を忘れたいと思っているのも顔に出てたり、しないよね・・・?よし、決めた、忘れる方法なんてこれしかない。
:桃華「無駄に鋭いタイプなのね、納得いかないわ。ねぇ、アンタって好きな人いるの?」
青矢で忘れれば。
:青矢「いるけど?」
私がこのまま青矢を好きなれば。
:桃華「誰?」
白斗から離れることが出来る。
:青矢「お前」
白斗を忘れたい。
:桃華「なら私と付き合ってよ」
何言ってるんだろう。
:青矢「は?やだよ」
:桃華「でも私の事好きなんでしょ?」
本当に何を言ってるの、頭が痛い。
:青矢「確かに好きだよ。でも俺は白斗じゃない、代わりにすんな。」

その時私は分からなくなっていた。白斗を忘れたいのか、白斗と居たいのかを。諦めると決めたはずなのに、諦めなんてついていなかった。ううん、諦めるなんて無理と思う私がいたのだろう。背中なんて絶対押したくないと。そこで、私は決めたのだ。代わりが居てくれれば、と。誰でも良かった。白斗の代わりになってくれる人が居ればそれで。だから私は青矢にこんな事を言ってしまったのだろう。諦めはもうついていると信じたかったのだ。諦めがついているなら言えると思った、ただの自己満足だ。
:桃華「本当にごめん、最低なことした。でも今は私と居たくないと思うけど・・・私のところに居て・・・白斗の邪魔はしたくない・・・。」
白斗にも失恋し、私の事を思ってくれる青矢にまで見離されたら・・・。今は、近くにいて欲しい。
:青矢「けなげだねー、でも安心しろよ、俺はお前を見てるから。」
さりげなく心の中にまで入ってこないで、別にあんたの事なんて考えてない。そこで青矢は立ち止まり、大きな掌で私の頭を撫でる、ここで優しくするのはずるい、涙が止まらなかった。
:青矢「ふっきれるまで、待つからさ。」
:桃華「あんな酷いことしたのになんで優しくするの?」
涙で化粧も、ぐちゃぐちゃだ。
:青矢「何でだろーな?おい、化粧で顔がぐちゃぐちゃだぞ?」
:桃華「分かってる!!」
:青矢「いって!!何すんだよ!!」
:桃華「ムカついたから。」
ちねってやったらちょっと面白い顔してた青矢のヤツ。
:青矢「あ、やっと笑った」
笑顔でこちらを向く青矢。
:桃華「アンタのおかげだわ、なんか笑っちゃう、さっきまでのが気持ちが嘘みたい」
:青矢「だろ?」
これからずっと白斗と緑、2人をずっと眺めることになり、この先笑うことなんてないと思ってた、少なくともその位には白斗が好き、だった。
でも違ったみたい、白斗や緑以外にも私を笑顔にしてくれる人いたんだ。
ありがとね、青矢。 

僕、藤川白斗は我慢の限界だった。
ちょっといいですか二人共、ずっと成瀬さんと僕に丸聞こえだったんですけど!?
「アンタって好きな人いる?」←この辺りから全部聞こえてるんですけど!?どーしてくれんの!?
って言いたい。
せっかく楽しくおしゃべりしてたのに途中から盗み聞きするのに神経使いまくったわ!
そしてこの空気である。
:白斗「後ろの会話、丸聞こえだね・・・」
:成瀬「う、うん・・・」
なんで顔赤いのこの人は・・・いや可愛いけど。
:成瀬「藤川君って、好きな人いるの?」
この時が来た。
:白斗「え!?あ、あの、い、いないよ!?」
あー何言ってんだせっかくの告白タイムがー!!!
:成瀬「藤川君って、松木君と仲良いよねー」
:白斗「まあ、入学から一緒に居るしね、それが何かあった?」
:成瀬「あの・・・私実は、松木君が好きなの!さっきの事もあったし今日の夜には桃華に話すよ。藤川君は松木君と仲良かったし相談してみようと思って。藤川君と一緒に頑張りたいの!迷惑かな?」
うーん。よし、整理しようか。
成瀬→青矢は→←桃華
僕は失恋した。
:白斗「そ、そーなんだ。全然僕でよかったら・・・あれ?何か目に砂が入ったみたい。少し休憩するから3人で先に行ってて!」
:青矢「はぁ・・・」
:桃華「はぁ・・・」
:成瀬「大丈夫?私も一緒に」
:白斗「いいから行けって!!」
僕最低、完全に八つ当たりだ。
:成瀬「分かった。な、何かあったら呼んでね?」
走って近くにあった木の陰に座り込む。
:青矢「わるい成瀬、一人で先行っててくれるか?先生はうまく誤魔化しといてくれ。俺もすぐ向かうから頼む。」
:成瀬「うん、分かった。桃華も行こ?」
:青矢「工藤さんも置いてってくれない?今の白斗には多分工藤さんが必要だからさ?本当に俺もすぐ行くから。」
:桃華「・・・」
:成瀬「分かった・・・。」
成瀬が先に向かう。
:青矢「桃華、行ってやって?それと一言伝えたい事あったから。さっきの成瀬の言葉聞こえててさ、成瀬の前でこの言葉を言うのは少し酷だから」
:桃華「何?」
:青矢「ごめん、白斗の事は励まして欲しい・・・けど、励まして白斗の方に傾くなら俺は行かせたくない、でも」
:桃華「つまりあっちになびかず白斗を元気づけてアンタのところに戻って来ればいいんでしょ?」
:青矢「言わなくても分かった?それならカッコつけさせてよー。」
:桃華「はいはい、あんまり緑一人にしたくないし、もう先に行ってきて?」
:青矢「本当にだいじょ」
:桃華「大丈夫よ」
:青矢「うし、先行ってる、あとはまかせる!」
:桃華「うし、まかされた!!」
さっきからずっと気になってたけど白斗はあそこに隠れてるつもりなのかしら、丸見えじゃない。ほんっと馬鹿ねぇ。
:桃華「こんな所で何やってんの」
あれだけカッコつけた事を言っといて、自分でも呆れる。
:白斗「桃華・・・僕は・・・。」
でもこんな泣き顔を見たら、気が気でならない忘れられると思ったのに。
そっと白斗の肩に手を乗せる、泣いてる白斗を友達として慰める事、それは今の私には早過ぎた。
まだ、気持ちがあったから、それに振られたという事も知っている。私にもまだチャンスがある。そう、悪い考えが頭をよぎるのだ。青矢への罪悪感も湧いてくる・・・。
でも。
:桃華「白斗、好き。」
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