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徐々に仲間を増やしながら伏線を散りばめる章
5. チャイナドレスでいいんじゃね? エロそう
しおりを挟む「連れて来た」
「早ッ!? って、え、比奈ちゃん!?」
「あはは……さっきぶり、愛莉ちゃん」
放課後、早速長瀬と出会った例のテニスコートに呼び出された俺は、履いている靴もそりゃ一緒に同じところ行くだろうという程度の感覚で倉畑も連れ出してみる。
特に抵抗はされなかった。
のほほんとしているのか、危機感が無いのか。
前者であって欲しい。
「ハルト、比奈ちゃんと知り合いだったんだ」
「全くの他人ではないと思うけど?」
「……えっ、わたしが聞かれてる?」
とりあえずビールくらいの感覚で呼び出したけど、その辺り重要だと思う。長瀬がいるならいいけど、うーん、廣瀬かー、とか思われたら泣く。
「いや、ホイホイ着いて来たから、一応、確認」
「えぇ。軽いなぁ……うん。でも、廣瀬くんがなにかお願いしてくるなんて珍しいし、うん。たまには聞いてあげないとなって」
「アンタ、こんないたいけな子からどういう扱いされてるのよ」
「保護者じゃね」
この学校で唯一、俺の将来を形だけでも案じているのだ。妥当なところだろう。
ともかく、嫌々連れて来られたという感じでは無さそうなので一安心。まぁ、なんとなく「断りはしない」という気はしていたけど。
「あの、愛莉ちゃん。廣瀬くんからなんとなくしか聞いてないんだけど、その……ふっとさる? っていうのをするの?」
「もしかして、入部してくれるのっ!?」
「いや、あの……ふっとさるって何かなぁって」
盛大にズッコケる長瀬。
いい滑りっぷりだ。
スカートで転んだらパンツ見えるぞ。
「……あのさぁ、ハルト。私がなんで最初に比奈ちゃん誘わなかったのか、分かる?」
「いや、まったく。サッパリ」
「ちょっとは考えなさいよっ……いいっ? 仮にも私、フットサル部を作りたいの。同好会じゃなくて、部活。ちゃんとメンバー集めて、試合とか、大会とか、そういうのも出たいの」
え、知らなかった。嘘だろ。
だって偶然出会っただけの俺をあんな簡単に誘っておいて、試合に大会って。経験者をそう簡単に集められるわけじゃなかろうに。
「わたしっ、熱くなると周りが見えなくなっちゃうから……もしかしたら、比奈ちゃんに迷惑掛けるかもって思って、あえて誘わなかったの。それを、アンタは」
「あ、はいはい。分かった分かった。いや、でもまぁ、それはええやん別に。なんなら基礎とかは俺が教えるし」
「…………え、アンタが?」
あ、やっべ。
長瀬は不可解そうに眉を顰め、倉畑は何が何だかという様子でこちらを見つめている。口が滑った。俺、所謂「経験者」って一言も言ってなかったのか。
あー、面倒。
「なに、ハルト経験者なの?」
「あーっ…………まぁ、軽くその、ちょっと齧ってたっていう、うん。そんくらい」
「……へー…………」
口ぶりからして、長瀬はあまり信じていないご様子。だから、もう、面倒なんだ。サッカーもフットサルも大して変わらないだろう。
何故自ら悪い方向に首を突っ込むのか。
こうなってはもう遅いけど。
遅いけど、さ。
「まぁ、そうよね。そう簡単に行くわけでもないし、別に比奈ちゃんを寄って集ってイジメるわけじゃないしね」
「俺がいなかったら何してたんだよお前」
周りが見えなくなる、というのはなんとなく想像が付く。なにせ俺の心境をまったく理解していないわけだから、そりゃそうだ。うんうん。
「えと、愛莉ちゃん。それで、フットサル部って、なにをするの?」
「簡単に言うと、狭いサッカーみたいな感じかな」
「サッカーかぁ。わたし、運動苦手なんだよねえ」
「フットサルならむしろ、始めるのにちょうどいいんじゃねーの。プロならともかく、汗流すくらいなら適度に良い運動だろ」
「……やけに詳しいのね」
鋭い視線が飛んで来る。
あぁまったく、少し調子に乗ったらこれだ。
比較的口数少ないのに喋ったらボロが出るって、人のこと陰キャ陰キャ言えねえホント。
「倉畑って部活やってんの」
「ううん。中学まで茶道部だったんだけど、高校には無かったから、今はなにも。それに……」
言葉を止めた倉畑は、なにか思い返すかのように地面を見つめる。
なんだろう。部活をやらない深刻な理由でもあるのだろうか。彼女にしては珍しい、思い詰めた表情に少しばかり気を取られてしまう。
「……比奈ちゃん?」
「あっ……ううん。なんでもない。その、部活は、全然なにも考えてないし、入る気も無かったから……もう2年も始まっちゃったし」
山嵜高校は部活動の盛んな学校で、特にサッカー部とバスケ部は全国レベルに届きそうな強豪である。
そんな環境で、途中から参加するというのも気後れするというのは、分からないでもない。
しかし、茶道部ねぇ。
イメージ通りというか。
シンプルに和服着せたい。超似合いそう。
え、長瀬?
チャイナドレスでいいんじゃね? エロそう。
「今から入部するってのも中々辛いわよね……うん、じゃ、入ろっか」
「ええっ? え、でもわたしっ、ホントに運動できないし、二人の迷惑になるんじゃ……っ」
「むしろ倉畑がおってちょうどええわ。俺とコイツじゃ口がいくらあっても足りん」
「原因はハルトだと思うけどなぁッ!」
ほら、見ての通りだ。
柔軟剤が必要なんだよ。仮にも一緒にやっていくなら。
「……うん、分かった。上手くなれるか分かんないけど、二人のお願いだし、ちょっと頑張ってみる」
「ホントにっ!? やったぁぁっ! ハルト、マジでナイスッ!」
「え。あ、うん。もっと褒めろ」
「まさか比奈ちゃんが乗ってくれるなんてちっとも思ってなかったら、うわー嬉しい~~っ! これからもよろしくねっ!」
「ひゃっ! あ、あの、愛莉ちゃん……っ!」
「おい、褒めろよ」
俺のことなど完全にガン無視で倉畑に抱き付く長瀬。可哀そうに。まぁまぁ暑いんだし汗臭かろう。傍から見れば美少女の美しい友情なのだが、ここまで邪魔者扱いされると、なんか、うん。
「おっし、じゃあ早速今日から練習ねっ。比奈ちゃん、体育着持ってるでしょ? 一緒に着替えよっ」
「へっ、あ、うん。分かった」
「ハルトも着替え…………持ってないか。体育出てないもんね」
「ご名答だ」
「自慢げに言うなってのっ。着替えてくるから、ちょっと待ってて」
そう言って二人は、新館にある更衣室へと旅立ってしまった。
一人残される俺。
テニスコートで練習か。足痛めそう。
ここしかないなら、仕方ないけど。
(なんか、トントン拍子やな)
もとよりフットサル部なんぞに協力する気などサラサラ無かったわけだが。
気付けば一人勧誘に成功し、さも当然のように部員としてここにいるという現状。
やはり、長瀬の仕業である。
相手が彼女でなければ、ここまで雰囲気に流されずどこかしらで「ノー」を突き付けることが出来た。出来たはず、なのに。
(結局、俺は逃げられない、予め決められた運命ってわけね。あはは。ウケる)
長瀬の私物と思われるフットサルボールが、コートに転がっている。
一瞬、取りに行こうとして、すぐに足を止めた。
なんとなく。なんとなくなんだけど、身体が「やめてくれ」って、言った気がした。本当にそう叫んでいるのは俺の心以外の何物でもないのだが、そういうことにしておきたかった。
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