美少女に恐喝されてフットサル部入ったけど、正直もう辞めたい

平山安芸

文字の大きさ
5 / 5
徐々に仲間を増やしながら伏線を散りばめる章

5. チャイナドレスでいいんじゃね? エロそう

しおりを挟む

「連れて来た」
「早ッ!? って、え、比奈ちゃん!?」
「あはは……さっきぶり、愛莉ちゃん」

 放課後、早速長瀬と出会った例のテニスコートに呼び出された俺は、履いている靴もそりゃ一緒に同じところ行くだろうという程度の感覚で倉畑も連れ出してみる。

 特に抵抗はされなかった。
 のほほんとしているのか、危機感が無いのか。
 前者であって欲しい。


「ハルト、比奈ちゃんと知り合いだったんだ」
「全くの他人ではないと思うけど?」
「……えっ、わたしが聞かれてる?」

 とりあえずビールくらいの感覚で呼び出したけど、その辺り重要だと思う。長瀬がいるならいいけど、うーん、廣瀬かー、とか思われたら泣く。


「いや、ホイホイ着いて来たから、一応、確認」
「えぇ。軽いなぁ……うん。でも、廣瀬くんがなにかお願いしてくるなんて珍しいし、うん。たまには聞いてあげないとなって」
「アンタ、こんないたいけな子からどういう扱いされてるのよ」
「保護者じゃね」

 この学校で唯一、俺の将来を形だけでも案じているのだ。妥当なところだろう。

 ともかく、嫌々連れて来られたという感じでは無さそうなので一安心。まぁ、なんとなく「断りはしない」という気はしていたけど。


「あの、愛莉ちゃん。廣瀬くんからなんとなくしか聞いてないんだけど、その……ふっとさる? っていうのをするの?」
「もしかして、入部してくれるのっ!?」
「いや、あの……ふっとさるって何かなぁって」

 盛大にズッコケる長瀬。
 いい滑りっぷりだ。
 スカートで転んだらパンツ見えるぞ。


「……あのさぁ、ハルト。私がなんで最初に比奈ちゃん誘わなかったのか、分かる?」
「いや、まったく。サッパリ」
「ちょっとは考えなさいよっ……いいっ? 仮にも私、フットサル部を作りたいの。同好会じゃなくて、部活。ちゃんとメンバー集めて、試合とか、大会とか、そういうのも出たいの」

 え、知らなかった。嘘だろ。

 だって偶然出会っただけの俺をあんな簡単に誘っておいて、試合に大会って。経験者をそう簡単に集められるわけじゃなかろうに。


「わたしっ、熱くなると周りが見えなくなっちゃうから……もしかしたら、比奈ちゃんに迷惑掛けるかもって思って、あえて誘わなかったの。それを、アンタは」
「あ、はいはい。分かった分かった。いや、でもまぁ、それはええやん別に。なんなら基礎とかは俺が教えるし」
「…………え、アンタが?」

 あ、やっべ。

 長瀬は不可解そうに眉を顰め、倉畑は何が何だかという様子でこちらを見つめている。口が滑った。俺、所謂「経験者」って一言も言ってなかったのか。

 あー、面倒。


「なに、ハルト経験者なの?」
「あーっ…………まぁ、軽くその、ちょっと齧ってたっていう、うん。そんくらい」
「……へー…………」

 口ぶりからして、長瀬はあまり信じていないご様子。だから、もう、面倒なんだ。サッカーもフットサルも大して変わらないだろう。

 何故自ら悪い方向に首を突っ込むのか。
 こうなってはもう遅いけど。
 遅いけど、さ。


「まぁ、そうよね。そう簡単に行くわけでもないし、別に比奈ちゃんを寄って集ってイジメるわけじゃないしね」
「俺がいなかったら何してたんだよお前」

 周りが見えなくなる、というのはなんとなく想像が付く。なにせ俺の心境をまったく理解していないわけだから、そりゃそうだ。うんうん。


「えと、愛莉ちゃん。それで、フットサル部って、なにをするの?」
「簡単に言うと、狭いサッカーみたいな感じかな」
「サッカーかぁ。わたし、運動苦手なんだよねえ」
「フットサルならむしろ、始めるのにちょうどいいんじゃねーの。プロならともかく、汗流すくらいなら適度に良い運動だろ」
「……やけに詳しいのね」

 鋭い視線が飛んで来る。
 あぁまったく、少し調子に乗ったらこれだ。

 比較的口数少ないのに喋ったらボロが出るって、人のこと陰キャ陰キャ言えねえホント。


「倉畑って部活やってんの」
「ううん。中学まで茶道部だったんだけど、高校には無かったから、今はなにも。それに……」

 言葉を止めた倉畑は、なにか思い返すかのように地面を見つめる。

 なんだろう。部活をやらない深刻な理由でもあるのだろうか。彼女にしては珍しい、思い詰めた表情に少しばかり気を取られてしまう。


「……比奈ちゃん?」
「あっ……ううん。なんでもない。その、部活は、全然なにも考えてないし、入る気も無かったから……もう2年も始まっちゃったし」

 山嵜高校は部活動の盛んな学校で、特にサッカー部とバスケ部は全国レベルに届きそうな強豪である。
そんな環境で、途中から参加するというのも気後れするというのは、分からないでもない。
 
 しかし、茶道部ねぇ。
 イメージ通りというか。
 シンプルに和服着せたい。超似合いそう。

 え、長瀬?
 チャイナドレスでいいんじゃね? エロそう。


「今から入部するってのも中々辛いわよね……うん、じゃ、入ろっか」
「ええっ? え、でもわたしっ、ホントに運動できないし、二人の迷惑になるんじゃ……っ」
「むしろ倉畑がおってちょうどええわ。俺とコイツじゃ口がいくらあっても足りん」
「原因はハルトだと思うけどなぁッ!」

 ほら、見ての通りだ。
 柔軟剤が必要なんだよ。仮にも一緒にやっていくなら。


「……うん、分かった。上手くなれるか分かんないけど、二人のお願いだし、ちょっと頑張ってみる」
「ホントにっ!? やったぁぁっ! ハルト、マジでナイスッ!」
「え。あ、うん。もっと褒めろ」
「まさか比奈ちゃんが乗ってくれるなんてちっとも思ってなかったら、うわー嬉しい~~っ! これからもよろしくねっ!」
「ひゃっ! あ、あの、愛莉ちゃん……っ!」
「おい、褒めろよ」

 俺のことなど完全にガン無視で倉畑に抱き付く長瀬。可哀そうに。まぁまぁ暑いんだし汗臭かろう。傍から見れば美少女の美しい友情なのだが、ここまで邪魔者扱いされると、なんか、うん。


「おっし、じゃあ早速今日から練習ねっ。比奈ちゃん、体育着持ってるでしょ? 一緒に着替えよっ」
「へっ、あ、うん。分かった」
「ハルトも着替え…………持ってないか。体育出てないもんね」
「ご名答だ」
「自慢げに言うなってのっ。着替えてくるから、ちょっと待ってて」

 そう言って二人は、新館にある更衣室へと旅立ってしまった。

 一人残される俺。
 テニスコートで練習か。足痛めそう。
 ここしかないなら、仕方ないけど。


(なんか、トントン拍子やな)

 もとよりフットサル部なんぞに協力する気などサラサラ無かったわけだが。

 気付けば一人勧誘に成功し、さも当然のように部員としてここにいるという現状。


 やはり、長瀬の仕業である。

 相手が彼女でなければ、ここまで雰囲気に流されずどこかしらで「ノー」を突き付けることが出来た。出来たはず、なのに。


(結局、俺は逃げられない、予め決められた運命ってわけね。あはは。ウケる)


 長瀬の私物と思われるフットサルボールが、コートに転がっている。
 一瞬、取りに行こうとして、すぐに足を止めた。

 なんとなく。なんとなくなんだけど、身体が「やめてくれ」って、言った気がした。本当にそう叫んでいるのは俺の心以外の何物でもないのだが、そういうことにしておきたかった。


しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

易しい花やで

自分もスポーツ系の小説を書いてて、すごい参考になります!。面白いです!。

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる

グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。 彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。 だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。 容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。 「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」 そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。 これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、 高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。 将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。 サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。 そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。 サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。

付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜

咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。 そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。 「アランくん。今日も来てくれたのね」 そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。 そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。 「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」 と相談すれば、 「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。 そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。 興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。 ようやく俺は気づいたんだ。 リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。