4 / 5
徐々に仲間を増やしながら伏線を散りばめる章
4. リビングに土足で上がってブレイクダンス躍ってる
しおりを挟む誤解の無いように言っておくと、俺には本当に友達がいない。
二年生の春という、まぁまぁグループの固まった時期に転校してきたことが悪いのか。
無駄に高い身長を覆い隠す猫背。ぼさぼさの髪の毛。普通にしてるのに「なに怒ってんの?」とか言われる目つきが悪いのか。はたまたやる気の無い態度と、ロクに言葉を発しない元来のコミュ障が原因なのか。
理由はハッキリとしないところであるが、それぞれを上手いこと掛け合わせた結果、友達がいない。
幼稚園児ならともかく、小学生の頃からこんな調子でそのまま高校まで来てしまったのだからいよいよ笑えなかった。
別に俺は「一人が好きなんだ、ほっといてくれ」とか言っているわけでもないし、一人が好きなわけでも無い。
ただそれ以上に、群れるのも嫌いで。
世間ではそれを中二病と呼ぶのだが、やはり、自分でもそう思っている。
もう変えれへんこの性格。誰か助けて。
(つまらん)
長瀬の忠告を受けて超久々に授業を全て真面目に聞いてみたはものの、やはり退屈で仕方が無い。
人の話というのは中々に退屈だ。
自分が中心じゃないと気分が悪い。
英語の授業だったのだが、むしろ俺が教鞭を執りたいくらいだった。あれくらい、俺でも出来そう。
まぁ、やる気は無い。
やろうと思えばなんでも出来る気はするが、するつもりはないし、多分できない。根拠の無い自信に満ち溢れた、極めて普通の男子高校生のはずなのだ。はずなのに。
(友達欲しいわ)
これに関しては結構本気だった。
喋るのは、好きでもないが嫌いでも無い。他愛もない会話をする相手くらい、中二病でも欲しいのだ。
故に、長瀬のような人間と俺が交友を持ったというのは、ここ数年のなかで結構なビッグイベントだった。
顔に出さないけど。嬉しそうな顔しても「ごめんね怒らせて」とか言われる。泣きたい。
今の自分をどうにかしたい気持ちは、無いことも無いのだけれど。特に行動に移そうとか、そういうやる気は一切無い。それが俺、廣瀬陽翔というしょうもない人間の大まかな実態である。
「廣瀬くん、お仕事だって」
ところで、友達は居ないが会話相手が一人だけいる。
俺が授業どころかHRにも出ていなかった頃、クラスの様々な委員を決める時間があって、気付いたら俺は体育委員にされていたばかりか、教科係というものにまでされていた。
ザックリ説明すると、先生の授業の準備を手伝うという、言うならば雑用である。
で。英語の教科係に俺と共に任命されたのが。
たった今、俺に声を掛けて来たこの。
「もしかして、また寝てた?」
「いや、意識を遠くに飛ばしてただけ」
「それ、寝てるっていうんだよ。もうっ、たまに授業来たと思ったら、そんなのばっかなんだから」
呆れたように笑う、黒縁メガネを掛けた、ショートカットの小さなクラスメート。
倉畑比奈である。
学級委員も務めている彼女は、なにかと理由を付けて不真面目な俺に授業を受けさせようと声を掛けてくる。悉く裏切っているわけだが。
クラスの中心という彼女の立場、そして同じ教科係という関係もあり、この学校に転校してきてからは最も会話の頻度が多い人物である。
まぁ、だからといってなんだという相手でもないのだけれど。
顔は、可愛いと思う。
積極的な性格ではないが、お淑やかでいかにも「女の子」というタイプ。しかし、彼女が俺に話し掛けて来るのはあくまで立場上の理由。俺にからしても倉畑比奈はそれ以上でも、それ以下の存在でも無かった。
「小テスト集めて、職員室まで持って来てほしいんだって」
「いや、そんなん一人で十分やろ。俺、帰りたいんだけど」
「だーめっ! こういうところで頑張らないと、本当に卒業出来なくなっちゃうよ?」
「んなこと言われても……ていうか、小テストってなに?」
「もー、やっぱり寝てた……」
起きながら目ェ瞑ってただけや。
ホンマに。嘘じゃない。嘘だけど。
こんな感じで、まぁ、果たしてこれをコミュニケーションと呼べるのか怪しいものだが。一応、彼女のおかげで「無言のまま一日を過ごす」ということだけは回避できているというわけだ。
世話する義理も無いだろうに。
よく気を遣ってくれるものだ。
一度くらい、彼女の期待に応えてあげたいところなのだけれども。まぁやる気は無い。例の如く。
「本当に単位とか大丈夫なの? わたし、これでも結構心配してるんだよ」
「試験が100%なんだろ。なら大丈夫だって」
「だから心配してるのになぁ……」
廊下で紡がれる他愛もない会話は、実に新鮮である。ほぼ惰性だけど。
俺が授業を真面目に受けない理由は、まさにそこであった。単位制の私立高校故か、偏差値の低さ故か、出席率を全く問われないのである。
流石に一度も授業を受けないというのは問題があるだろうが、基本的に「放任主義」というか。
ロクに机に座っていない俺を誰もが一度は諭すのだが、こうも徹底していると誰も気を遣わなくなる。
頑張る奴は応援するが、頑張らない奴は放っておく。
そういうスタンスなのだ。
だからここに来た。
「失礼しましたー」
「うーっす」
「ありがとね、廣瀬くん。プリント持ってくれて」
「別にええて。こんなんなんの労力も使わんし」
「でも、何だかんだいっつも仕事は付き合ってくれるし、実は結構マメなの?」
「いや、暇つぶし」
「あははっ。言うと思った」
俺のしょうもない答えに形だけでも笑ってくれる倉畑は、本当に出来た子だと思う。
実際のところ、こうしたやり取りに少なからず居心地の良さを覚えている自分も、そこにいる。長瀬との会話の応酬を思い出すと、余計にそう感じる。
容姿端麗で、真面目な倉畑のことだ。
きっとお似合いの彼氏がいることだろう。
だとしても、それはもう仕方ないことである。今以上の関係など求めない。これくらいの距離感、頻度で会話を紡ぐ程度が、俺にはお似合いだ。
「あ、そうだ廣瀬くん。お昼休み、愛莉ちゃんと中庭で一緒にご飯食べてなかった?」
あ、え、ちょっと待って。
タイム。ストップ。
「エッ…………あ、はい。まぁ、その、はい」
「……どうかしたの?」
「いや、その、あの、見られていたのか、と」
「うん。だって愛莉ちゃん、これからハルトのところ行ってくるって、わざわざわたしに言ってきたよ? 二人とも、仲良かったんだね。知らなかった」
それに関しては俺も知らない。
仲が良かった時期とか。
マジで知らん。記憶にございません。
「……倉畑、長瀬と仲良いのか?」
「うんっ。多分クラスで一番お話ししてると思うよ。ほとんど愛莉ちゃんの方からだけど」
知らなかった。まぁクラスにほとんど顔を出さない俺が、その辺りの事情など知る筈もないが。
しかし意外な共通点だ。倉畑と長瀬…………会話、成立しているのだろうか。それともあれか? 餌付けする側とされる側の関係なのか?
「愛莉ちゃん、他の子とはあんまりだけど、わたしにはいろいろ話してくれるの。わたしもあんまり友達、多くないし」
「ほーん…………シンパシー感じたんかな」
「あっ。それちょっと失礼かもっ」
「いや、別に倉畑がぼっちとかそういう意味じゃ」
「あーっ。言っちゃったね廣瀬くん、そういうところばっか正直なんだから」
少し拗ねたような態度を取るが、すぐに機嫌を直し微笑む倉畑。一見あざとさ全開だが、そう思わせない辺り根の良さが分かるというか。
なるほど、少し分かったかもしれない。コミュ障の長瀬と、スルースキルの高い倉畑。これは良いコンビだ。
「あのね、廣瀬くん。愛莉ちゃん、普段はちょっとクールな感じだけど、本当はとっても寂しがり屋なんだよ。だから、あんまり酷いこと言っちゃダメだからね?」
「あーー……うん、分かった。善処する」
彼女はどこまで倉畑にあの本性を見せているのだろう。寂しがり屋って、ホントかよ。今んところウチのリビングに土足で上がってブレイクダンス躍ってる勢いだぞ。
(…………そうか)
じゃあ、なんの問題も無いんじゃないか。俺とも長瀬とも、ある程度の交友があって、うん。適任だな。よし。
「なぁ、倉畑」
「ん、なにっ?」
「部活やろ」
「――――へっ?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる
グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。
彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。
だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。
容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。
「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」
そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。
これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、
高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜
咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。
そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。
「アランくん。今日も来てくれたのね」
そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。
そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。
「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」
と相談すれば、
「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。
そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。
興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。
ようやく俺は気づいたんだ。
リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる