売れないミュージシャンなんだけど、追っかけのロリが「昔の曲の方が好きだった」とか言ってプロデューサー気取ってくる

平山安芸

文字の大きさ
4 / 30
1-1 爆誕☆ロリっ子JCプロデューサー

4. 広いせまい部屋で名前を呼び合ったりしている

しおりを挟む

「わっ、煙草クサい……いえ、しかし、流石はミュージシャンの暮らしている部屋。この退廃的な雰囲気、良い……逆に良い、転じて尊い……ッ!」

 恐ろしいことが起きてしまった。

 キャリーケース片手に六畳一間のワンルームへ立ち尽くし、何の変哲もない若者の居住区をキラキラと輝いた瞳でシバキ倒すロリ学生。

 昨日のうちにゴミを出しておいてよかった。辛うじて人を招き入れる環境は整っている。とはいえロリに敷居を跨がせる準備は出来ていない。普通に。


「どうやって見つけたんだよ……」
「ユーマさん、分かりやすいのです。ライブもプライベートも全部、八宮駅周辺じゃないですか。ツブヤイターの写真だけで一日の行動はおおよそ推測できます」
「家の写真なんて上げたっけ……?」
「……これです」

 お決まり黒パーカーの袖口から手も出さずスマホの画面を突き出す。これは……三年前か。ここに引っ越してきて最初の「新居なう」という呟きだ。写真付きの。


「間取りで特定しました」
「やっべーこの子マジやっべー……」

 得意げに鼻を鳴らす。

 いや、すばるん。ドヤ顔のところ申し訳ないけど、自宅特定して帰って来るの待ってるって、普通にストーキングと何ら変わりないから。女子学生だからって許されないから。怖すぎるから。昨今無視できない社会問題だから。


「むむっ……これはまさか、伝説のバンド『サドンデス』で活動していた際に使用していたグレッチのギター……っ! お宝っ、お宝なのですっ!」
「ああっ! ちょ、触んなって!」

 興奮気味に壁へ立て掛けられていたエレキギターを撫で回す。なにが伝説のバンドだ。一回もライブ出ずに三か月で解散しとるわ。黒歴史ぶり返すな。


「す、すみません。サドンデスに限らずバンドに所属されていた頃は必ずこのギターでしたね。にわか発言、ご容赦ください」
「謝るポイントそこじゃなくない?」

 一旦整理しなければ。自宅公開ツアーなんてファンサービスを催した記憶は無い。場末のアイドルだってやらねえよ。生活切り売りし過ぎか。

 いくら俺の熱狂的な追っかけだからと言って、自宅を特定して家凸は流石にやり過ぎだ……一昨日に続いて警察案件だぞ。逮捕されるの俺だし。絶対に。


「楽しんでるところ悪いんだけどさ……」
「なるほどっ、普段このパソコンを使って楽曲作りを……むむっ!? これはまさか製作途中の……!」
「だから勝手に触るなって!?」
「のおおおおぉぉォォーーっっ!!」

 パソコンにロックを掛けていなかったせいで、途中までメモ帳に書き記していた歌詞をバッチリ見られてしまう。これは不味いと無理やりすばるんを引っ張り上げベッドの上に放り投げる。

 見た目通りの軽さだ。マジですばるん、年齢いくつなんだろう。身長だけなら小学生でも通用する幼さだよな……それにしてはちょっとマセ過ぎか?


「頼むから帰れって! ファンを家に上げるのも言語道断だけど、よりによってロリは不味いからッ! 既に底を突いている社会的信頼が地中へ抉れるんだよッ!」
「……ろ、ロリ……っ?」

 胸元でプルプル震えるすばるん。
 間違ってないだろ。ロリ以外のなんだよ。


「……ろっ、ロリなどではありません! 私は……今宮イマミヤスバルは立派な中学二年生、大人のレディーなのですっ!」
「……ロリじゃん!」
「アダルトです、ヤングアダルトなのです! 転じてペドでもないのです!」

 腕を離れベッドから飛び降りると、懐から小さな冊子を取り出し突き付けて来る……生徒手帳か。既に表紙がボロボロだ。こういうの丁寧に扱えよ怒られるぞ。


 今宮スバル、永池《ながいけ》第二中学校。生年月日から逆算すると……間違いない、中学二年生だ。いやもう、否定しようの無いロリじゃん。転じずともペドだよ。

 まさかすばるんがこんなに幼い中学生で、しかもこれほどアバンギャルドな子だったとは……SNSのリプライとか投稿サイトのコメントあんなに礼儀正しいのに……。


「大人しく帰るわけにはいかないのです……今日からは私は、ユーマさんのプロデューサーなのですから。一番近いところでユーマさんを支え見守る義務があるのです。憲法に書いてあります。ジョンレノンも世界平和と共にそう訴えました」
「もうなに言ってるか全然分かんねえよ……」

 どうやら一昨日の「プロデューサーになる」という発言を本気にしているらしい。まさかコイツ、今日一日ずっと居座るつもりなのか。

 勘弁してほしい。ただでさえライブもバイトも無くて曲作りにうってつけの快適な一日だというのに。ロリのお守りをしている場合ではないのだ。暇は暇でも潰し方ってモンがあるだろ。


「気持ちは有り難いんだけどよ……もっとこう、アーティストとファンの超えざる一線というか、そういうのを考えて行動した方が……」
「それはつまり、私がこのような行動を取ることで他のファンの皆様にご心配、迷惑を掛けてしまうと?」
「まぁ、うん」
「……私以外にファンがいると?」
「それだけは言っちゃいけねえ……ッ!」

 うん。まぁそうなんだよね。
 固定のファン、すばるんしか居ないんだわ。
 これが現実だ。泣きそう。泣いてる。既に。


「はぁぁぁぁーー…………分かった、分かったよ……まぁ過剰なファンサービスってことで今日は大目に見てやるから。なるべく早めに帰れよ」
「ユーマさん。朝ご飯は食べましたか?」
「話聞け?」
「私もまだなのです。ご飯やパン、コーンフレークの類を用意していただけると、二人分の空腹を満たすことが出来て非常に効率的かと思うのですが」
「喧嘩売ってんのお前?」

 噛み合わない。すべてが。

 いい加減に叩き出そうかと腹を括ったのも束の間、強めに括り過ぎて虫が鳴り出してしまった。クソ、タイミングが悪い。


「……コーンフレークで良いか?」
「大好物です……!」
「んなもんばっか食ってるからそんな貧相なロリボディーになっちまうんだよ」
「ちょっ……レディーに対して失礼なのです! ミュージシャンである前に人として改めるべきなのです! ちょっとユーマさん! 聞いているのですか!」

 ベッドの上でギャーギャー暴れ回っているが、なるべくシーツを乱さないよう気を遣いながらグズっている。余計な配慮だ。そこじゃない躊躇うべきは。

 備え付けの小さな冷蔵庫から牛乳を取り出しササッと作り上げる。かく言う俺もあまり強いことは言えない。自炊とか最後にしたのいつだっけな……。


(プロデューサー、ねぇ……)

 ナオヤ曰く「自分より自分のことを理解しているファンに頼るのもアリ」とのことだったが……当然のことながら気乗りはしないわけで。

 ファンはファン。追っかけは追っかけだ。
 そこには越え難い壁が存在する。

 あくまでも純粋なファンとして見守って欲しいのであって……内側からヤイヤイ口出しされるのは正直気分が悪い。


「はいよ。スプーン」
「ありがとうございます…………あの、すみません、傍若の限りを尽くしている自覚はあります。分かっていて尚言いますが、優しいんですね。ユーマさん」
「じゃあ帰れって……あと優しいんじゃなくて、諦めが付いただけだから。勘違いすんなよ」
「そういうわけにもいかないのです……ゴールデンウィークの間は友達の家に泊まると言ってしまいました。私は帰る場所が無いのです」
「……はっ?」

 慌ててスマホを取り出しカレンダーを確認。
 今日は……5月3日!? 

 ゴールデンウィーク初日じゃねえか、すっかり忘れていた……え? 待って? 確か今年って7連休とかだったよな!?


「そのキャリーケース、まさか……っ」
「いっひゅうかんぶんのきがえれふ……ひばらくおへわになりまふね……」

 食べながら喋るな。ちゃん言え。
 正しい内容は把握したくもないけど。


「むぐっ……今宮スバル、今日から一週間、ユーマさんのプロデューサー兼カキタレです。そのまま契約延長していただけると非常に有難く。美味しいですねこれ」
「こないだ言いそびれたけどカキタレの意味分かってる?」
「パートナーとほぼ同意義と聞きました」
「違う違う違う」

 というわけで。
 ロリJCと同居することになった。

 駄目だ、現実が追い付かない。一旦寝たい。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...