貴方に2本の薔薇をあげる

ナナ

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莉紗の話

呼び捨て

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 あれから私はテスト期間に入り、約2週間ほどバイトに行けない日が続いた。

「莉紗ー今回のテスト期間は休み取った?」

HR中、担任がみんなの前で聞いてくる。

「ちゃんと2週間取りましたー」

「お、じゃあ期待できるね」

前回はテスト期間なのにも関わらず、いつも通り週4でバイトを入れてしまったから思った様な点が取れず、次のテストではしっかり勉強をする為に休みを取ろうと考えていたのだ。





そしてついにテストが全て終わり、
今日からアルバイトを再開する。

たった2週間だけなのに、パン屋さんのグループLINEではいくつかの新商品が出たという話がまわっていた。



また増えるんだ。と思うと少しめんどくさくなった。




学校とパン屋さんはかなり離れていて、
(家とパン屋さんは近い)
学校帰りにバイトとなると大体18~21時の3時間程度になってしまう。



「今日のシフトは、、、」



今日は誰がいるんだろう。そう思ってスマホでシフトを確認する。


「あ、」



今日は18時から水野さんと2人なのか。




がんばろう。少し気合いを入れてパン屋さんにむかった。














「おはようございます~」


着替えと手洗いを済ませて、製造や事務所にいる人達に挨拶をして表にまわる。





「おはようございます」


水野さんにも挨拶をするとしっかり返してくれた。

やっぱいつ見ても身長高いな、、




「今日松本さんレジですか?」




「はい!品出しはあまり向いてないので笑」





そう言うと水野さんがほんの少し、笑った気がした。











レジに移動してパネルを確認すると、
いくつかの見たことない名前が登録されていた。

新商品かな??


パンの見た目と名前を一致させるため、お客さんがいないのをいい事にパンを見て歩いた。




「アップルカスタード、、」


独り言を呟いたつもりだったのに、

「美味そうっすよね」

いつの間にか隣で同じようにパンを見ていた水野さん。


「びっくりした」


「すいません」



2週間という期間で少し慣れてきたのか、

前より喋るようになっているのかもしれない。



「慣れてきました?」




「はい、ここ楽しいですね」



ここでのバイトを楽しんでくれてるみたいで、


なぜか私が嬉しくなった。








お客さんがいないうちにパンの名前と特徴を覚えるために、私は水野さんにパンの説明をしていった。


水野さんはテキパキしていて覚えが早くて、

教えているこちらにもストレスが全くかからなかった。






閉店間近でたまに来るお客さんを接客して、


いつもこの位のお客さんの数だといいのにな。

と思った。






すると店内のBGMが閉店を告げるものにかわる。


急いで扉の鍵をしめて、カーテンをおろす。


ちらっと水野さんを確認するともうレジに残ったパンを打ち込んでいて、感心した。


「打ち終わりました!」


「じゃあ好きなパン取っちゃおー!」

 
ビニール袋を用意して、持って帰りたいパンを1つずつ入れていく。



「松本さん的にはどのパンが美味しいですか?」



「んーっと、このピザのやつ美味しいです!」




「じゃあ持って帰ります笑」



「あと私の方が年下なので、敬語とさん付け辞めてくださいよ、なんか変な感じです」




基本的にここではみんな私の事を莉紗、とか
りー、と呼ぶから、名字で呼ばれたり敬語を使われると違和感がある。






「あ、じゃあ松本、、はおかしいか、
莉紗ちゃん??」

「ちゃん付けかぁ」


「あ、じゃあ莉紗、、で」



イマイチだったのを察したのか、
すぐに言い直す水野さん。



「だったら俺も名字呼び辞めてみてよ」



「瞬さん?」



「そうそう」


お互いの呼び名を変えただけなのに、


ほんの少し距離が縮まった様な感じがした。












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