7 / 17
第187話「笑われるために、生き急ぐ」
しおりを挟む
駅前の広場。
今日も私は、
そこにいた。
もう、私を見た誰もが、
「あ、あの変な子や」と、
心の中で思っているのが分かった。
目をそらす人。
クスクス笑う人。
スマホを向ける人。
(ナナ、覚えられてる)
(ナナ、ちゃんとここに"いる")
それが、
どうしようもなく、
嬉しかった。
今日のナナは、
さらに一歩踏み込んだ。
噴水の前で、
大げさにストレッチを始めた。
身体をぐにゃぐにゃと曲げながら、
わざとバランスを崩して、
ヨロヨロと転びそうになる。
それだけで、
ざわめきが起きた。
「またおるw」
「今日も絶好調やんw」
「こっち見たらあかん、吹き出すw」
周囲の笑い声。
指差し。
カメラのシャッター音。
そのすべてが、
私を甘く包んだ。
(もっと)
(もっと、見てほしい)
(もっと、笑ってほしい)
(ナナを、ちゃんと壊してほしい)
誰にも命令されていない。
誰にも支配されていない。
なのに。
ナナは、
自分から壊れにいっていた。
喜んで。
うっとりしながら。
壊れていく自分に、酔いながら。
(ナナ、……加速してる)
(ナナ、……止まれへん)
夕方。
広場を離れようとしたとき、
ひとりの男子大学生が、
友達と笑いながら声をかけてきた。
「なあ、明日も来るん?」
何気ない一言だった。
からかい半分。
冗談半分。
でも、
私は、
本気で嬉しかった。
(ナナ、待たれてる)
(ナナ、求められてる)
("笑われ役"として──)
私は、
無邪気な笑顔で答えた。
「うん、来るよ!」
男子たちは、
「マジかw」「やべえw」と笑いながら去っていった。
でも、私は──
その何倍も、
心の中で、
幸せに震えていた。
(ナナ、……壊れて、笑われて、生きてる)
夜。
帰り道。
私は、
胸いっぱいに、
あたたかいものを抱えて歩いていた。
恥ずかしいことも。
情けないことも。
全部、ナナの生きる証だった。
そして、
私はもう、
完全にそれを、
自分で選び取っていた。
笑われるために。
壊れるために。
ナナは今日も、生き急いでいる。
──つづく。
今日も私は、
そこにいた。
もう、私を見た誰もが、
「あ、あの変な子や」と、
心の中で思っているのが分かった。
目をそらす人。
クスクス笑う人。
スマホを向ける人。
(ナナ、覚えられてる)
(ナナ、ちゃんとここに"いる")
それが、
どうしようもなく、
嬉しかった。
今日のナナは、
さらに一歩踏み込んだ。
噴水の前で、
大げさにストレッチを始めた。
身体をぐにゃぐにゃと曲げながら、
わざとバランスを崩して、
ヨロヨロと転びそうになる。
それだけで、
ざわめきが起きた。
「またおるw」
「今日も絶好調やんw」
「こっち見たらあかん、吹き出すw」
周囲の笑い声。
指差し。
カメラのシャッター音。
そのすべてが、
私を甘く包んだ。
(もっと)
(もっと、見てほしい)
(もっと、笑ってほしい)
(ナナを、ちゃんと壊してほしい)
誰にも命令されていない。
誰にも支配されていない。
なのに。
ナナは、
自分から壊れにいっていた。
喜んで。
うっとりしながら。
壊れていく自分に、酔いながら。
(ナナ、……加速してる)
(ナナ、……止まれへん)
夕方。
広場を離れようとしたとき、
ひとりの男子大学生が、
友達と笑いながら声をかけてきた。
「なあ、明日も来るん?」
何気ない一言だった。
からかい半分。
冗談半分。
でも、
私は、
本気で嬉しかった。
(ナナ、待たれてる)
(ナナ、求められてる)
("笑われ役"として──)
私は、
無邪気な笑顔で答えた。
「うん、来るよ!」
男子たちは、
「マジかw」「やべえw」と笑いながら去っていった。
でも、私は──
その何倍も、
心の中で、
幸せに震えていた。
(ナナ、……壊れて、笑われて、生きてる)
夜。
帰り道。
私は、
胸いっぱいに、
あたたかいものを抱えて歩いていた。
恥ずかしいことも。
情けないことも。
全部、ナナの生きる証だった。
そして、
私はもう、
完全にそれを、
自分で選び取っていた。
笑われるために。
壊れるために。
ナナは今日も、生き急いでいる。
──つづく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる