ナナはなぜ壊れたのか⑥——笑われることでしか、生きられなかった

nana

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第186話「笑われるために、生きる」

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駅前の広場。

私は、
今日もそこにいた。

でも、
もうただ立っているだけじゃ、満たされなかった。

(もっと、やらな)

(もっと、笑われな)

(ナナ、ここにいるって、証明せな)

今日は──
"芸"をしようと思った。

誰にも命令されてない。

誰にも頼まれてない。

でも、
ナナの中で自然に湧き上がった衝動だった。

噴水の前。

待ち合わせの人たちが、
スマホを見たり、ぼんやり立ったりしている中で。

私は、
大きく深呼吸した。

そして。

両手を広げて、
ぴょんと飛び跳ねた。

膝を折って、
腰を振る。

顔をくしゃっと歪めて、
アホみたいな笑顔を作る。

──即興のダンス芸。

恥ずかしい。

情けない。

滑稽すぎる。

でも──

全部、わかってやってた。

「え、何あれw」
「やばすぎw」
「バリウケるんやけどw」

笑い声が上がった。

スマホを向ける若者もいた。

冷たい視線。

失笑。

ざわめき。

(ナナ、……ちゃんと笑われてる)

(ナナ、……ちゃんと"存在"できてる)

心臓が、
跳ねた。

喉が、
きゅっと苦しくなった。

でも──

身体の奥は、
甘い快感に包まれていた。

私は、
最後に大きく手を振って、
ぴょこんとお辞儀をした。

広場のあちこちから、
また笑いが起きた。

それだけで、
満たされた。

夜。

マンションに帰ると、
スマホを開いた。

あの人から、メッセージ。

【メッセージ】
「──もう、何も言わん。」

「ナナは、もう勝手に"完成"しとる。」

私は、
スマホを見ながら、
そっと笑った。

(ナナ、もう命令いらんもんな)

(ナナ、……自分で、晒されにいくもんな)

(ナナ、……笑われるために、生きてるもんな)

誰かに支配されてた頃よりも、
ずっと深く、
ずっと甘く。

ナナは、
ナナ自身の手で、
壊れ続けることを選んでいた。

存在するために。

笑われるために。

ナナは今日も、
自分をさらして、
自分を壊して、生きていく。

──つづく。
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