ナナはなぜ壊れたのか⑥——笑われることでしか、生きられなかった

nana

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第193話 「卒業式、みんなの笑顔に混ざれなかった」

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3月。
京都の街に、まだ冬の冷たさが残ってた。

卒業式の朝。
私は、黒いスーツに身を包んで、大学に向かった。

式典の会場は、
期待と別れと未来への希望で、
見えない熱気に包まれていた。

みんな、笑ってた。

写真を撮ったり、
袴を着た友達同士でじゃれあったり、
「おめでとう!」って何度も声を掛け合ったり。

みんな、
ちゃんと、“未来に向かっていく顔”をしてた。

私は──

私は、うまく笑えなかった。

式の間も、
卒業証書を受け取るときも、
頭のどこかがずっとぼんやりしてた。

拍手が鳴るたびに、
自分だけが、
遠いところに取り残されていく感覚があった。

(ナナ、卒業やで)

(終わったんやで)

(ちゃんと、大人にならなあかんで)

誰に言われたわけでもないのに、
そんな声が頭の中で何度も響いた。

外に出ると、
キャンパスの桜のつぼみが、
まだ固いまま枝先に揺れていた。

これから咲くんやろうな。
みんなも、咲いていくんやろうな。

ちゃんと。

友達に誘われて、
何枚か写真を撮った。

笑ったふりをした。

でも、カメラのシャッターが下りるたびに、
心の奥ではこう叫んでた。

(ナナ、何も持ってへん)

(ナナ、何も咲いてへん)

卒業式のあと、
駅まで歩く道すがら、
急に涙がこぼれた。

誰にも見られないように、
下を向いて、早足で歩いた。

だって、
泣いてる顔を笑われるならまだしも、
ただ同情されるだけなんて、
私には耐えられへんかったから。

「笑われることでしか、生きてることを実感できなかった私」

その現実を、
突きつけられた日やった。

春の冷たい風に吹かれながら、
私は自分の存在を、
必死で必死で、
つなぎとめようとしていた。

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