ナナはなぜ壊れたのか③——少女が、少女を脱ぎ捨てるまで

nana

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第89話「ステージで、私は生まれ変わった」

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文化祭。

ダンス部の音楽劇は、
毎年、生徒たち自身が台本を書き、演出を考える。

今年のテーマは、
「青春を取り戻せ!」

ふざけたノリで生まれたアイディア──
「ギャルに変身して、みんなで踊ろう!」

誰かがそう言ったとき、
クラスに笑いが起きた。

けれど、
その提案は、
自然と本気になった。

ギャルたちが、
上着を脱ぎ捨て、水着で踊る。

それが、
劇のクライマックスになることが決まった。

もちろん、
先生からは厳しい条件が出た。

「水着はワンピース型のみ。絶対にだぞ。」

私たちは、
口々に「わかりました!」と答えた。

──でも。

私は、
誰にも言わずに、
白い三角ビキニを仕込んでいた。

布面積が小さく、
細い紐だけで支えられた、
ほとんど隠れていないビキニ。

なぜそんなことをしたのか、
自分でもうまく言葉にできなかった。

ただ、
心の奥で叫ぶ声があった。

──見られたい。

──もっと、見られたい。

文化祭当日。

控え室の鏡に映った自分。

制服風の衣装の下に、
小さな布だけをまとったカラダ。

胸が震えた。

怖さより、
期待で身体が熱かった。

ステージが始まる。

最初は、
普通の劇だった。

友情。
失恋。
涙。

そして。

クライマックス。

「ギャルに変身だー!」

叫び声とともに、
私たちは衣装を脱ぎ捨てた。

その瞬間──

客席がざわめいた。

「やば!」「えっ、ナナちゃん……!」「マジかよ!」

周囲の子たちは、
ちゃんとワンピース型水着を着ていた。

でも、
私だけは──

白い、
小さな、
三角ビキニ。

露出した肌に、
無数の視線が一斉に突き刺さった。

会場がざわつく。

先生が舞台袖で青ざめているのが、
視界の端に映った。

でも、
私は一歩も引かなかった。

踊った。

誰よりも、
大胆に、
誰よりも、
堂々と。

ターンすれば、
ビキニが揺れ、
太ももが跳ねた。

ジャンプすれば、
胸が弾んだ。

汗に濡れた肌が、
ライトに光った。

歓声と、
どよめきと、
熱狂が、
私を包んでいた。

──これが、
 生きているってことや。

恥ずかしさも、
怖さも、
全部、快感に変わっていった。

誰も止められなかった。

私自身ですら。

ラストポーズ。

腕を広げ、
満面の笑顔で締めた。

嵐のような拍手。

客席の熱気。

私は、
そのすべてを、
カラダに浴びながら、
静かに思った。

──私はもう、戻れない。

普通のナナには、
もう二度と。

誰にも言えない欲望。

誰にも知られたくない快感。

それを、
私はこのステージで、
はっきりと自覚した。

この瞬間から。

ナナは──
「曝け出される少女」として、
新しい人生を歩み始めた。

第3章・完
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