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【第4話】 「先輩の“全部”、知ってるつもりなんやけど」
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「部屋、見たいなあ」
そう言い出したのは、仕事終わりの駅のホームだった。
帰り道、缶コーヒー片手に立ち話していたとき、
まるで何気ない一言のように。
「いや、ほんまにただ見たいだけ。
ナナ先輩って、部屋どういう感じなんかなって」
それが“命令”なのは、わかっていた。
だから私も、逆らえなかった。
「…散らかってるけど、ええよ」
玄関を開けると、彼女は一歩入っただけで、
空気を嗅ぐように目を細めた。
「うわ、ナナの匂いする」
「え、何それ、やめてよ~」
「やめへん」
言葉のじゃれ合いに見せかけた、それもまた、
“距離の侵食”だった。
リビング、キッチン、洗面所、
まるで内見みたいに一通り見てまわったあと、
彼女はベッドに腰を下ろして言った。
「…引き出し、開けてもいい?」
その瞬間、私は息を呑んだ。
言葉にすると軽いけど、
“女が女の引き出しを開ける”って、
ときに、脱ぐより、よっぽど裸だ。
彼女は迷わず、一番奥の引き出しを開けた。
メイクポーチ、くしゃくしゃのレシート、
仕事でもらったまま使ってない名刺入れ。
そして──奥にしまってた、小さな箱。
彼女はそれを指先で引き寄せて、開ける。
中には、古いアクセサリー。
昔の彼氏にもらった指輪。
失くした片方だけのピアス。
「ふーん、こういうの取っておくタイプなんや」
「…うん。忘れんために」
「ふーん」
彼女は何度もそう言って、
中身を一つひとつ、指先で転がした。
その指が、まるで
“過去のナナ”をひとつずつ舐めていくみたいで、
私は、なにも言えなかった。
「先輩ってさ、
“バレてないつもりで隠してる”とこ、あるやん」
「え?」
「そういうとこ、ぜんぶかわいいなって思ってた」
「でも今日、確信した。
ナナって、見られるのが怖いんやなくて、
“女に見られる”のが、いちばん効くんやろ?」
その言葉に、私の背筋がぞわっとした。
図星すぎて、笑うしかなかった。
女同士。
同性。
だからわかる“視線の痛点”がある。
男に脱がされるより、
女に“心を覗かれる”ほうが、ずっとこたえる。
私はそれを知っていたのに、
それでも部屋に招いたのは──
やっぱり、自分の中のどこかが、
彼女に“壊してほしかった”からだと思う。
その日、私たちはなにもしていない。
ただ、缶ビールを飲みながら、他愛ない話をした。
彼女は私のベッドに寝転んで、
「柔らかいなー、これがナナかぁ」と笑った。
でも私は──
自分の“柔らかさ”が、
すでに彼女に、好きなようにかたちを変えられていく感覚に、
息もできなかった。
翌朝、机の上にメモが置かれていた。
「次、下着の引き出しも見せてね♡」
その文字に、私の全身が、ざわざわと泡立った。
そう言い出したのは、仕事終わりの駅のホームだった。
帰り道、缶コーヒー片手に立ち話していたとき、
まるで何気ない一言のように。
「いや、ほんまにただ見たいだけ。
ナナ先輩って、部屋どういう感じなんかなって」
それが“命令”なのは、わかっていた。
だから私も、逆らえなかった。
「…散らかってるけど、ええよ」
玄関を開けると、彼女は一歩入っただけで、
空気を嗅ぐように目を細めた。
「うわ、ナナの匂いする」
「え、何それ、やめてよ~」
「やめへん」
言葉のじゃれ合いに見せかけた、それもまた、
“距離の侵食”だった。
リビング、キッチン、洗面所、
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彼女はベッドに腰を下ろして言った。
「…引き出し、開けてもいい?」
その瞬間、私は息を呑んだ。
言葉にすると軽いけど、
“女が女の引き出しを開ける”って、
ときに、脱ぐより、よっぽど裸だ。
彼女は迷わず、一番奥の引き出しを開けた。
メイクポーチ、くしゃくしゃのレシート、
仕事でもらったまま使ってない名刺入れ。
そして──奥にしまってた、小さな箱。
彼女はそれを指先で引き寄せて、開ける。
中には、古いアクセサリー。
昔の彼氏にもらった指輪。
失くした片方だけのピアス。
「ふーん、こういうの取っておくタイプなんや」
「…うん。忘れんために」
「ふーん」
彼女は何度もそう言って、
中身を一つひとつ、指先で転がした。
その指が、まるで
“過去のナナ”をひとつずつ舐めていくみたいで、
私は、なにも言えなかった。
「先輩ってさ、
“バレてないつもりで隠してる”とこ、あるやん」
「え?」
「そういうとこ、ぜんぶかわいいなって思ってた」
「でも今日、確信した。
ナナって、見られるのが怖いんやなくて、
“女に見られる”のが、いちばん効くんやろ?」
その言葉に、私の背筋がぞわっとした。
図星すぎて、笑うしかなかった。
女同士。
同性。
だからわかる“視線の痛点”がある。
男に脱がされるより、
女に“心を覗かれる”ほうが、ずっとこたえる。
私はそれを知っていたのに、
それでも部屋に招いたのは──
やっぱり、自分の中のどこかが、
彼女に“壊してほしかった”からだと思う。
その日、私たちはなにもしていない。
ただ、缶ビールを飲みながら、他愛ない話をした。
彼女は私のベッドに寝転んで、
「柔らかいなー、これがナナかぁ」と笑った。
でも私は──
自分の“柔らかさ”が、
すでに彼女に、好きなようにかたちを変えられていく感覚に、
息もできなかった。
翌朝、机の上にメモが置かれていた。
「次、下着の引き出しも見せてね♡」
その文字に、私の全身が、ざわざわと泡立った。
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