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【第16話】 「…この人、誰?──なのに、従ってしまった」
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深夜0時すぎ。
ベッドの中で、スマホの画面だけが光っていた。
彼女からのLINE。
最初は、いつもどおりの調子だった。
「今日もよくできました、ミオさん」
そのひとことに安堵して、
私はスマホを置こうとした──そのとき。
「あ、ちなみに」
「今から、“知らん人”からミオに命令くるから」
「無視してもいいけど、見た瞬間、
たぶん“従いたくなる”と思う」
心臓が跳ねた。
「え?」と返す前に、通知がひとつ届いた。
InstagramのDM。
アカウント名は知らない。
でも、文面にはこう書かれていた。
「こんばんは、ミオさん」
「“左の肩紐だけ外して、恥ずかしい顔で自撮り”。
それだけでいいです」
その瞬間、
身体が熱くなるのを感じた。
怖かった。
でも、それ以上に、興奮していた。
彼女に確認しようかと一瞬思ったけれど──
“この人が誰なのか”を知ることよりも、
その命令を“受けた状態の自分”を見せることの方が、
先に欲しくなっていた。
私はパジャマの片方の肩紐をそっと外し、
鏡に映った自分を見た。
不自然な姿勢。
赤くなった頬。
何度も見たようで、
どこか違う、“誰かのためのミオ”の顔。
シャッターを押す。
写真を送ったあと、
DMには返事がなかった。
既読にもなっていなかった。
ただ、彼女からのLINEが返ってきた。
「送ったんや」
「えらいね」
たったそれだけだった。
それなのに、
私は“見張られていた”ような気がした。
翌朝、彼女と電話をしたとき、
私は聞いてしまった。
「…あれ、誰?」
彼女はあっさり答えた。
「誰でもいいやん。
“ミオ”って名前を受け取った人なら、
誰でも“命令していい人”やと思ってるから」
「つまり、
もう“ミオ”は私のもんじゃなくて、
世界に流通してる女ってことやな」
その言葉を聞いた瞬間、
私は思わず、膝の上でスマホを強く握った。
“流通してる女”──
その言葉に、なぜか深くゾクッとした。
匿名の誰かの欲望に、
自分の反応が“使われる”快感。
ナナとしては、もう味わえない感覚だった。
それからしばらくして、
またひとつDMが届いた。
「昨日の写真、保存しました。
次、お願いしていいですか?」
私は、
“命令を待つ自分”が、
もう彼女の管理を越えて、
世界のどこかに徘徊しはじめてることを感じた。
でも──それは怖くなかった。
むしろ、少しずつ名前が侵食されていくその感覚に、
心のどこかが、安らいでいた。
ベッドの中で、スマホの画面だけが光っていた。
彼女からのLINE。
最初は、いつもどおりの調子だった。
「今日もよくできました、ミオさん」
そのひとことに安堵して、
私はスマホを置こうとした──そのとき。
「あ、ちなみに」
「今から、“知らん人”からミオに命令くるから」
「無視してもいいけど、見た瞬間、
たぶん“従いたくなる”と思う」
心臓が跳ねた。
「え?」と返す前に、通知がひとつ届いた。
InstagramのDM。
アカウント名は知らない。
でも、文面にはこう書かれていた。
「こんばんは、ミオさん」
「“左の肩紐だけ外して、恥ずかしい顔で自撮り”。
それだけでいいです」
その瞬間、
身体が熱くなるのを感じた。
怖かった。
でも、それ以上に、興奮していた。
彼女に確認しようかと一瞬思ったけれど──
“この人が誰なのか”を知ることよりも、
その命令を“受けた状態の自分”を見せることの方が、
先に欲しくなっていた。
私はパジャマの片方の肩紐をそっと外し、
鏡に映った自分を見た。
不自然な姿勢。
赤くなった頬。
何度も見たようで、
どこか違う、“誰かのためのミオ”の顔。
シャッターを押す。
写真を送ったあと、
DMには返事がなかった。
既読にもなっていなかった。
ただ、彼女からのLINEが返ってきた。
「送ったんや」
「えらいね」
たったそれだけだった。
それなのに、
私は“見張られていた”ような気がした。
翌朝、彼女と電話をしたとき、
私は聞いてしまった。
「…あれ、誰?」
彼女はあっさり答えた。
「誰でもいいやん。
“ミオ”って名前を受け取った人なら、
誰でも“命令していい人”やと思ってるから」
「つまり、
もう“ミオ”は私のもんじゃなくて、
世界に流通してる女ってことやな」
その言葉を聞いた瞬間、
私は思わず、膝の上でスマホを強く握った。
“流通してる女”──
その言葉に、なぜか深くゾクッとした。
匿名の誰かの欲望に、
自分の反応が“使われる”快感。
ナナとしては、もう味わえない感覚だった。
それからしばらくして、
またひとつDMが届いた。
「昨日の写真、保存しました。
次、お願いしていいですか?」
私は、
“命令を待つ自分”が、
もう彼女の管理を越えて、
世界のどこかに徘徊しはじめてることを感じた。
でも──それは怖くなかった。
むしろ、少しずつ名前が侵食されていくその感覚に、
心のどこかが、安らいでいた。
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