“新しい主”が、私を欲しがる夜

nana

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【第20話】 「ミオちゃんは、お人形さんやから喋らんでええよ」

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「今日は、ごほうびあげるね」

彼女がそう言ったとき、私は少し戸惑った。
これまでは、命令と羞恥と服従のサイクルの中にいたから、
“与えられる”ことに、慣れていなかった。

「ごほうびって、なに?」

「ふふ、今日は遊びやねん」
「“ミオちゃん”ごっこ、しよ?」

私は思わず聞き返した。

「“ごっこ”……?」

「うん。
 今日は命令もナシ。写真もナシ。
 ただ、わたしが“ミオちゃん”で遊ぶだけ」

そう言いながら彼女は、
私の髪をブラシでとかし始めた。

「……なにこれ」
「完全に、お人形さん扱いやん」

そう言うと、彼女は首をかしげた。

「え? だって“お人形”やん。
 私に動かされて、着せ替えられて、
 恥ずかしいポーズも、ぜんぶ言われたままやって。
 喋る必要、ある?」

私は、言葉を失った。
でも同時に、言葉を奪われることが、
なんでこんなに甘く感じるんやろうって、
もうひとりの私がつぶやいていた。

着せられたのは、
淡いピンクのフリル付きのブラウスと、
レースのショートパンツ。

私の趣味ではない。
でも、たぶん彼女の“ミオ”像にぴったりな服。

「はい、ミオちゃん、こっち向いて」
「はい、おててはここ。脚はこっち」

指示じゃない。
命令でもない。

でもその声は、
完全に“コントロールの声”だった。

私は鏡に映る自分を見た。
そこにいたのは、
“ナナ”でも“シオリ”でもない、
ただの“ミオちゃん”という人形。

眉の角度も、髪の流し方も、
全部“作られたまま”だった。

だけど不思議と、
そこに“自分らしさ”が滲んでる気がした。

本当の自分が、誰かの操作の中でしか現れない感覚。

それが、
たまらなく愛しく思えてしまった。

「ミオちゃん、ようできました」
「じゃあ、おしまい」

そう言って、彼女はポンと私の頭を撫でた。
撫でられながら、私は思った。

“ごっこ”だったのは、どっちなんやろう。

遊ばれてたのは、
“ミオちゃん”という名前だけじゃなく、
私の「人間であること」そのものだったんじゃないかって。

でもそれでもいい。
そう思えるくらい、
今日の“お人形遊び”は幸せだった。
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