ナナはなぜ壊れたのか④——晒されることに、私は生きた

nana

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第125話「壊れたまま、卒業する」

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彼氏とは、別れた。

あの日。
クリスマスの夜。

服を着直して、
無理やり「普通」の姿に戻って、
家に帰った。

でも、
外側を整えたところで、
中身はぐちゃぐちゃだった。

帰り道、
彼氏は軽いノリで「悪かったって~」と笑った。

私は、
それに何も返さなかった。

言葉なんか、出なかった。

制服みたいな服を着て、
ただ、車の助手席に座っていた。

バスタオルは、もう巻いていなかった。

でも、心はずっと、
あの日のままだった。

剥き出しで、裸で、
誰にも守られないまま、
晒されている感覚が消えなかった。

(……もう、無理や)

それが、
私の中で彼氏との最後になった。

それからの私は、
「普通の受験生」を演じた。

塾。
模試。
推薦対策。
進路相談。

毎日、
制服を着て、参考書を開いた。

でも、
心はどこにもいなかった。

ただ、
からっぽの身体だけが動いていた。

大学受験。

第一志望は、落ちた。

受験会場で、
自分の番号を探して、
無かった。

それだけだった。

驚きも、
悔しさも、
なかった。

(……やっぱりな)

滑り止め。
行きたくなかった大学。

(それでもいい)

(どうせ、もう壊れてるんやし)

惨めさも、
失敗も、
恥も、
ぜんぶ、
甘く痺れる快感に変わっていた。

(ナナ、……どこまででも堕ちていけるな)

三月。

卒業式。

最後の制服を着て、
教室に座った。

クラスメートたちが笑って、泣いて、
写真を撮り合ってた。

「進学先、どこなんー?」
「また遊ぼなー!」

そんな声に、
私は微笑みながらうなずいた。

普通の顔をして。

でも、
制服の内側では、
壊れた心が静かに疼いてた。

(ナナ、もう普通には戻られへん)

惨めなまま。
壊れたまま。

それでも、
私は胸を張った。

卒業証書を受け取るとき、
ぎゅっと拳を握った。

(ナナ、……卒業おめでとう)

誰にも聞こえない声で、
自分にそう言った。

(第4章 完)
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