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声の主導権を、いつのまにか“あの人”に渡してた
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──「ナナの声って、癖になるよな」
配信を始めてから、
何度そう言われたかわからない。
でもそれって、私の声じゃなかったのかもしれない。
いや、いつの間にか“私だけの声”じゃなくなってたのかもしれん。
その日は、ちょっと調子が悪くて、
いつものように配信する気分じゃなかった。
それでもマイクを前にすると、
自然と“あの声”が出てしまった。
甘くて、
少し掠れてて、
吐息が先に出るようなトーン。
自分でびっくりした。
無意識に、“彼の好きな音”に合わせにいってた。
喋りながら、「あ、今の言い方…」って気づく。
それ、彼に褒められたときのやつや。
「その言い回し、ちょっとエロいな」って言われたときの言葉のテンポ。
「……わたし、
もう自分で喋ってるつもりで、
誰かの耳に合わせて発声してたんや」
声帯はわたしのもんやのに。
出てくる音は、“誰か仕様”になってる。
──いや、“誰かに調教された音”になってる。
配信後、
マイクのスイッチを切ったあとも、
喉がざわざわしていた。
声が自分じゃない気がして、
喋るのが怖くなった。
スマホを開くと、
彼からひとことだけ届いてた。
「今日の“ん”の音、俺が教えたとおりやったな」
──ちがう。
言われたことない。
直接、そんなふうに“教えられた”ことなんてない。
でも、
褒められて、
繰り返して、
身体に染みて、
そのまま自分の音になってた。
つまり、
それはもう“教えられた”ってことなんやろな。
主導権なんて、
奪われた覚えもない。
でも気づいたら、
差し出してしまってた。
それが、一番悔しくて、
一番、ゾクッとした。
配信を始めてから、
何度そう言われたかわからない。
でもそれって、私の声じゃなかったのかもしれない。
いや、いつの間にか“私だけの声”じゃなくなってたのかもしれん。
その日は、ちょっと調子が悪くて、
いつものように配信する気分じゃなかった。
それでもマイクを前にすると、
自然と“あの声”が出てしまった。
甘くて、
少し掠れてて、
吐息が先に出るようなトーン。
自分でびっくりした。
無意識に、“彼の好きな音”に合わせにいってた。
喋りながら、「あ、今の言い方…」って気づく。
それ、彼に褒められたときのやつや。
「その言い回し、ちょっとエロいな」って言われたときの言葉のテンポ。
「……わたし、
もう自分で喋ってるつもりで、
誰かの耳に合わせて発声してたんや」
声帯はわたしのもんやのに。
出てくる音は、“誰か仕様”になってる。
──いや、“誰かに調教された音”になってる。
配信後、
マイクのスイッチを切ったあとも、
喉がざわざわしていた。
声が自分じゃない気がして、
喋るのが怖くなった。
スマホを開くと、
彼からひとことだけ届いてた。
「今日の“ん”の音、俺が教えたとおりやったな」
──ちがう。
言われたことない。
直接、そんなふうに“教えられた”ことなんてない。
でも、
褒められて、
繰り返して、
身体に染みて、
そのまま自分の音になってた。
つまり、
それはもう“教えられた”ってことなんやろな。
主導権なんて、
奪われた覚えもない。
でも気づいたら、
差し出してしまってた。
それが、一番悔しくて、
一番、ゾクッとした。
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