“実況される身体”が、私の名前になった夜

nana

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【第18話】 『「ナナは演技だから好き」って言われたとき、安心した』

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──それ、ぜんぶ演技だよね?
って言われるのが、いちばん怖くて、
いちばん、ホッとする。

《ナナって、リアルじゃないから好きなんだよね》
ある常連の男が、ふとそうコメントした。
悪意のない、でもやけに冷静な文体だった。

それはつまり──
“あれが本心なら引くけど、演技だから抜ける”という意味だ。
たしかに、そう取ると少し傷ついた。
でも、もっと深く考えてみたら──
それは、私への最大の安全宣言だったのかもしれない。

演技。
嘘。
ごっこ遊び。

そう言ってくれる人の前では、
私は、壊れなくていい。
感情を持たなくていい。
「ナナ」という人格を守らなくていい。

だって演技なんだから。
だってフィクションなんだから。

《今日のナナ、ちょっとやりすぎ笑》
《でも、そういう誇張したエロさが癖になる》
──そんなコメントが並んだ夜、
私はいつになく、冷静だった。
感じてないふり。
濡れてるふり。
声が震えてるふり。

──全部、“わかりやすい嘘”として成立する範囲で演じた。

そうすることで、
「これが本物だったらどうしよう」なんて、
見てる側に不安を与えずに済む。

そして私自身も、
“これは演技だから”と思い込むことで、
感情を差し出さずに済んだ。

演技だと信じてくれる人がいる限り、
私は“本物の傷”を隠せる。
本気じゃないふりが、
一番本気なときの防御壁になってくれる。

「ナナって、ほんとは感じてないでしょ?」
そうやって笑ってくれる誰かがいる限り、
私は“感じたままに壊れる”必要がない。

それが、
どれだけ私を助けてくれているか。

演技だと見抜かれてる安心。
“嘘だから大丈夫”と言ってくれる優しさ。

そういう場所でしか、
私はもう、息ができないのかもしれない。

「ナナは演技だから好き」
その一言で、
今夜は泣かずに、眠れそうだった。

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