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プロローグ
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私は桜葉 咲弥、日本の高校二年生―――――だった、最近までは。
「御遣い様、後ろへ!」
江戸時代の武士のような格好をした青年が、片手で下がるように私に合図する。
「御遣い様、僕から離れないで」
グッと腕を引かれ、白いコートの青年に抱き寄せられる。頭までスッポリ被ったフードのせいで顔は見えないが、ふんわりと藤の花の匂いがした。
「大丈夫、オレがすぐに片付けてやるよ」
オレンジ色の髪の美少年が、アイドルのように綺麗なウィンクを決めてから、魔物の群の中に素早く飛び込んでいく。
緑色の動くアメーバーや、大型犬くらいある巨大な昆虫、人間に襲いかかる食人植物・・・地球にはいなかった異形の化物達を、三人は踊りを舞うようにあっさりと、容易く蹴散らしていく。
武士姿の青年は、月ヶ瀬 白夜。年齢は、確か23歳。
鈍色に光る、日本刀に近い武器を用いる。衣装は古風な武士のようだけど、髪は耳上までの長さで後は柔らかく刈り込んであり、ヘアスタイルは今時だ。色も私と同じ黒に見えて、実は宙のような濃い藍色。キリッとした端正な顔立ちは、内面の生真面目さを表すように鋭く凜々しい。
オレンジの髪の少年は、アーランジュ。本人の希望で、アルって呼んでいる。
私より2歳年下の15歳だそうだ。Tシャツに膝丈の黒いレギンスの上から、朱色の生地に金糸で刺繍がなされたサリー?を服のように器用に巻き付けている。
彼の得意な戦法は、円環型の刃を使った体術だ。軽業師のように舞う度に現われる、小麦色に焼けた手足は、筋肉はついていても白夜に比べれば細く、未発達な少年らしさを残している。肩まであるシャギーがかった髪型も相俟って、黙っていれば絶世の美少女で押し通せるかもしれない。中身は、とんだ小悪魔だが。
最後に、フード付きの白いコートを纏った青年の名は、ヴィオラ。21歳と聞いた。
彼だけは、自身では戦わない。代わりに魔物を狩るのは、彼の使役獣である二頭の獅子。金獅子のリオンと白獅子のレオンだ。
武門の生まれなので、最低限の護身術は嗜んでいるが、荒事が得意ではないらしい。アルの見立てでは、自分程ではないがかなりの強者のはず、だそうだ。
かなりの人見知りで、旅に出て一ヶ月近くは経つというのに、まだフードを外してくれない。ちなみに、一度だけ事故のような形で素顔を見た事があるが、緩やかな銀髪の天然ウェーブに、紫水晶のような綺麗な瞳をした、色白の美青年だった。
「御遣い様っ、浄化の言祝ぎを!」
白夜の声に、ハッとした。彼等の戦い方が見事すぎて、うっかり見惚れていた。
魔物は倒しても、時が経てば復活する。完全に浄化出来るのは、異世界から召喚された、神の御遣いである私だけだそうだ。
頭に浮かぶ呪文をそのまま言葉にすると、地面に伏した魔物の死骸が、サラサラと形を崩して消えていく。
いつ見ても、不思議な光景だ。これを【言祝ぎ】というのは、魔物にとっても浄化されるのは目出度い事だからだそうだ。
「お見事です、御遣い様」
「御遣い様、ありがとう」
「さっすが、オレのプリンセス♡」
護ってくれた皆を私も労おうと、笑顔で彼等の元へ走り寄る。
前日に、雨が降って地面が泥濘んでいる事など、まったく考えていなかった。
ズルッ、と濡れた石に足を取られて、見事に後ろ向きにすっ転ぶ。あっという間の出来事で、三人の助けは間に合わず、私は地面にしこたま頭を打って意識を手放した。
「御遣い様、後ろへ!」
江戸時代の武士のような格好をした青年が、片手で下がるように私に合図する。
「御遣い様、僕から離れないで」
グッと腕を引かれ、白いコートの青年に抱き寄せられる。頭までスッポリ被ったフードのせいで顔は見えないが、ふんわりと藤の花の匂いがした。
「大丈夫、オレがすぐに片付けてやるよ」
オレンジ色の髪の美少年が、アイドルのように綺麗なウィンクを決めてから、魔物の群の中に素早く飛び込んでいく。
緑色の動くアメーバーや、大型犬くらいある巨大な昆虫、人間に襲いかかる食人植物・・・地球にはいなかった異形の化物達を、三人は踊りを舞うようにあっさりと、容易く蹴散らしていく。
武士姿の青年は、月ヶ瀬 白夜。年齢は、確か23歳。
鈍色に光る、日本刀に近い武器を用いる。衣装は古風な武士のようだけど、髪は耳上までの長さで後は柔らかく刈り込んであり、ヘアスタイルは今時だ。色も私と同じ黒に見えて、実は宙のような濃い藍色。キリッとした端正な顔立ちは、内面の生真面目さを表すように鋭く凜々しい。
オレンジの髪の少年は、アーランジュ。本人の希望で、アルって呼んでいる。
私より2歳年下の15歳だそうだ。Tシャツに膝丈の黒いレギンスの上から、朱色の生地に金糸で刺繍がなされたサリー?を服のように器用に巻き付けている。
彼の得意な戦法は、円環型の刃を使った体術だ。軽業師のように舞う度に現われる、小麦色に焼けた手足は、筋肉はついていても白夜に比べれば細く、未発達な少年らしさを残している。肩まであるシャギーがかった髪型も相俟って、黙っていれば絶世の美少女で押し通せるかもしれない。中身は、とんだ小悪魔だが。
最後に、フード付きの白いコートを纏った青年の名は、ヴィオラ。21歳と聞いた。
彼だけは、自身では戦わない。代わりに魔物を狩るのは、彼の使役獣である二頭の獅子。金獅子のリオンと白獅子のレオンだ。
武門の生まれなので、最低限の護身術は嗜んでいるが、荒事が得意ではないらしい。アルの見立てでは、自分程ではないがかなりの強者のはず、だそうだ。
かなりの人見知りで、旅に出て一ヶ月近くは経つというのに、まだフードを外してくれない。ちなみに、一度だけ事故のような形で素顔を見た事があるが、緩やかな銀髪の天然ウェーブに、紫水晶のような綺麗な瞳をした、色白の美青年だった。
「御遣い様っ、浄化の言祝ぎを!」
白夜の声に、ハッとした。彼等の戦い方が見事すぎて、うっかり見惚れていた。
魔物は倒しても、時が経てば復活する。完全に浄化出来るのは、異世界から召喚された、神の御遣いである私だけだそうだ。
頭に浮かぶ呪文をそのまま言葉にすると、地面に伏した魔物の死骸が、サラサラと形を崩して消えていく。
いつ見ても、不思議な光景だ。これを【言祝ぎ】というのは、魔物にとっても浄化されるのは目出度い事だからだそうだ。
「お見事です、御遣い様」
「御遣い様、ありがとう」
「さっすが、オレのプリンセス♡」
護ってくれた皆を私も労おうと、笑顔で彼等の元へ走り寄る。
前日に、雨が降って地面が泥濘んでいる事など、まったく考えていなかった。
ズルッ、と濡れた石に足を取られて、見事に後ろ向きにすっ転ぶ。あっという間の出来事で、三人の助けは間に合わず、私は地面にしこたま頭を打って意識を手放した。
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