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それからのクララの日々も今までと変わりないものだったが、王女に呼ばれたりして王宮に行くたびに、自然と彼を探すようになった。
遠くからひと目見るだけでも胸が高鳴り、少しでも長く彼を自分の視界に入れておきたくて今まで以上に王女の代わりに打ち込んだ。
彼は主に王女に付き添っていたが、時たま1人でいる時などはクララに声をかけてくれる事もあった。
そんな日は浮かれてしまっていたが、仕事自体はかなり捗ることとなった、聖魔法は精神状態に左右されるといわれていて術者が安定している程強い効果がでると一般的にいわれているからだろう。
親切で紳士的、そして容姿も整っている彼にクララは淡い恋のような物を抱くようになる。
クララが1番好きなのは彼の瞳だった。
最初に出会った時に見つめられた瞳が忘れられない。
ずっとその目をもう一度見たかったが、あの時のクララは王女として彼と対峙していた為に、残念だがあの目で見てもらえることはもうきっと無い。
あんな身を焦がされる程の熱い視線を向けられたのは産まれて初めてで、自分を見ていた訳でないと分かっていても頭に心が追いつかず、何度も思い出しては頬を染めた。
ただこの恋のような物が決して叶わないことをクララは理解している。
王女と彼の2人が並ぶ姿は、絵画の様に出来上がった美しさで、そこに自分が入り込める訳は無かった。
彼は私を見かけると優しい笑顔で接してくれるとはいえ、それは対外的な社交辞令に過ぎない。
騎士は公爵家の次男、王配としても申し分無しの身分で、護衛騎士として命をかけて王女を守っている。
それは誰かが考えたストーリーだったのか、それともそうなる運命なのか、
宮廷では王女と近衛騎士の恋物語が語られるようになり、市政でも権力を求めた政略的な結婚をする他の王族よりも好意的に受け止められていたように思う。
クララは、王女の代わりに働き続けることで彼を側で見続けることが出来るし、教会のみんなも援助が受けれる、自分の生活は幸せなのだと信じていた。
ある日クララは王宮の中庭のベンチに掛けて休憩を取っていた。
王女の代わりと、そもそもクララに割り振られるべき聖女の仕事を掛け持ちしているため、自身を回復させてもやはり精神的にキツイ。
ついウトウトとしてしまったクララに
「大丈夫か?」
突然現れ声をかけたのは彼だった。
身代わりの件は他言無用、その時間は何もしてないと思われているクララはかなり使えない聖女として評判なので、サボっていると思われても仕方がない。
こんな所を彼に見られてしまったのが恥ずかしく、クララは焦って立ち上がろうとした。
「すみません、今すぐ戻りますので!」
しかし彼はクララの両肩をグッと押しつけてベンチにもう一度座らせ、
「いいんだ、いつもお疲れ様」
そう言って微笑んでくれた。
その一言でクララは真っ赤になって何も言えなくなってしまい、黙り込んで下を向いてしまう。
するとクララの隣に彼も腰掛け、話しかけてくれた。
「貴方はいつも頑張ってくれているね、この国の為に本当にありがとう。」
クララはドキドキして倒れそうだったが、せっかく話してくれた彼を無視など出来ずふわふわした頭で必死に言葉を紡いだ。
「クラウス様もお疲れなのですね、よろしければ回復の魔法をおかけしますので!」
柔らかい光が彼を包みこむ。
「ありがとう。君の魔法は本当にあたたかい。いつも感謝しているんだ。」
お礼を言われて感激したが、ふと彼に魔法をかけたことは王女のふりをしていた時だったはずと思いだし、クララは蒼白になった。
もし身代わりがバレてしまったらここにはいれない、それどころか教会への援助はもちろん無しになるし、最悪クララの命もどうなるか分からない。
「覚えていないかもしれないが、私は昔、君に病を治してもらったことがあるんだ。
おそらく君はまだ王都に来たばかりだったんじゃないかな、貴族の屋敷に来て病人に魔法をかけたことがあるだろう?」
そう言われて、王女から呼び出される前に行った豪華なお屋敷に住む男の人を治したことを思い出した。
かなり長い間病魔に蝕まれていたのか、彼の方はとても痩せており、ここにいる彼とは言われてもなかなか結びつかない。
あの頃はまだ未熟で、一晩かけて祈り続けてやっと治すことができ、失敗せずに終えた事を安堵した覚えがあった。
「それは気付かず申し訳ございませんでした!」
謝るクララに彼は言った。
「何を謝ることがあるんだい、私は君に感謝こそすれ、謝罪されることなど一つもされていないよ。
私が今こうして生きているのは貴方のおかげだ。
貴方が国の為に頑張ってくれているから、私も頑張れる、もし私が役に立つ事があるなら、それは全て貴方の功績だよ。」
彼のその言葉はクララには衝撃だった。
普段自分の仕事の多くは人に知られる事なく、それを不満に思うことはない。
だが頑張りを認められ、更に彼のやった事まで自分のおかげだと言ってもらえるなんて。
目頭が熱くなり、必死に涙が溢れるのを我慢しながら「とんでもございません。」
一言だけ震える声で答えた。
だから彼は気にかけてくれて様な気がしていたのか、クララは嬉しくもあり若干勘違いしてしまっていた自分を諌めたが、でもやはり嬉しくて一生忘れられない思い出が出来たと、神様に感謝した。
その後ベンチでの彼との会話は途切れてしまったが、回復魔法のなごりなのか柔らかい空気が漂う居心地の良い空間に心の疲れが消えていくのを感じる。
10分ほどすると彼は
「私はそろそろ戻らねば。貴方も冷えてしまう前には戻るんだよ、無理しない様にね。」
と言って立ち去ってゆく。
最後まで優しく声をかけてくれた彼に、もう言い訳など何も出来ないほど恋をしている事をクララは苦しい程自覚してしまう。
そんな2人を見ている影がいたことには気付かないまま、いつのまにか風は冷たくなっていた。
遠くからひと目見るだけでも胸が高鳴り、少しでも長く彼を自分の視界に入れておきたくて今まで以上に王女の代わりに打ち込んだ。
彼は主に王女に付き添っていたが、時たま1人でいる時などはクララに声をかけてくれる事もあった。
そんな日は浮かれてしまっていたが、仕事自体はかなり捗ることとなった、聖魔法は精神状態に左右されるといわれていて術者が安定している程強い効果がでると一般的にいわれているからだろう。
親切で紳士的、そして容姿も整っている彼にクララは淡い恋のような物を抱くようになる。
クララが1番好きなのは彼の瞳だった。
最初に出会った時に見つめられた瞳が忘れられない。
ずっとその目をもう一度見たかったが、あの時のクララは王女として彼と対峙していた為に、残念だがあの目で見てもらえることはもうきっと無い。
あんな身を焦がされる程の熱い視線を向けられたのは産まれて初めてで、自分を見ていた訳でないと分かっていても頭に心が追いつかず、何度も思い出しては頬を染めた。
ただこの恋のような物が決して叶わないことをクララは理解している。
王女と彼の2人が並ぶ姿は、絵画の様に出来上がった美しさで、そこに自分が入り込める訳は無かった。
彼は私を見かけると優しい笑顔で接してくれるとはいえ、それは対外的な社交辞令に過ぎない。
騎士は公爵家の次男、王配としても申し分無しの身分で、護衛騎士として命をかけて王女を守っている。
それは誰かが考えたストーリーだったのか、それともそうなる運命なのか、
宮廷では王女と近衛騎士の恋物語が語られるようになり、市政でも権力を求めた政略的な結婚をする他の王族よりも好意的に受け止められていたように思う。
クララは、王女の代わりに働き続けることで彼を側で見続けることが出来るし、教会のみんなも援助が受けれる、自分の生活は幸せなのだと信じていた。
ある日クララは王宮の中庭のベンチに掛けて休憩を取っていた。
王女の代わりと、そもそもクララに割り振られるべき聖女の仕事を掛け持ちしているため、自身を回復させてもやはり精神的にキツイ。
ついウトウトとしてしまったクララに
「大丈夫か?」
突然現れ声をかけたのは彼だった。
身代わりの件は他言無用、その時間は何もしてないと思われているクララはかなり使えない聖女として評判なので、サボっていると思われても仕方がない。
こんな所を彼に見られてしまったのが恥ずかしく、クララは焦って立ち上がろうとした。
「すみません、今すぐ戻りますので!」
しかし彼はクララの両肩をグッと押しつけてベンチにもう一度座らせ、
「いいんだ、いつもお疲れ様」
そう言って微笑んでくれた。
その一言でクララは真っ赤になって何も言えなくなってしまい、黙り込んで下を向いてしまう。
するとクララの隣に彼も腰掛け、話しかけてくれた。
「貴方はいつも頑張ってくれているね、この国の為に本当にありがとう。」
クララはドキドキして倒れそうだったが、せっかく話してくれた彼を無視など出来ずふわふわした頭で必死に言葉を紡いだ。
「クラウス様もお疲れなのですね、よろしければ回復の魔法をおかけしますので!」
柔らかい光が彼を包みこむ。
「ありがとう。君の魔法は本当にあたたかい。いつも感謝しているんだ。」
お礼を言われて感激したが、ふと彼に魔法をかけたことは王女のふりをしていた時だったはずと思いだし、クララは蒼白になった。
もし身代わりがバレてしまったらここにはいれない、それどころか教会への援助はもちろん無しになるし、最悪クララの命もどうなるか分からない。
「覚えていないかもしれないが、私は昔、君に病を治してもらったことがあるんだ。
おそらく君はまだ王都に来たばかりだったんじゃないかな、貴族の屋敷に来て病人に魔法をかけたことがあるだろう?」
そう言われて、王女から呼び出される前に行った豪華なお屋敷に住む男の人を治したことを思い出した。
かなり長い間病魔に蝕まれていたのか、彼の方はとても痩せており、ここにいる彼とは言われてもなかなか結びつかない。
あの頃はまだ未熟で、一晩かけて祈り続けてやっと治すことができ、失敗せずに終えた事を安堵した覚えがあった。
「それは気付かず申し訳ございませんでした!」
謝るクララに彼は言った。
「何を謝ることがあるんだい、私は君に感謝こそすれ、謝罪されることなど一つもされていないよ。
私が今こうして生きているのは貴方のおかげだ。
貴方が国の為に頑張ってくれているから、私も頑張れる、もし私が役に立つ事があるなら、それは全て貴方の功績だよ。」
彼のその言葉はクララには衝撃だった。
普段自分の仕事の多くは人に知られる事なく、それを不満に思うことはない。
だが頑張りを認められ、更に彼のやった事まで自分のおかげだと言ってもらえるなんて。
目頭が熱くなり、必死に涙が溢れるのを我慢しながら「とんでもございません。」
一言だけ震える声で答えた。
だから彼は気にかけてくれて様な気がしていたのか、クララは嬉しくもあり若干勘違いしてしまっていた自分を諌めたが、でもやはり嬉しくて一生忘れられない思い出が出来たと、神様に感謝した。
その後ベンチでの彼との会話は途切れてしまったが、回復魔法のなごりなのか柔らかい空気が漂う居心地の良い空間に心の疲れが消えていくのを感じる。
10分ほどすると彼は
「私はそろそろ戻らねば。貴方も冷えてしまう前には戻るんだよ、無理しない様にね。」
と言って立ち去ってゆく。
最後まで優しく声をかけてくれた彼に、もう言い訳など何も出来ないほど恋をしている事をクララは苦しい程自覚してしまう。
そんな2人を見ている影がいたことには気付かないまま、いつのまにか風は冷たくなっていた。
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