モンスターだってBLしたいんです

風巻ユウ

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あいつとBLしたい編

28.う、産まれるぅ

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 今後の明るい未来計画を発動させたバカップルは、第二ラウンドに突入した。
 隣の部屋……私の部屋で…………。
 あーうん、仕方ないよな。盛り上がっちゃったんだもんな。
 お花もフラワッと咲いたことだし、モニタリングはもうやめよう。

 モリエスにゃんの拘束も解いてあげる。

「…………っ、」

 ありゃ、前屈みで「orz」になっちゃったよモリエスにゃん……ヴィルクローレ呼んだ方がいいね。
 動けないだろうし、この部屋を使うといいよ。

 ……て、私がいる部屋なくなった。

 えええ聖樹なのに、ここが本体の聖樹なのに、二部屋しかない二部屋ともBL提供したら私が居る場所なくなったああアア。

 うむう。想定外の出来事です。大体いつもならフラワッとしたら今度は実をつける為に眠るんですが、今回はそれがない。まったく眠くならない。むしろ興奮して目が冴えている。
 今までと違う要素といえば、私の部屋でまぐわってもらったことだ。BL観賞するだけじゃなく、私の部屋というプライベートな空間で私と友好を深めた二人が一生懸命BLしてくれたのだ。
 これは、まっこと良きこと。私、大興奮でしたし!

 おかげで眠くならな~い。部屋は追い出されたけど、私は元気です。

 根っこを伝って聖王都へ向かいます。その際、お腹にしっかりジズ卵を抱えて行くわけですが、なんかペニョ、いつもよりあったかいのですよねえ。むしろ熱いというか……。
 これ、産まれますかねえ。どきどきわくわく。

 聖王都に辿り着き、ニョキッと生えたところはトーヴァと陽生さんのおうちです。今なら留守なので、誰の目も気にせず気軽に生えれるというものです私が。

「ペニョ、ペニョ、そろそろ出れそう?」

 話しかければ「ギビィィ」と小汚い声が返ってきます。その声なんとかならんか。
 卵の殻をさすったり、口付けで聖力を分け与えようとしてみるのですが、なんだかうまくいきません。
 んー、私が聖霊体になった時、キスでメトジェから聖王の力を貰った気がするんですが……むぅ、うまくいかないとはなにごとだ。私の唇はそんなに安くないんだぞ。

「ペニョ……どうしよう、これ、難産だ」

 安産の実をつける聖樹なのにペニョの難産を解消できません。これは由々しき事態……!
 別にペニョが難産ってわけじゃないですけど、産まれようとする力はペニョから出るものですし、出産はお母さんと赤ちゃんが一緒に頑張って成功するものですよね。
 私の思考は前世で体験した出産、娘を産んだ時、娘が孫を産んだ時、孫が曾孫を産んだ時とループしていきます。

 あの時、どうした。私は、切迫早産で……。娘も大病ばかりして……それでも、可愛い孫を産んでくれた。そりゃもう家族中が喜んで、お婿さんも仕事休んで育児に協力を…………。

「お婿さん…………」

 協力者……?
 私だけの力じゃ駄目ってこと?

「ギビィ……ギビビィィ……」

 殻の内側からカリカリ何かで引っ掻く音と共に聞こえるペニョの声。耳をすませば聖樹の耳に聴こえる不思議な魔力波……。

 ───もっとちからをよこせ

 魔王的な……?
 ペニョ、鳴き声小汚くて、地声も雄々しいとは聞いてないよ。

 スイングにジズ卵を抱え直して、協力者を探しに出る。一番最初に閃いたのはメトジェだ。私を聖霊体にしたあの野郎なら、ジズの難産に対応できそう。聖王だし、聖力もいっぱいあるだろう。
 ペニョのためです。干からびるまで吸い取ってやる!

 聖王の居城は崖の上です。崖下までは根っこ伸ばしてあったのですけどね。この上まで伸ばすのは初めてですよ。
 ニョキニョキと岩肌の上を這わせ、私も登攀する。お城の壁にも根っこ這わせて、窓から中を見てみよう。
 ……眼鏡かけた人と、私の枝芽がコンニチハした。あの人、どっかのルーボさんに似ている。

 メトジェどこだ?

 ちまちまとやるのは性に合わない。庭にニョッキリ生えた私は、一気に根っこを聖王城中に伸ばしていった。地面の中じゃないよ。それやると城の床という床をボッコボコにしてしまうから、廊下を、壁を、天井を這って進んでいく。

「うわっ」「ひえぇ」「きゃー!」と、聖王城の人々を驚かせながら。

 たいへんお騒がせしております。聖樹ですよー。皆さんのアイドル聖樹たんです。この国にいればどこからでも見えますシンボルですからね。皆知ってるよねー。

 今ならフラワッと花も咲いてますので、その辺に花粉も巻き散らかしながら進む。ひゃだこれちょっと恥ずかしい。粗相しながら歩いているようなものじゃないですか。でも花咲くの止まらない。だって私の部屋でBLしてるホモカプがいるんだもの。きちんと録画してますから後で観るの楽しみ。

 そうこうしている内に聖王城中の部屋を制圧完了。メトジェがいる部屋を目指す。

「メトジェーー産まれちゃうのおおお」

 ピョッコーン!!と、生えたところは聖王様の執務室。たぶん。執務机の横にメトジェの姿を見つけたら一直線だったので回り見てる暇はない。

「誰の子を孕んだ」

 メトジェ怒る。なぜに?
 あ、ジズ卵には迷彩と認識阻害の魔術をかけてるんだった。見えない卵を腹に抱えたポーズは、まるで私が妊娠して産まれそうだとメトジェに泣きついているみたいで…………て、ちゃうよー! メトジェ勘違い!

「違うよ! これはジズの卵なの!」
「ジズの卵を孕んだのか……あの、でかいだけのアホウ鳥め。滅ぼしてやる」

 もっと勘違いしたー!
 これ見ろとスイングから卵を取り出し目の前に掲げる。途端に魔術は解けて、紫色でお花柄という毒々しい模様のジズ卵が姿を現す。

「ジズの卵なんだってば!」
「はあ? 今産んだのか?」
「違うわボケー! 拾ったの! 今にも産まれそうなのに産まれないの! なんとかしろメトジェー!」

 目の前に掲げられたからか、メトジェが卵に手を添える。私も卵を持っている状態。二人して卵に触れた時、ジズ卵がドクンッッッと脈打った。

「ギビビビィィイイィィィィィィ」

 すごい声量の鳴き声が響き渡る。

「――――――――?!!」

 鳴き声でビシィッッと部屋の窓ガラスにヒビ入れた。あああ高そうなガラスなのに……!

「これ、は──?」

 疑問ですよねー。私もわけわかりませんジズの孵化。
 それにしたって卵に入った状態で、これだけの力を放出できるとは……。でも、これだけ力入っても卵割れないのか。ジズ卵の強固さにおみそれする。

「守る力が働いてないんだ……。これを孵化させたいということか? 美樹」

 そーです、そーです。頭を前後に振っていたら、メトジェの顔が近づいてきた。
 はれ? こいつ、こんな顔立ちキリッとしてたっけ?
 あと、だいぶ上から視線が降ってくる気がするのですが……。
 小さな疑問は唇を塞がれてしまったので飲み込んだ。

「んーっ」

 逃げようとしたけど頭固定されたから横向くことすらできん。片手なのに……。メトジェ、片手で私の後ろ頭掴んでるだけだよ。なのに、なのに、びくともしないんですけども……!?

「むにゅ……ぅー」

 舌! 舌キタ! ディープなやつだこれマジなやつだこれぇぇ!
 及び腰になる私の心を見透かしているのか、腰にまで腕が回って動けない。ジズ卵は私が両手で持っているけど、メトジェの胸にも挟まれて落ちる気配はない。それどころか花柄がビカビカ光って明滅し出した。
 なんじゃこれ光る卵……。

「むぅぅ……ん、ンーーんン」

 卵光っててもキスやめてくれない。チューチュー吸われて、その度に引っ張られる感覚が背筋をぞわぞわさせる。それが快感だって気づいたら、体の芯が熱くなった。

 ……心臓ないはずですけどねえ。それどころか内臓はつくってないはず。なのに、胸が疼いて巡る血潮が熱く滾る。血もないはずなのに……。

 メトジェの舌が絡んできた時、思わず私も舐め返した。
 気を良くしたメトジェの舌が、更に私の舌根を摩ってくる。口内粘膜が擦れ合う度に、小さな痺れに襲われる。気持ちいいって素直に感じる。

「んっ、ん……んん……っ」

 すればするほど気持ちいい。もっとと舌を絡め口内をクチュクチュさせる。逃しきれない唾液が溜まってきた。それでもメトジェの舌が気持ち良くて仕方ない。

 ようやく離れた時、はふ、はふ、と、犬みたいに息をして呼吸を落ち着かせたり、ほんと私、人間の頃みたいな反応をしている。
 唾液が口から零れちゃっているし……あーたぶんこれ樹液だ。

「美樹は甘いな…………」

 垂れた涎もしかしたら樹液を、メトジェは舌で舐めとる。その舌、赤いその舌がなんだかすごい凶器に見えてくるんですけど。お前のペロペロすごいよ。忘れていたキスの快感を思い出したよ。パネェぜ性王。
 樹液を舐め取ってからも、頬に、目尻に、米神へと舌を這わせて何かを舐めているようだ。
 まさか顔面中から樹液が染み出ているわけでは……まさかね。

「続きしたい」

 いやそれ犯罪です。服脱がせないでください。聖王のおさがりである私の着ている服は、無駄に装飾華美で隠し釦もあるしで脱がせにくいはずだけど、さすが元持ち主です。するすると脱がせていきます。

「おっぱいねえのか……」

 ないわ。揉むな。ないから。上半身すっぽんぽんの私の胸を両手で包んでいるけど、そこにプリン的なのは、ない。ましゅまろ的なのも、ない。

「ギビィ!」
「お、産まれた」
「いつの間に……ペニョ……!」

 おそらく、メトジェが私の体中をまさぐっている間に産まれましたね。
 産まれたばかりのペニョは濡れ鼠みたいで、割れた卵殻の中からひょっこり顔を出しています。
 嘴真っ黒、目玉が大きくて愛らしい雛ですね。羽毛は濡れて張り付いて濃い色になっている。まあ、小汚いダークグレイな色合いです。ほんと小汚いな……。
 本来の色は何色だろう。きっとこれから成長したら、ふわふわボディになってくれることでしょう。

「こ、これは――――マクスミリアーン!!」

 お、誰かきた。扉バーンしてやってきた。
 マクスミリアーンてあれですねメトジェの名前です。それを叫ぶ人は眼鏡かけた銀灰髪に紺瞳のやたら美形なおじさまです。
 この人、知ってる。ルーボさんに似てるもの。ルーボさんの伯父。この国の宰相スタッカリー・エトラだ。

 彼は、くわっと紺瞳を開き、こう叫んだのだった。

「初夜は結婚してからです!」

 と。
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