魔族界の婚活パーティー

風巻ユウ

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婚活3

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 リンさんの歌は、それはもうとっても見事でございました。

 伴奏など無く独唱で響くその歌声は澄んでいて、爽やかに吹き抜ける春風のような暖かさ、そして親しみやすさが織り成すハーモニーが素晴らしいです。

 聴いている魔の者すべての胸の内にポッと明かりを灯らせて、これから本格的に始まる婚活パーティーへの期待をも高めてくれました。

「あーん、緊張したよお~」

「とっても素晴らしかったですわ」

 大勢の拍手の中、リンさんは華麗に歌い上げ、テーブルに戻って参りました。英雄凱旋です。本当に素敵な歌でした。彼女自身とても緊張していたようですが、その歌声はブレることなく完璧な状態でした。

 こういうのをプロフェッショナルというのでしょう。格好良いですわ。

『え~~お次は男性です。巨人族タイタン種のガーモさん、どうぞ!』

 魔狸種の司会者さんの声に案内されて舞台に立ったのは、紹介通りの巨人さんでした。でっかいですわねー。

 私の居るテーブルは舞台から一番離れているのですけれど、巨人さんの全身を見る為には顎を上に向けなければなりません。皆さん、一様に上体を後ろに逸らして空を見上げております。

 まぢ、でっかいですわねー。

 巨人さんの一芸は丸太投げでした。丸太を背筋の力で飛ばすのですが、飛ばされた丸太はあっという間に空の彼方へ消えてしまいました。どこまで飛んで行ったのでしょうね。丸太に幸あれ。

 次の一芸披露は女性の淫魔種の方でした。

 私の向かいに座る淫魔種のハワードさんが、なぜかムスッとした表情で舞台を見ておりました。同族はお嫌なのでしょうか?

 淫魔種のお姉さんはフェロモン全開で、お胸の強調も激しいボンテージ衣装を着こなし颯爽と舞台上でフェンシングを披露しました。

 一突きごとにボインボインとお胸を揺らして色気を放っております。更に一突きしたらウインクをして、も一度一突きで男性陣のハートを射抜きます。とりあえずあの乳がウゼエです。どうせ私はペチャパイ……いえ、何でもありませんわ。ホホホ。

 お次は熊さん。魔熊種のハットベルさんです。
 彼は、どでんとした体を窮屈そうに小さな椅子へと押し込め、なぜかシャボン玉をしておりました。とても和みました。

 次は犬さんコンビの漫才、鰐さんのステーキ早食い、そして島エルフの男性が二人、弦楽器と太鼓の二重奏を披露いたしました。

 それからハワードさんの出番です。淫魔種であるハワードさんは一体何を披露してくれるのでしょうか。

 先程の淫魔種お姉さんは男性陣に大ウケだったので、こやつは女性陣狙いで何かやるつもりでしょうか。期待が高まりますが、私はこっそりと防護結界を張らせて頂きました。バリヤー。

『今日は美しいお嬢さん方に出逢えて感激だ!』

 そんなことを拡声魔音器で高らかに宣言したハワードさんが大放出したのは色とりどりの薔薇です。

 どのテーブルにも女性は座っておりますからね。女性の周りにだけ色とりどりで大輪の薔薇が咲いて、その芳しい香りを会場中に振り撒いております。つくづく、薔薇がお好きなんですねえ。

 お花を貰って喜ばない女性はいないということでしょうか。

 どの女性も、うっとりと薔薇を手にしながらハワードさんを見つめております。魅了の魔法も振り撒いたのですね。私には効きませんが。

 当然ながら男性陣にも効いておりません。あと、貴賓席は最初から防護壁に囲まれてるのですね。元魔王様なんか蚊帳の外で笑ってますよ。

 取り敢えず、薔薇に埋もれて冠羽だけがニョキッと出ているリンさんを救出します。

「ふえ~助かったよおアイリスちゃん」

 ふらふらしてますが一応無事ですわね。
 魅了の魔法にもかかっていないようですし、リンさん、もしかしてお強いの?

「はっくしょん! フズー……なんか鼻かゆい」

 特異体質なだけのようですね。花粉症と申しましょうか。それで魅了も効かなかったのでしょう。
 あれは多分にフェロモンを嗅覚に訴えて粘膜刺激からの脳髄刺激が……と、説明長くなりそうなので割愛させて頂きます。
 簡単に申しますと、魅了というのは臭い刺激臭を撒き散らかす、けったいな魔法ということですわ。嗅いだらアウト。フェロモン撒き散らかした魔人の虜になります。

 だから一発芸で魅了をかまされた場合、魅了解除の処置が行われるので数分ほど待つことになります。
 女性の淫魔種の時もそうでした。パーティが一時中断してしまうのは良くないことですわね。

 ──いっそ潰して台無しにしてしまう方が圧倒的で素晴らしいのですが。

 あら、どす黒い考えが渦巻いてしまいました。

 ごめんあそばせ。
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