自作したシュミレーションゲームに転生してしまった!

海果

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1ヶ月目

忘れていた

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この調子で一週間が経った。今週の成果を商人に渡す。

「合計で77,500コインですね」

一週間、みんなでひたすら働き続けたかいがあったってもんだ。思っていた以上に収入があり自分でもびっくりしている。

「ありがとうございます。じゃあ、次は購入をしたいんですけど。4人の食料1週間分でいくらになりますか?」

「1人分が2000コインになるんで、8000コインですね」

 この人数でならまだどうにかなるが、将来的に住人が増えたら自給自足がより重要になってくるだろう。

「分かりました。お願いします。あと、パン工房を買い戻したいんですけどアレいくらですか?」

「あー、あれですね。30000コインでいいですよ」

 ふむ、手元にあるコインで買えてしまう。いいか、買ってしまおう。

「じゃあそれもお願いします」

 こうして、一週間の頑張りを経て目標のパン工房買い戻しに達成した。

「みんな!聞いてくれ。みんなが頑張ってくれたおかげでパン工房を買い戻せたぞ!」

 俺の報告に一番に反応したのはマリーだった。

「本当ですか!!これであの硬い干し肉じゃなくて柔らかいパンを食べることができるのね!あ、とうもろこしもあるからコーンパンもできるわ!町長さん、パン工房は私に任せてくれないかしら」

 想像以上の反応に圧倒されてしまう。だが、熱心な町民の頼みを断る理由などなかった。

「もちろんです。よろしくお願いします。これから収穫した穀物はパン工房の方へ運ぶことにしましょう」

「仕事が増えることはいいのですが、人手が必要になりますね」

 人手が気になるのは当然のことだが、俺は全くもって心配していなかった。たぶんそろそろ――

「あーー!おい!このこそ泥が!!」

 納屋の方でモンドじいさんの騒ぎ声が聞こえてきた。
 声の方にみんなで駆け寄ると、真正面から小さな影が突進してくる。それは思い切り俺の腹部にぶつかってきた。

「ぐえっ、う、うぅ……」

 思わず腹を押さえてうずくまる。影はすぐ隣にいた青年が捕まえてくれたようだ。
 それにしても、泥棒が入るというストーリーは確かに入れていたが、わざわざ俺にぶつからなくても……。だが、ここは大事な場面。よろよろと体を起こして俺は目の前の泥棒の前に立ち塞がる。……できるだけ偉そうにというのがポイントだ。

「おい、お前はこの町の人間じゃないな。ここで何をしていたか教えてもらおうか。その手に持っている物の説明も合わせて頼もう」

 俺の言葉を聞いて忌々しげに顔を上げたのは、まだ年端も行かない少年だった。

「随分な態度だな。そっちがその気なら、隣町の警察に突き出すこともできるが――」

「ダメーーー!」

 そう言って、さらに小さい影が飛び出してきた。それを見て少年の目がギョッとする。

「おい、バカ!出てくるなって言っただろ」

「だって、だって……お兄ちゃんがいなくなったら嫌だーー!!」

 そう言って泣き出してしまったのは、さらに小さな女の子だった。

「あのな、悪いことをしたらちゃんと謝る。俺はそんな当たり前のことがして欲しかったんだ。盗みはダメだって教えてくれる大人がいなかったんだろう?教えられても悪いことをするのが本当に悪いやつなんだ。君たちはまだ悪いことするつもりか?」

「…………もう、しない。けど、そしたら……しんじゃうよ」

「この町は、ちゃんと働いてくれる人には必ずご飯を食べさせる町だ。そして、俺は一緒に働いてくれる人を探している。どうだい、俺の仕事を手伝ってくれないか?」

 小さな兄妹は互いに顔を見合わせて嬉しそうに笑った。

「僕たち、頑張って働く。なんなら、妹の分まで僕が頑張るから、二人分のご飯をください!」

「よし、分かった。それじゃあまずは腹ごしらえからだ。お腹が空いてたら仕事にならないからな」

「町長さん、この子達、うちで面倒を見てもいいかしら。ねぇ、あなたもそれがいいと思わない?」

「君がそう言うなら僕は構わないよ」

マリーの申し出に、ケントはゆっくり頷いた。マリーの視線が俺の方に向いてくる。

「お二人が良ければお願いしたいです」

「じゃあそういうことだから、今日からあなたたちはうちで寝泊まりするのよ。私はマリー。こっちが旦那のケント。あなたたちのお名前は?」

「僕はジン。妹のニーナ」

「うん。ジンくん、ニーナちゃん、よろしくね。それじゃあご飯を食べに行きましょう」

 ご飯という言葉の響きに子供たちは目を輝かせた。
 トントン拍子で話が進んだが、これはもちろん決められたストーリーだから抗うことは出来ない。
 シュミレーションゲームの中にもどうにかストーリーを組み込みたくて後から追加したんだよなー……。あの作業、もう思い出したくもないよ。



 こうしてハッピーな気分で俺も家に帰る。
 すると、ポストに一通の手紙が入っていた。

『新しい町長様
 この度は町の再建にお力添え頂きありがとうございます。今回お手紙を送らせていただいたのは、町のこれまでの運営費についてです。毎月、使用分の水道代と電気代、そして商人の派遣費を頂くのですが、かなりの期間滞納されており、こちらも合わせてお支払いをお願いします。いきなりのことで驚かれるでしょうし準備も必要でしょうから、三ヶ月の猶予を与えます。それ以降は未払金に利子が付きますのでお忘れなきよう。尚、お支払い頂く金額は100万コインです』

 わ、わ、忘れてたーーー!!!そうだ、これの事だった。この前から感じていた嫌な予感は!
 毎日の運営に合わせて毎月増える借金というとんでもないハードモードにしたのは紛れもなくこの俺。だが、これは町民に知らせてはいけないはずだった。
 あぁ、明日から俺、みんなの前でちゃんと笑えるかなー……あははははは。
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