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1ヶ月目
新たな可能性
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双子がさらに町に加わったことで、俺は人参とレタスの苗を新たに商人から購入して栽培を始めた。
食べ盛りの子供たちには野菜もちゃんと食べてもらわないとな。
だがそうなると、今度は動物性の食材も欲しいものだ。
「栄養価から見ても、卵は早めに欲しいところだなー。よし、次の買取日に聞いてみよう」
そう決めた俺は、また新しい一週間のスタートをきった。
「いつもありがとうございます。今週は217,440コインです」
「おぉっ!ありがとうございます!」
先週の5倍近い買取金額に俺はつい声が大きくなる。
「いい調子ですね、町長さん」
「いやー、俺だけの力では無いですからね。成り行きで集まったメンバーですけど、みんな文句も言わずによく働いてくれてます」
「それなら良かったです。先週のことがあったからちょっと気になってたんですよ」
「あぁ、それについては俺も聞きたいと思っていたんです。ここらでは奴隷制度は当たり前なんですか」
「いえ……中央の組織に知られないように水面下で行われているんです。売買に携わっている人間は、みな多額の寄付を中央にしているため、管理側の内部の人間もぐるになっている可能性が高いでしょうね」
商人からの話は俺が想像していた以上に重く深刻だった。
「……そいつらをどうにかできる方法は無いんですか」
俺は怒りに震えそうになりながら声を絞り出した。
「…………残念ながらすぐに思いつけるようなことはないですね。ですが、私も奴隷については反対です。だから、何かいい情報を仕入れたらすぐにお伝えします」
「ありがとうございます。あ、そうだ、もう一件相談があったんです」
鶏の購入についてたずねてみると、商人は手元のメモを見ながらうーんとつぶやく。
「鶏小屋はあるけれど差し押さえされてますね。小屋と鶏4羽を合わせて100,000コインでいかがですか」
「じゅ‥‥じゅうまん……。それならどうにか……」
「ありがとうございます!それでは来週の訪問日に鶏を持ってきますね」
震えそうになる手をどうにか抑えながら答える俺に、商人は更なる追い討ちをかけてくる。
「あ、そうだ。来週が一ヶ月分の町の維持費支払日になってますので追加で50,000コインほどかかります。こちらも合わせてお願いしますね!」
俺は目の前が真っ暗になりそうな感覚を覚えながらも、どうにか商人に頷いて見せた。笑顔で帰っていく商人の背中をみつめながら、俺はがっくりとうなだれた。
重い足取りで家に戻る俺の元へ、双子のアレンとセレンがどこからともなくふらっとやってきた。
二人揃ってマジマジと俺の顔を覗き込む。
「蓮、どうしたの?」
「蓮、顔が変だよ?」
「か、顔色が悪いって言いたいんだよな?そうだよな!?」
アレンとセレンは今までの環境のせいかあまり言葉を知らなかった。だからたどたどしい話し方になっているんだが……本当に顔が変って言いたかったわけじゃないんだよな!?
勝手に心にダメージを負いながら俺は二人に向き直る。
「来週四羽の鶏が来るから、その準備を頑張らないといけないんだ」
俺の言葉に、二人はパァっと瞳を輝かせた。
「鶏、好き」
「鶏、かわいい」
「ん?そうなのか?」
うんうんと二人は首を縦に振る。
「前、育てた」
「お世話したい」
「そうか。じゃあ、鶏が来たら二人に任せることにするよ」
「「蓮、ありがとう!」」
二人の嬉しそうな顔を見てしまったからには、弱音など吐いていられなくなったな。俺は両手で頬をバチンと叩いて気合を入れる。
「よーし、今週もやるぞ!」
毎日の仕事を終えてから、俺はステータスパネルを開いて何か役に立つ情報はないかと、いろんなボタンを押しては閉じてを繰り返していた。
すると、その中で一つ気になるページを見つけた。畑やパン工房のような生産施設とは別の補助施設という部類で『魔力の泉』というボタンがあった。
「こんなの今まであったか……?」
きっと他の施設がレベルアップして新たに解放されたってところだろうな。
「えーっと、解放条件は」
ページを下にスクロールしていくと、×印が付けられたこの町の地図が出てきた。
「え?これだけ?」
他になんの説明もないため、この場所に行ってみることしかできない。まだ外は明るいし行ってみるか。
ステータスパネルを閉じて俺は立ち上がる。マップが示していたのは、この町の一番西の端にあたるところだった。俺たちが普段よく利用している畑や工房は東に位置しているから、ほとんど目につかない場所になる。
「多分この辺りのはずなんだが……って、んん?」
食べ盛りの子供たちには野菜もちゃんと食べてもらわないとな。
だがそうなると、今度は動物性の食材も欲しいものだ。
「栄養価から見ても、卵は早めに欲しいところだなー。よし、次の買取日に聞いてみよう」
そう決めた俺は、また新しい一週間のスタートをきった。
「いつもありがとうございます。今週は217,440コインです」
「おぉっ!ありがとうございます!」
先週の5倍近い買取金額に俺はつい声が大きくなる。
「いい調子ですね、町長さん」
「いやー、俺だけの力では無いですからね。成り行きで集まったメンバーですけど、みんな文句も言わずによく働いてくれてます」
「それなら良かったです。先週のことがあったからちょっと気になってたんですよ」
「あぁ、それについては俺も聞きたいと思っていたんです。ここらでは奴隷制度は当たり前なんですか」
「いえ……中央の組織に知られないように水面下で行われているんです。売買に携わっている人間は、みな多額の寄付を中央にしているため、管理側の内部の人間もぐるになっている可能性が高いでしょうね」
商人からの話は俺が想像していた以上に重く深刻だった。
「……そいつらをどうにかできる方法は無いんですか」
俺は怒りに震えそうになりながら声を絞り出した。
「…………残念ながらすぐに思いつけるようなことはないですね。ですが、私も奴隷については反対です。だから、何かいい情報を仕入れたらすぐにお伝えします」
「ありがとうございます。あ、そうだ、もう一件相談があったんです」
鶏の購入についてたずねてみると、商人は手元のメモを見ながらうーんとつぶやく。
「鶏小屋はあるけれど差し押さえされてますね。小屋と鶏4羽を合わせて100,000コインでいかがですか」
「じゅ‥‥じゅうまん……。それならどうにか……」
「ありがとうございます!それでは来週の訪問日に鶏を持ってきますね」
震えそうになる手をどうにか抑えながら答える俺に、商人は更なる追い討ちをかけてくる。
「あ、そうだ。来週が一ヶ月分の町の維持費支払日になってますので追加で50,000コインほどかかります。こちらも合わせてお願いしますね!」
俺は目の前が真っ暗になりそうな感覚を覚えながらも、どうにか商人に頷いて見せた。笑顔で帰っていく商人の背中をみつめながら、俺はがっくりとうなだれた。
重い足取りで家に戻る俺の元へ、双子のアレンとセレンがどこからともなくふらっとやってきた。
二人揃ってマジマジと俺の顔を覗き込む。
「蓮、どうしたの?」
「蓮、顔が変だよ?」
「か、顔色が悪いって言いたいんだよな?そうだよな!?」
アレンとセレンは今までの環境のせいかあまり言葉を知らなかった。だからたどたどしい話し方になっているんだが……本当に顔が変って言いたかったわけじゃないんだよな!?
勝手に心にダメージを負いながら俺は二人に向き直る。
「来週四羽の鶏が来るから、その準備を頑張らないといけないんだ」
俺の言葉に、二人はパァっと瞳を輝かせた。
「鶏、好き」
「鶏、かわいい」
「ん?そうなのか?」
うんうんと二人は首を縦に振る。
「前、育てた」
「お世話したい」
「そうか。じゃあ、鶏が来たら二人に任せることにするよ」
「「蓮、ありがとう!」」
二人の嬉しそうな顔を見てしまったからには、弱音など吐いていられなくなったな。俺は両手で頬をバチンと叩いて気合を入れる。
「よーし、今週もやるぞ!」
毎日の仕事を終えてから、俺はステータスパネルを開いて何か役に立つ情報はないかと、いろんなボタンを押しては閉じてを繰り返していた。
すると、その中で一つ気になるページを見つけた。畑やパン工房のような生産施設とは別の補助施設という部類で『魔力の泉』というボタンがあった。
「こんなの今まであったか……?」
きっと他の施設がレベルアップして新たに解放されたってところだろうな。
「えーっと、解放条件は」
ページを下にスクロールしていくと、×印が付けられたこの町の地図が出てきた。
「え?これだけ?」
他になんの説明もないため、この場所に行ってみることしかできない。まだ外は明るいし行ってみるか。
ステータスパネルを閉じて俺は立ち上がる。マップが示していたのは、この町の一番西の端にあたるところだった。俺たちが普段よく利用している畑や工房は東に位置しているから、ほとんど目につかない場所になる。
「多分この辺りのはずなんだが……って、んん?」
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