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奇跡の前兆
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ーー失礼します
今日も彼の返事はない。
当然と言えば…当然なんだろう
日課のように学生鞄を置いて、彼の横に座って、今日の出来事を話す
もちろん彼も相槌を打ってくれる
「今日、コンビニのプリンの新作が置いてあってさ、つい衝動で買っちゃったんだ~!」
『へぇ~…プリン好きだもんね』
「なんと上の方にクリームがね~…
『美味しそうじゃん!』
「三時間目の体育の授業ねー…
『相変わらずドジだな』
彼の隣で、ひたすら彼と会話する妄想をする
あぁ…幸せだなぁ
彼の甘い声が心に響く
動かなくなった彼との会話を妄想することが、今の私が幸せを感じ取れる唯一の方法だった
「やっぱりこうやって話している時が一番楽しいね」
・・・
「もぉっ!本当だってのに…」
・・・
「やめてよ…照れるじゃんか」
・・・
「そう言ってくれて、私も嬉しい」
私だけが聴こえる甘い声とのお話が
今日も始まった
………
……
…
ひとしきり話した後、
私が帰りの準備をしていた時、
彼の声が響いた
『そうそう、今日ね、弟が初めて1人で見舞いをしてくれたんだ』
『いつもと違って母さんの声がなくてさ、1人できたんだろうなーってのは雰囲気でわかった
死ぬほど嬉しかったんだ…
弟がまだ半年も経って、自分から僕に会いにきてくれるなんてさ…最後にした会話は喧嘩だったのにさ…』
「いい弟じゃん!ガラにも合わずに涙ぐんじゃったりしたの~?なんてね!」
『ふふふっ、実はそうだったりね
それじゃ、また明日会いにきてね』
「また来るよ、いつまでも」
『嬉しい事言ってくれるね』
病室のドアを開け、帰りに着く
ルンルンと鼻歌を歌いながら
一連の会話が、エゴだと気付かぬように
ゆっくり、慎重に帰路につく
そして、今日も布団で考える
明日彼と何を話そう?
その日の夜、彼との会話の内容を考える前に、私は今日の彼との会話を何度も、何度も噛みしめるように反芻していた
『プリン、僕も食べてみたいなぁ…
『球技は嫌いだっただろう?
『今日、僕の弟がね…
『死ぬ程嬉しかったんだ…
…………
………
……
…
あれ…
何か、引っかかる
私は布団の中で、
明日彼に話す内容を考えながら、
その魚の小骨の様な違和感に取り憑かれていた
今日の会話は何か、いつもと圧倒的に違った…そう感じた。
小骨の様な違和感は、次第に大きくなり、私の思考は、完全にその違和感の謎を調査するモードへとシフトしていった
うーん…なんだろう
何か、何かがおかしい
いつもと違う事なんて…特に無かったハズなのに…
新作のプリンの話…
バレーボールが顔に突っ込んだ話…
新しいヘッドホンを買った話…
今日、彼に伝えた話を、さらに詳しくまとめてみる
…そういえば、今日、彼が最後に言っていた…弟…アレかなぁ、
正直、付き合っていた時、彼の家庭事情とか知らなかったし…
嬉しかったんだろうなぁ…
あれ以来、私は彼の家族に顔を合わせづらく、彼の弟の顔を思い出すのに少し時間がかかったが、
彼の家に遊びに行った時、
彼そっくりの顔に、眼鏡をかけていたまだ小学生かそこらの歳の、小さい子の事を思い出した
あの子が今日、1人で来たのか…
この病院はかなり偏屈なところに立っており、私も、高校から家までの最寄駅の間にその病院が無ければ、毎日通えるような距離では無い
あの小さな子が1人で来るのには、ちょっと頑張らなくてはならない
そっか…だから彼はちょっとうるっときた~なんて言ったのか…
…うん?
それってちょっとおかしくないか?
なんで彼は自分の感想を私に伝えれたの?
なんで彼しか知らない情報を喋れたの?
だって
だって
だって
彼は私の妄想なんだよ?
私が知らない事を話せるわけがないじゃない?
長い間自分につき続けた嘘をあっさり認めた後、
私はとんでもないことに気づいてしまった
今日も彼の返事はない。
当然と言えば…当然なんだろう
日課のように学生鞄を置いて、彼の横に座って、今日の出来事を話す
もちろん彼も相槌を打ってくれる
「今日、コンビニのプリンの新作が置いてあってさ、つい衝動で買っちゃったんだ~!」
『へぇ~…プリン好きだもんね』
「なんと上の方にクリームがね~…
『美味しそうじゃん!』
「三時間目の体育の授業ねー…
『相変わらずドジだな』
彼の隣で、ひたすら彼と会話する妄想をする
あぁ…幸せだなぁ
彼の甘い声が心に響く
動かなくなった彼との会話を妄想することが、今の私が幸せを感じ取れる唯一の方法だった
「やっぱりこうやって話している時が一番楽しいね」
・・・
「もぉっ!本当だってのに…」
・・・
「やめてよ…照れるじゃんか」
・・・
「そう言ってくれて、私も嬉しい」
私だけが聴こえる甘い声とのお話が
今日も始まった
………
……
…
ひとしきり話した後、
私が帰りの準備をしていた時、
彼の声が響いた
『そうそう、今日ね、弟が初めて1人で見舞いをしてくれたんだ』
『いつもと違って母さんの声がなくてさ、1人できたんだろうなーってのは雰囲気でわかった
死ぬほど嬉しかったんだ…
弟がまだ半年も経って、自分から僕に会いにきてくれるなんてさ…最後にした会話は喧嘩だったのにさ…』
「いい弟じゃん!ガラにも合わずに涙ぐんじゃったりしたの~?なんてね!」
『ふふふっ、実はそうだったりね
それじゃ、また明日会いにきてね』
「また来るよ、いつまでも」
『嬉しい事言ってくれるね』
病室のドアを開け、帰りに着く
ルンルンと鼻歌を歌いながら
一連の会話が、エゴだと気付かぬように
ゆっくり、慎重に帰路につく
そして、今日も布団で考える
明日彼と何を話そう?
その日の夜、彼との会話の内容を考える前に、私は今日の彼との会話を何度も、何度も噛みしめるように反芻していた
『プリン、僕も食べてみたいなぁ…
『球技は嫌いだっただろう?
『今日、僕の弟がね…
『死ぬ程嬉しかったんだ…
…………
………
……
…
あれ…
何か、引っかかる
私は布団の中で、
明日彼に話す内容を考えながら、
その魚の小骨の様な違和感に取り憑かれていた
今日の会話は何か、いつもと圧倒的に違った…そう感じた。
小骨の様な違和感は、次第に大きくなり、私の思考は、完全にその違和感の謎を調査するモードへとシフトしていった
うーん…なんだろう
何か、何かがおかしい
いつもと違う事なんて…特に無かったハズなのに…
新作のプリンの話…
バレーボールが顔に突っ込んだ話…
新しいヘッドホンを買った話…
今日、彼に伝えた話を、さらに詳しくまとめてみる
…そういえば、今日、彼が最後に言っていた…弟…アレかなぁ、
正直、付き合っていた時、彼の家庭事情とか知らなかったし…
嬉しかったんだろうなぁ…
あれ以来、私は彼の家族に顔を合わせづらく、彼の弟の顔を思い出すのに少し時間がかかったが、
彼の家に遊びに行った時、
彼そっくりの顔に、眼鏡をかけていたまだ小学生かそこらの歳の、小さい子の事を思い出した
あの子が今日、1人で来たのか…
この病院はかなり偏屈なところに立っており、私も、高校から家までの最寄駅の間にその病院が無ければ、毎日通えるような距離では無い
あの小さな子が1人で来るのには、ちょっと頑張らなくてはならない
そっか…だから彼はちょっとうるっときた~なんて言ったのか…
…うん?
それってちょっとおかしくないか?
なんで彼は自分の感想を私に伝えれたの?
なんで彼しか知らない情報を喋れたの?
だって
だって
だって
彼は私の妄想なんだよ?
私が知らない事を話せるわけがないじゃない?
長い間自分につき続けた嘘をあっさり認めた後、
私はとんでもないことに気づいてしまった
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