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第一話: 異世界への扉
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「颯太、いつまで寝てるの! もう朝だよ!」
結城 柚希の透き通るような声が、天城 颯太の部屋に響いた。窓の外から差し込む朝の光が、カーテン越しに部屋を柔らかく照らしている。しかし、布団にくるまった颯太は動かない。
「あと五分…いや、十…」
「はいはい、またそれ。十回目の“あと五分”で、結局遅刻するのがお決まりなんだから。ほら!」
カーテンを勢いよく引き開けた柚希。茶色の髪が朝の光で輝き、外ハネのワンカールがぴょんと跳ねた。颯太は目を閉じたまま顔をしかめる。
「眩しいってば…!」
「眩しいのは当たり前でしょ。朝なんだから! ほら、制服ちゃんと着て。今日は体育がある日なんでしょ? 体操服忘れないようにね!」
柚希は勝手知ったる様子で颯太の部屋を片付け始めた。テーブルの上に散らばる漫画やゲーム機を手際よくまとめる姿は、まるで姉のようだ。
颯太は渋々布団から抜け出し、制服を身に付け始める。彼は逆立った黒髪を手で直しながら、ぶつぶつと文句を漏らしていた。
「毎朝毎朝、なんで柚希が俺の家まで迎えに来るんだよ。俺だって一人で起きられるってのに…」
「嘘つけぇい! 起きられた試しがないくせに。それに私が来なかったら、おばさんに怒られるのは私なんだからね!」
柚希は笑顔で言い返すが、どこか楽しそうだ。颯太はそれに気付いて、口元を少し歪めた。
「…まあいいけどさ。ありがとな、柚希。」
「ふふ、素直に感謝するなんて珍しいじゃない。どうしたの、熱でもある?」
颯太は無言でリュックを肩に掛けると、玄関へ向かった。柚希も後に続く。
***
二人が並んで歩く道は、いつも通りの静かな朝だった。近所の公園では、鳩が飛び交い、犬の散歩をする老人たちが軽い挨拶を交わしている。住宅街の角を曲がれば、学校の門が見えてくるはずだった。しかし、その瞬間だった。
突然、周囲の空気が震えた。耳鳴りのような音が二人の耳をつんざく。
「何だ…?」
颯太が立ち止まり、辺りを見回す。柚希も不安そうに彼の袖を掴む。
「颯太…これ、何かおかしいよ…」
その言葉の直後、地面が眩い光で包まれた。二人の足元に現れたのは、複雑な模様が描かれた魔法陣。光の輪が徐々に大きくなり、二人を飲み込んでいく。
「ちょ、ちょっと待て! これ何だよ!」
「分かるわけないでしょ! 颯太、手を離さないで!」
柚希は強く颯太の腕を掴むが、二人の体は引き寄せられるように宙に浮かび上がった。頭上に広がる眩しい光の中に、どこか別の世界が見える気がした。
「颯太…!」
柚希の声がだんだん遠ざかる。そして次の瞬間、二人の視界は完全に光に包まれた。
***
気が付いた時、颯太は冷たい石の床に倒れていた。頭を軽く振って周囲を見回す。そこは巨大な城の広間だった。高い天井には壮麗なシャンデリアが輝き、壁には絢爛な装飾が施されている。
「ここ…どこだ…?」
呆然とする颯太の隣で、柚希も目を覚ました。彼女も同じく驚いた様子で辺りを見回している。
「颯太、これ…夢?」
「分からない。でも…本物みたいだな。」
すると、重厚な扉が開き、何人かの人影が現れた。金色の鎧をまとった衛兵たちが整然と並び、その後ろには紫色のローブを着た魔法使いらしき人物が立っていた。そしてその中央には、一人の少女がいた。
「ようこそ、召喚世界メルセシアへ。」
純白のドレスに身を包み、薄紫髪の長い髪を揺らすその少女は、まるで絵画の中から抜け出してきたかのような美しさだった。頭には小さな王冠が輝き、その表情には気品が漂っている。
「私の名はアルゼリーテ・ヴェルランディア。ここヴェルランディア城の王女であり、王国を治める者です。突然ではありますが、あなた方にお願いがあります。」
颯太と柚希は言葉を失った。見知らぬ世界、見知らぬ人々。しかし、アルゼリーテの真剣な眼差しは二人に何か特別な運命が待ち受けていることを予感させた。
「お願いって…どういうことだ?」
颯太が口を開いた瞬間、背後から鎧を着た一人の男が近づいてきた。
「アルゼリーテ姫。彼らをナイツに迎え入れるための儀式を始めるべきです。」
それは逞しい体躯と鋭い眼光を持つ男だった。彼の名はリューガ・デイン。後に颯太の最大の指導者となる人物だ。
「ナイツ…?」
颯太が聞き返すと、リューガは静かに頷いた。
「君たちには、この世界を救うための戦士『ドラゴンナイツ』になってもらう。」
「ドラゴンナイツ…?」
颯太は眉をひそめながらその言葉を繰り返した。目の前のリューガという男はまるで見透かすような鋭い眼差しで颯太を見つめている。一方、柚希は目の前の状況に困惑しつつも、真剣な表情でアルゼリーテ姫の言葉に耳を傾けていた。
「あなたたちには、この世界を脅かす脅威と戦う力があります。ですが、その力を完全に解放するには、私たちの力が必要なのです。」
アルゼリーテは静かに手を伸ばし、広間の中央に浮かぶ青白い光の玉を指差した。
「これは『魂の解放』の儀式と呼ばれるものです。この儀式を通じて、あなた方はナイツとしての力を得ることができるでしょう。」
「ちょ、ちょっと待て!」
颯太は思わず声を荒げた。
「俺たちはただの高校生なんだぞ! そんな…いきなり戦士になれだなんて、無茶苦茶だろ!」
「確かに無茶だな。」
リューガが肩をすくめながら答えた。その顔には微かに皮肉の色が浮かんでいる。
「だが、異世界に召喚された時点でお前たちは普通の高校生じゃない。戦うか逃げるか――選ぶのはお前たちだ。」
颯太は言葉を失った。自分が立っているのは確かに見慣れた教室でもなければ、平和な日本の街でもない。この場所では、自分たちの常識は通用しないのだ。
「でも…」
言葉に詰まる颯太の隣で、柚希が一歩前に出た。その表情には迷いがあったが、それ以上に何か強い決意が垣間見えた。
「姫様。」
彼女の声は少し震えていたが、それでもはっきりとした響きを持っていた。
「私たちがその…ナイツになることで、この世界の人たちを守れるのなら…その力を貸してください。」
「柚希…!」
颯太は驚いた顔で彼女を見つめた。しかし柚希は彼に視線を向けず、ただアルゼリーテを真っ直ぐに見据えている。
「柚希がやるなら、俺もやる。」
颯太は拳を握りしめ、柚希の隣に立った。
「こんな状況、納得いかないけど…俺たちがここに呼ばれた理由がそれなら、やってやるさ!」
アルゼリーテは二人の決意を見て微笑み、手を掲げた。
「ありがとう。あなたたちの勇気に感謝します。それでは、儀式を始めましょう。」
***
広間の中央に浮かぶ青白い光の玉が急激に輝きを増した。それは二人を包み込むように広がり、彼らの身体をじわりと温めていく。不思議な感覚が全身を駆け巡り、二人の心臓が力強く脈打つのを感じた。
「これは…」
颯太の身体から、赤黒い光の粒が溢れ出した。それは彼の周囲で渦を巻きながら形を変え、漆黒の鎧へと姿を変えていく。その鎧は鋭い爪のような形状をしたガントレットを持ち、肩には竜の翼を模した装飾が施されていた。
「天城颯太、君の力は『ドラゴン・クロー』。その爪で敵を切り裂き、空を駆け抜けろ。」
リューガの言葉に、颯太は驚きながらも新しい力を実感していた。一方、柚希もまた淡いピンク色の光に包まれていた。
「これが…私の力…?」
彼女の鎧は軽やかで柔らかい曲線を持ち、胸元にはハートを象った紋章が輝いていた。
「結城柚希、君の力は『ドラゴン・ハート』。その心で仲間を守り、希望を灯せ。」
「ドラゴン・ハート…」
柚希は自分の胸元に触れながら呟いた。颯太がその様子を見て声を掛ける。
「似合ってるじゃないか、柚希。」
「颯太だって…まあ、悪くないよ。」
二人が微笑み合った瞬間、リューガが鋭い声で言った。
「話は後だ。すぐに訓練を始めるぞ。お前たちには覚えることが山ほどある。」
「えっ、もう?」
颯太が困惑する間もなく、リューガは剣を抜き、軽く振った。その動きだけで、空気が切り裂かれるような感覚が二人を襲った。
「これからお前たちは、ドラゴンナイツとしての技術と覚悟を叩き込まれる。時間はない。敵は既に動き出している。」
「敵…?」
颯太の問いに、リューガは重々しく頷いた。
「そうだ。この世界を滅ぼそうとする存在――天空城ガーデに潜む悪魔たちだ。」
その言葉を聞いた瞬間、颯太と柚希の背筋に冷たいものが走った。戦う力を得たばかりの二人にとって、これが新たな運命の始まりであることを、まだ完全には理解していなかった。
結城 柚希の透き通るような声が、天城 颯太の部屋に響いた。窓の外から差し込む朝の光が、カーテン越しに部屋を柔らかく照らしている。しかし、布団にくるまった颯太は動かない。
「あと五分…いや、十…」
「はいはい、またそれ。十回目の“あと五分”で、結局遅刻するのがお決まりなんだから。ほら!」
カーテンを勢いよく引き開けた柚希。茶色の髪が朝の光で輝き、外ハネのワンカールがぴょんと跳ねた。颯太は目を閉じたまま顔をしかめる。
「眩しいってば…!」
「眩しいのは当たり前でしょ。朝なんだから! ほら、制服ちゃんと着て。今日は体育がある日なんでしょ? 体操服忘れないようにね!」
柚希は勝手知ったる様子で颯太の部屋を片付け始めた。テーブルの上に散らばる漫画やゲーム機を手際よくまとめる姿は、まるで姉のようだ。
颯太は渋々布団から抜け出し、制服を身に付け始める。彼は逆立った黒髪を手で直しながら、ぶつぶつと文句を漏らしていた。
「毎朝毎朝、なんで柚希が俺の家まで迎えに来るんだよ。俺だって一人で起きられるってのに…」
「嘘つけぇい! 起きられた試しがないくせに。それに私が来なかったら、おばさんに怒られるのは私なんだからね!」
柚希は笑顔で言い返すが、どこか楽しそうだ。颯太はそれに気付いて、口元を少し歪めた。
「…まあいいけどさ。ありがとな、柚希。」
「ふふ、素直に感謝するなんて珍しいじゃない。どうしたの、熱でもある?」
颯太は無言でリュックを肩に掛けると、玄関へ向かった。柚希も後に続く。
***
二人が並んで歩く道は、いつも通りの静かな朝だった。近所の公園では、鳩が飛び交い、犬の散歩をする老人たちが軽い挨拶を交わしている。住宅街の角を曲がれば、学校の門が見えてくるはずだった。しかし、その瞬間だった。
突然、周囲の空気が震えた。耳鳴りのような音が二人の耳をつんざく。
「何だ…?」
颯太が立ち止まり、辺りを見回す。柚希も不安そうに彼の袖を掴む。
「颯太…これ、何かおかしいよ…」
その言葉の直後、地面が眩い光で包まれた。二人の足元に現れたのは、複雑な模様が描かれた魔法陣。光の輪が徐々に大きくなり、二人を飲み込んでいく。
「ちょ、ちょっと待て! これ何だよ!」
「分かるわけないでしょ! 颯太、手を離さないで!」
柚希は強く颯太の腕を掴むが、二人の体は引き寄せられるように宙に浮かび上がった。頭上に広がる眩しい光の中に、どこか別の世界が見える気がした。
「颯太…!」
柚希の声がだんだん遠ざかる。そして次の瞬間、二人の視界は完全に光に包まれた。
***
気が付いた時、颯太は冷たい石の床に倒れていた。頭を軽く振って周囲を見回す。そこは巨大な城の広間だった。高い天井には壮麗なシャンデリアが輝き、壁には絢爛な装飾が施されている。
「ここ…どこだ…?」
呆然とする颯太の隣で、柚希も目を覚ました。彼女も同じく驚いた様子で辺りを見回している。
「颯太、これ…夢?」
「分からない。でも…本物みたいだな。」
すると、重厚な扉が開き、何人かの人影が現れた。金色の鎧をまとった衛兵たちが整然と並び、その後ろには紫色のローブを着た魔法使いらしき人物が立っていた。そしてその中央には、一人の少女がいた。
「ようこそ、召喚世界メルセシアへ。」
純白のドレスに身を包み、薄紫髪の長い髪を揺らすその少女は、まるで絵画の中から抜け出してきたかのような美しさだった。頭には小さな王冠が輝き、その表情には気品が漂っている。
「私の名はアルゼリーテ・ヴェルランディア。ここヴェルランディア城の王女であり、王国を治める者です。突然ではありますが、あなた方にお願いがあります。」
颯太と柚希は言葉を失った。見知らぬ世界、見知らぬ人々。しかし、アルゼリーテの真剣な眼差しは二人に何か特別な運命が待ち受けていることを予感させた。
「お願いって…どういうことだ?」
颯太が口を開いた瞬間、背後から鎧を着た一人の男が近づいてきた。
「アルゼリーテ姫。彼らをナイツに迎え入れるための儀式を始めるべきです。」
それは逞しい体躯と鋭い眼光を持つ男だった。彼の名はリューガ・デイン。後に颯太の最大の指導者となる人物だ。
「ナイツ…?」
颯太が聞き返すと、リューガは静かに頷いた。
「君たちには、この世界を救うための戦士『ドラゴンナイツ』になってもらう。」
「ドラゴンナイツ…?」
颯太は眉をひそめながらその言葉を繰り返した。目の前のリューガという男はまるで見透かすような鋭い眼差しで颯太を見つめている。一方、柚希は目の前の状況に困惑しつつも、真剣な表情でアルゼリーテ姫の言葉に耳を傾けていた。
「あなたたちには、この世界を脅かす脅威と戦う力があります。ですが、その力を完全に解放するには、私たちの力が必要なのです。」
アルゼリーテは静かに手を伸ばし、広間の中央に浮かぶ青白い光の玉を指差した。
「これは『魂の解放』の儀式と呼ばれるものです。この儀式を通じて、あなた方はナイツとしての力を得ることができるでしょう。」
「ちょ、ちょっと待て!」
颯太は思わず声を荒げた。
「俺たちはただの高校生なんだぞ! そんな…いきなり戦士になれだなんて、無茶苦茶だろ!」
「確かに無茶だな。」
リューガが肩をすくめながら答えた。その顔には微かに皮肉の色が浮かんでいる。
「だが、異世界に召喚された時点でお前たちは普通の高校生じゃない。戦うか逃げるか――選ぶのはお前たちだ。」
颯太は言葉を失った。自分が立っているのは確かに見慣れた教室でもなければ、平和な日本の街でもない。この場所では、自分たちの常識は通用しないのだ。
「でも…」
言葉に詰まる颯太の隣で、柚希が一歩前に出た。その表情には迷いがあったが、それ以上に何か強い決意が垣間見えた。
「姫様。」
彼女の声は少し震えていたが、それでもはっきりとした響きを持っていた。
「私たちがその…ナイツになることで、この世界の人たちを守れるのなら…その力を貸してください。」
「柚希…!」
颯太は驚いた顔で彼女を見つめた。しかし柚希は彼に視線を向けず、ただアルゼリーテを真っ直ぐに見据えている。
「柚希がやるなら、俺もやる。」
颯太は拳を握りしめ、柚希の隣に立った。
「こんな状況、納得いかないけど…俺たちがここに呼ばれた理由がそれなら、やってやるさ!」
アルゼリーテは二人の決意を見て微笑み、手を掲げた。
「ありがとう。あなたたちの勇気に感謝します。それでは、儀式を始めましょう。」
***
広間の中央に浮かぶ青白い光の玉が急激に輝きを増した。それは二人を包み込むように広がり、彼らの身体をじわりと温めていく。不思議な感覚が全身を駆け巡り、二人の心臓が力強く脈打つのを感じた。
「これは…」
颯太の身体から、赤黒い光の粒が溢れ出した。それは彼の周囲で渦を巻きながら形を変え、漆黒の鎧へと姿を変えていく。その鎧は鋭い爪のような形状をしたガントレットを持ち、肩には竜の翼を模した装飾が施されていた。
「天城颯太、君の力は『ドラゴン・クロー』。その爪で敵を切り裂き、空を駆け抜けろ。」
リューガの言葉に、颯太は驚きながらも新しい力を実感していた。一方、柚希もまた淡いピンク色の光に包まれていた。
「これが…私の力…?」
彼女の鎧は軽やかで柔らかい曲線を持ち、胸元にはハートを象った紋章が輝いていた。
「結城柚希、君の力は『ドラゴン・ハート』。その心で仲間を守り、希望を灯せ。」
「ドラゴン・ハート…」
柚希は自分の胸元に触れながら呟いた。颯太がその様子を見て声を掛ける。
「似合ってるじゃないか、柚希。」
「颯太だって…まあ、悪くないよ。」
二人が微笑み合った瞬間、リューガが鋭い声で言った。
「話は後だ。すぐに訓練を始めるぞ。お前たちには覚えることが山ほどある。」
「えっ、もう?」
颯太が困惑する間もなく、リューガは剣を抜き、軽く振った。その動きだけで、空気が切り裂かれるような感覚が二人を襲った。
「これからお前たちは、ドラゴンナイツとしての技術と覚悟を叩き込まれる。時間はない。敵は既に動き出している。」
「敵…?」
颯太の問いに、リューガは重々しく頷いた。
「そうだ。この世界を滅ぼそうとする存在――天空城ガーデに潜む悪魔たちだ。」
その言葉を聞いた瞬間、颯太と柚希の背筋に冷たいものが走った。戦う力を得たばかりの二人にとって、これが新たな運命の始まりであることを、まだ完全には理解していなかった。
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