20 / 45
あなたが知らない、あなたが居なくなったカリスター侯爵家 Side story マイルズ・カリスター4
エミーリアの顔を見たことがない人を探すことが難しいこの国で、実物のエミーリアを探せない。
そんな馬鹿なことがあるのだろうかと、マイルズもルーベンも思っていた。
しかしエミーリアが消息を絶ってから、既に数日が経過している。侯爵家が誇る私兵だけではなく、裏の仕事をする者たちまで動員しているというのに。
エミーリアの令嬢としての未来を考え行方不明であることを公表せずに探し続けたが、時間的にそれも厳しくなり始めている。
「どうだった、姉上?」
表立っては平静を装う為にも、アリアネルは招かれた茶会への参加を続けていた。けれど、それはアリアネルに出来るエミーリアを探す手立てでもあった。
仮にどこかの貴族家が保護しているのならば、茶会等を利用して接触してくる可能性があると思ったのだ。保護した当日はまだ知らなかったとしても、既にエミーリアとアルフレドの婚約が破棄されたことは周知の事実。エミーリアを保護していたと恩を売ることで、カリスター侯爵家へ金銭要求なり事業提携を持ちかけてくる可能性がある。
「言葉の裏の裏まで探ったけど、今日のお茶会に参加していた家はお姉様が行方不明なことすら知らないわね」
裏の裏は表だし、どうして知らないと断言出来るのかその根拠をアリアネルに尋ねたいところだが、マイルズはいつものスルーで会話を先に進めた。余計なことを言ってアリアネルに揚げ足を取るなとか、屁理屈だと言われ会話が逸れるのだけは避けたかったのだ。
「でも、王宮を出た後、貴族街を短時間に抜けることなど出来ません。第一、お姉様がお金を持っていたかも怪しいのに」
「そうだな、マイルズが言うように、父上が王宮に向かうまでの時間でお姉様が平民街まで辿り着くのは難しいだろうな」
「たまたま荷馬車が通ったとか。もしくは、使用人通用口から出たとかだったのかなぁ」
「そんなことは既に侯爵家の私兵達が調べ終わっているだろう」
「でも、あんなに目立つ容姿をしているのに何の目撃情報もないなんておかしいじゃないですか」
「おかしいのではなく、そうなっているのではないかしら?」
マイルズもルーベンもアリアネルの発言を理解出来ないことが良くある。こんなシリアスな時にも相変わらずそれは健在で、つい溜息を吐きたくなってしまう。
「どういう意味ですか、姉上?」
いつもは無言を貫き通すルーベンが、珍しくアリアネルの意見を掘り下げようとした。あまりの手詰まり感にとうとうアリアネルを頼ったようだ。
「わたしたちはお姉様が行方不明になったと思っているけれど、実はお姉様が自ら行方を晦ましたのではないかしら。だから、何の情報もないのよ」
「でも、聞く限りじゃ、その場で決まった婚約破棄に王宮退去なんだから無理があるんじゃない」
「マイルズ、あなた頭が固いわね。もっと柔軟に。確か婚約破棄に至る経緯を記録したのはランカラント子爵よね。お父様やお母様に嫌味を言う前に、ランカラント子爵にどうしてカリスター侯爵家に教えてくれなかったのか聞きましょう」
「姉上は頭が柔軟過ぎる。今、三大公爵家の彼らがどれだけ忙しいか知らないのですか?無理に決まっています、面会していただくのは」
「そうだよ。それにそんな質問をしたら、公爵家にお姉様が行方不明だと告げるようなものだ」
結局三人に出来ることはエミーリアの無事を願うことくらいしかなかった。
その願いが通じたのかは怪しいが、数日後三人はエミーリアが別の国にいると父から教えられたのだった。
そんな馬鹿なことがあるのだろうかと、マイルズもルーベンも思っていた。
しかしエミーリアが消息を絶ってから、既に数日が経過している。侯爵家が誇る私兵だけではなく、裏の仕事をする者たちまで動員しているというのに。
エミーリアの令嬢としての未来を考え行方不明であることを公表せずに探し続けたが、時間的にそれも厳しくなり始めている。
「どうだった、姉上?」
表立っては平静を装う為にも、アリアネルは招かれた茶会への参加を続けていた。けれど、それはアリアネルに出来るエミーリアを探す手立てでもあった。
仮にどこかの貴族家が保護しているのならば、茶会等を利用して接触してくる可能性があると思ったのだ。保護した当日はまだ知らなかったとしても、既にエミーリアとアルフレドの婚約が破棄されたことは周知の事実。エミーリアを保護していたと恩を売ることで、カリスター侯爵家へ金銭要求なり事業提携を持ちかけてくる可能性がある。
「言葉の裏の裏まで探ったけど、今日のお茶会に参加していた家はお姉様が行方不明なことすら知らないわね」
裏の裏は表だし、どうして知らないと断言出来るのかその根拠をアリアネルに尋ねたいところだが、マイルズはいつものスルーで会話を先に進めた。余計なことを言ってアリアネルに揚げ足を取るなとか、屁理屈だと言われ会話が逸れるのだけは避けたかったのだ。
「でも、王宮を出た後、貴族街を短時間に抜けることなど出来ません。第一、お姉様がお金を持っていたかも怪しいのに」
「そうだな、マイルズが言うように、父上が王宮に向かうまでの時間でお姉様が平民街まで辿り着くのは難しいだろうな」
「たまたま荷馬車が通ったとか。もしくは、使用人通用口から出たとかだったのかなぁ」
「そんなことは既に侯爵家の私兵達が調べ終わっているだろう」
「でも、あんなに目立つ容姿をしているのに何の目撃情報もないなんておかしいじゃないですか」
「おかしいのではなく、そうなっているのではないかしら?」
マイルズもルーベンもアリアネルの発言を理解出来ないことが良くある。こんなシリアスな時にも相変わらずそれは健在で、つい溜息を吐きたくなってしまう。
「どういう意味ですか、姉上?」
いつもは無言を貫き通すルーベンが、珍しくアリアネルの意見を掘り下げようとした。あまりの手詰まり感にとうとうアリアネルを頼ったようだ。
「わたしたちはお姉様が行方不明になったと思っているけれど、実はお姉様が自ら行方を晦ましたのではないかしら。だから、何の情報もないのよ」
「でも、聞く限りじゃ、その場で決まった婚約破棄に王宮退去なんだから無理があるんじゃない」
「マイルズ、あなた頭が固いわね。もっと柔軟に。確か婚約破棄に至る経緯を記録したのはランカラント子爵よね。お父様やお母様に嫌味を言う前に、ランカラント子爵にどうしてカリスター侯爵家に教えてくれなかったのか聞きましょう」
「姉上は頭が柔軟過ぎる。今、三大公爵家の彼らがどれだけ忙しいか知らないのですか?無理に決まっています、面会していただくのは」
「そうだよ。それにそんな質問をしたら、公爵家にお姉様が行方不明だと告げるようなものだ」
結局三人に出来ることはエミーリアの無事を願うことくらいしかなかった。
その願いが通じたのかは怪しいが、数日後三人はエミーリアが別の国にいると父から教えられたのだった。
あなたにおすすめの小説
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
姉と妹の常識のなさは父親譲りのようですが、似てない私は養子先で運命の人と再会できました
珠宮さくら
恋愛
スヴェーア国の子爵家の次女として生まれたシーラ・ヘイデンスタムは、母親の姉と同じ髪色をしていたことで、母親に何かと昔のことや隣国のことを話して聞かせてくれていた。
そんな最愛の母親の死後、シーラは父親に疎まれ、姉と妹から散々な目に合わされることになり、婚約者にすら誤解されて婚約を破棄することになって、居場所がなくなったシーラを助けてくれたのは、伯母のエルヴィーラだった。
同じ髪色をしている伯母夫妻の養子となってからのシーラは、姉と妹以上に実の父親がどんなに非常識だったかを知ることになるとは思いもしなかった。
五度目の人生でも「君を愛することはない」と言われたので、私も愛を捨てました
たると
恋愛
「ルチア、私は君を愛することはない。この婚約は単なる義務だ」
冷徹な公爵、アルベルトの声が夜会会場の片隅で響く。
これで、五度目だ。
私は深く、そして軽やかに一礼した。
「承知いたしました。では、今後はそのように」
これまでは泣いて縋り、彼を振り向かせようと必死に尽くしてきた。
だが、死に戻りを五回も繰り返せば、流石に飽きる。
私は彼を愛することを、きっぱりと辞めた。
傷物令嬢は魔法使いの力を借りて婚約者を幸せにしたい
棗
恋愛
ローゼライト=シーラデンの額には傷がある。幼い頃、幼馴染のラルスに負わされた傷で責任を取る為に婚約が結ばれた。
しかしローゼライトは知っている。ラルスには他に愛する人がいると。この婚約はローゼライトの額に傷を負わせてしまったが為の婚約で、ラルスの気持ちが自分にはないと。
そこで、子供の時から交流のある魔法使いダヴィデにラルスとの婚約解消をしたいと依頼をするのであった。
邪魔者はどちらでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
レモンズ侯爵家の長女である私は、幼い頃に母が私を捨てて駆け落ちしたということで、父や継母、連れ子の弟と腹違いの妹に使用人扱いされていた。
私の境遇に同情してくれる使用人が多く、メゲずに私なりに楽しい日々を過ごしていた。
ある日、そんな私に婚約者ができる。
相手は遊び人で有名な侯爵家の次男だった。
初顔合わせの日、婚約者になったボルバー・ズラン侯爵令息は、彼の恋人だという隣国の公爵夫人を連れてきた。
そこで、私は第二王子のセナ殿下と出会う。
その日から、私の生活は一変して――
※過去作の改稿版になります。
※ラブコメパートとシリアスパートが混在します。
※独特の異世界の世界観で、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。