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あなたが知らないあなたの母のこと Side story オスカー・イスカラング7
シリル・マロスレッド、現公爵夫妻の長子でイザベラの六歳上の兄。全寮制の貴族学院卒業後は第二王子の遊学に随行し二つの友好国で更なる勉学に勤しんだとされている。表向きは。
では、その裏で何をしていたのか。答えは簡単、力を付け続けていた、第二王子と共に。
二人には共通目的があった。これ以上、王家や公爵家に生まれた娘に不幸な結婚をさせたくないという。イザベラの姉であるシリルのもう一人の妹は、外交が結ばれていない国へ挨拶替わりに嫁がされた。まるで人質のように。
王家に生まれた娘達も外交の道具であることには変わりない。そう、スプラルタ王国の王家と公爵家において娘は道具という考え方が顕著だったのだ。どんな未来が待っているのか想像出来ようと、国の利益が最優先だった。
そんな国だからこそ、彼の国の王は『美しい小鳥を自分の手で育てたい』という馬鹿な希望をスプラルタ国王にチラつかせたのだ。王家の直系の小鳥は難しくても、どうにかしてくれるだろうと踏んで。
他国の王達も知っている、スプラルタ国王の欲を満たすものを持っていれば素晴らしい対価が得られると。
第二王子とシリルはそれを壊したかった。シリルにおいては、イザベラが十五歳になる前に。仮令それが不可能に近くても、何らかの綻びを得たかった。
ところが期せずして婚約者だった自分達の父親より年上の王の崩御。シリルは人知れずその知らせに喜んだ。
しかし、それが裏目に出てしまった。イザベラの新たな婚約者が二歳年下と聞いて、まともな婚約に変わったと思ってしまったのだ。だから、もっと力を付けようと国に帰るのが遅れた。
戻った時にはヘーゼルダイン侯爵に連なる者達の撒いた噂が更に酷いものとなり、イザベラを地の底まで叩きつけていた。
「何故、父上も母上もイザベラを守らないのだ。ここにはお前たちだけ、何を言っても許す。だから教えて欲しい」
シリルは公爵家に戻ると直ぐに、イザベラの侍女と護衛を集め事実確認を行った。どんな小さなことでも良いとイザベラに関する情報を一つ一つ聞いたのだ。
「どの噂にもマクスウェル殿下が関わるから父上も母上も何も言わないということか。国王だけでなく、王子の顔色までも窺うとはご苦労なことだ」
シリルは聞いた内容を精査することを忘れない。そして、掘り下げることも。更には、そのことで得をする人物と何が動くかも。
「イザベラ、辛い時に傍にいてあげられなくてすまない」
「辛くはありません。寧ろ、悪評のお陰で結婚しなくても済むのではと思っています」
「そうだね…」
口ではそう言ったもののあの両親のこと、次の使い道を模索しているところだろうとシリルは思った。そこに国王が加われば、イザベラの未来は再び閉ざされる。
五歳で始まった元婚約者からの教育という名の馬鹿げた要求。まともな幼少期を送ることが出来なかったイザベラに、せめてこれからの時間で自分を取り戻してもらいたいとシリルは思った。
イザベラとシリルのお茶の時間が終わった時、たまたまその日護衛として傍に控えていたオスカーは『ちょっといい?』とシリルに呼び出された。
それはシリルがオスカーを個人として認識した初めての時だった。まさか、その後長い付き合いが控えているとは二人共夢にも思わなかっただろう。
では、その裏で何をしていたのか。答えは簡単、力を付け続けていた、第二王子と共に。
二人には共通目的があった。これ以上、王家や公爵家に生まれた娘に不幸な結婚をさせたくないという。イザベラの姉であるシリルのもう一人の妹は、外交が結ばれていない国へ挨拶替わりに嫁がされた。まるで人質のように。
王家に生まれた娘達も外交の道具であることには変わりない。そう、スプラルタ王国の王家と公爵家において娘は道具という考え方が顕著だったのだ。どんな未来が待っているのか想像出来ようと、国の利益が最優先だった。
そんな国だからこそ、彼の国の王は『美しい小鳥を自分の手で育てたい』という馬鹿な希望をスプラルタ国王にチラつかせたのだ。王家の直系の小鳥は難しくても、どうにかしてくれるだろうと踏んで。
他国の王達も知っている、スプラルタ国王の欲を満たすものを持っていれば素晴らしい対価が得られると。
第二王子とシリルはそれを壊したかった。シリルにおいては、イザベラが十五歳になる前に。仮令それが不可能に近くても、何らかの綻びを得たかった。
ところが期せずして婚約者だった自分達の父親より年上の王の崩御。シリルは人知れずその知らせに喜んだ。
しかし、それが裏目に出てしまった。イザベラの新たな婚約者が二歳年下と聞いて、まともな婚約に変わったと思ってしまったのだ。だから、もっと力を付けようと国に帰るのが遅れた。
戻った時にはヘーゼルダイン侯爵に連なる者達の撒いた噂が更に酷いものとなり、イザベラを地の底まで叩きつけていた。
「何故、父上も母上もイザベラを守らないのだ。ここにはお前たちだけ、何を言っても許す。だから教えて欲しい」
シリルは公爵家に戻ると直ぐに、イザベラの侍女と護衛を集め事実確認を行った。どんな小さなことでも良いとイザベラに関する情報を一つ一つ聞いたのだ。
「どの噂にもマクスウェル殿下が関わるから父上も母上も何も言わないということか。国王だけでなく、王子の顔色までも窺うとはご苦労なことだ」
シリルは聞いた内容を精査することを忘れない。そして、掘り下げることも。更には、そのことで得をする人物と何が動くかも。
「イザベラ、辛い時に傍にいてあげられなくてすまない」
「辛くはありません。寧ろ、悪評のお陰で結婚しなくても済むのではと思っています」
「そうだね…」
口ではそう言ったもののあの両親のこと、次の使い道を模索しているところだろうとシリルは思った。そこに国王が加われば、イザベラの未来は再び閉ざされる。
五歳で始まった元婚約者からの教育という名の馬鹿げた要求。まともな幼少期を送ることが出来なかったイザベラに、せめてこれからの時間で自分を取り戻してもらいたいとシリルは思った。
イザベラとシリルのお茶の時間が終わった時、たまたまその日護衛として傍に控えていたオスカーは『ちょっといい?』とシリルに呼び出された。
それはシリルがオスカーを個人として認識した初めての時だった。まさか、その後長い付き合いが控えているとは二人共夢にも思わなかっただろう。
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