<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐

文字の大きさ
33 / 45

あなたが知らないあなたの母のこと Side story オスカー・イスカラング7

シリル・マロスレッド、現公爵夫妻の長子でイザベラの六歳上の兄。全寮制の貴族学院卒業後は第二王子の遊学に随行し二つの友好国で更なる勉学に勤しんだとされている。表向きは。
では、その裏で何をしていたのか。答えは簡単、力を付け続けていた、第二王子と共に。

二人には共通目的があった。これ以上、王家や公爵家に生まれた娘に不幸な結婚をさせたくないという。イザベラの姉であるシリルのもう一人の妹は、外交が結ばれていない国へ挨拶替わりに嫁がされた。まるで人質のように。

王家に生まれた娘達も外交の道具であることには変わりない。そう、スプラルタ王国の王家と公爵家において娘は道具という考え方が顕著だったのだ。どんな未来が待っているのか想像出来ようと、国の利益が最優先だった。
そんな国だからこそ、彼の国の王は『美しい小鳥を自分の手で育てたい』という馬鹿な希望をスプラルタ国王にチラつかせたのだ。王家の直系の小鳥は難しくても、どうにかしてくれるだろうと踏んで。

他国の王達も知っている、スプラルタ国王の欲を満たすものを持っていれば素晴らしい対価が得られると。

第二王子とシリルはそれを壊したかった。シリルにおいては、イザベラが十五歳になる前に。仮令それが不可能に近くても、何らかの綻びを得たかった。
ところが期せずして婚約者だった自分達の父親より年上の王の崩御。シリルは人知れずその知らせに喜んだ。

しかし、それが裏目に出てしまった。イザベラの新たな婚約者が二歳年下と聞いて、まともな婚約に変わったと思ってしまったのだ。だから、もっと力を付けようと国に帰るのが遅れた。

戻った時にはヘーゼルダイン侯爵に連なる者達の撒いた噂が更に酷いものとなり、イザベラを地の底まで叩きつけていた。


「何故、父上も母上もイザベラを守らないのだ。ここにはお前たちだけ、何を言っても許す。だから教えて欲しい」

シリルは公爵家に戻ると直ぐに、イザベラの侍女と護衛を集め事実確認を行った。どんな小さなことでも良いとイザベラに関する情報を一つ一つ聞いたのだ。

「どの噂にもマクスウェル殿下が関わるから父上も母上も何も言わないということか。国王だけでなく、王子の顔色までも窺うとはご苦労なことだ」

シリルは聞いた内容を精査することを忘れない。そして、掘り下げることも。更には、そのことで得をする人物と何が動くかも。


「イザベラ、辛い時に傍にいてあげられなくてすまない」
「辛くはありません。寧ろ、悪評のお陰で結婚しなくても済むのではと思っています」
「そうだね…」

口ではそう言ったもののあの両親のこと、次の使い道を模索しているところだろうとシリルは思った。そこに国王が加われば、イザベラの未来は再び閉ざされる。

五歳で始まった元婚約者からの教育という名の馬鹿げた要求。まともな幼少期を送ることが出来なかったイザベラに、せめてこれからの時間で自分を取り戻してもらいたいとシリルは思った。



イザベラとシリルのお茶の時間が終わった時、たまたまその日護衛として傍に控えていたオスカーは『ちょっといい?』とシリルに呼び出された。

それはシリルがオスカーを個人として認識した初めての時だった。まさか、その後長い付き合いが控えているとは二人共夢にも思わなかっただろう。
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

姉と妹の常識のなさは父親譲りのようですが、似てない私は養子先で運命の人と再会できました

珠宮さくら
恋愛
スヴェーア国の子爵家の次女として生まれたシーラ・ヘイデンスタムは、母親の姉と同じ髪色をしていたことで、母親に何かと昔のことや隣国のことを話して聞かせてくれていた。 そんな最愛の母親の死後、シーラは父親に疎まれ、姉と妹から散々な目に合わされることになり、婚約者にすら誤解されて婚約を破棄することになって、居場所がなくなったシーラを助けてくれたのは、伯母のエルヴィーラだった。 同じ髪色をしている伯母夫妻の養子となってからのシーラは、姉と妹以上に実の父親がどんなに非常識だったかを知ることになるとは思いもしなかった。

五度目の人生でも「君を愛することはない」と言われたので、私も愛を捨てました

たると
恋愛
「ルチア、私は君を愛することはない。この婚約は単なる義務だ」 冷徹な公爵、アルベルトの声が夜会会場の片隅で響く。 これで、五度目だ。 私は深く、そして軽やかに一礼した。 「承知いたしました。では、今後はそのように」 これまでは泣いて縋り、彼を振り向かせようと必死に尽くしてきた。 だが、死に戻りを五回も繰り返せば、流石に飽きる。 私は彼を愛することを、きっぱりと辞めた。

傷物令嬢は魔法使いの力を借りて婚約者を幸せにしたい

恋愛
ローゼライト=シーラデンの額には傷がある。幼い頃、幼馴染のラルスに負わされた傷で責任を取る為に婚約が結ばれた。 しかしローゼライトは知っている。ラルスには他に愛する人がいると。この婚約はローゼライトの額に傷を負わせてしまったが為の婚約で、ラルスの気持ちが自分にはないと。 そこで、子供の時から交流のある魔法使いダヴィデにラルスとの婚約解消をしたいと依頼をするのであった。

邪魔者はどちらでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
レモンズ侯爵家の長女である私は、幼い頃に母が私を捨てて駆け落ちしたということで、父や継母、連れ子の弟と腹違いの妹に使用人扱いされていた。 私の境遇に同情してくれる使用人が多く、メゲずに私なりに楽しい日々を過ごしていた。 ある日、そんな私に婚約者ができる。 相手は遊び人で有名な侯爵家の次男だった。 初顔合わせの日、婚約者になったボルバー・ズラン侯爵令息は、彼の恋人だという隣国の公爵夫人を連れてきた。 そこで、私は第二王子のセナ殿下と出会う。 その日から、私の生活は一変して―― ※過去作の改稿版になります。 ※ラブコメパートとシリアスパートが混在します。 ※独特の異世界の世界観で、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

【完】瓶底メガネの聖女様

らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。 傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。 実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。 そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

婚約破棄!ついでに王子をどん底に突き落とす。

鏡おもち
恋愛
公爵令嬢パルメは、王立学院のパーティーで第一王子リュントから公開婚約破棄を突きつけられる。しかし、周囲の同情をよそにパルメは歓喜した。