オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではございますが~

五十嵐

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とある国の王都1

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形式的な国王との謁見が終わり、馬車に乗り込むとテレンスは早々にコートを脱ぎ去りシャツを着替えた。あまり町の食堂で浮く格好は避けたかったのだ。帯同している外交官達もその辺は良く心得ている。シャツの着替えというだけで、町の中に溶け込めるものを持ってきたのだから。

問題はどの店に入るか。テレンスは御者へ地元の料理店が並ぶエリアで降ろすよう伝えると、その先は直感に任せようと決めたのだった。

町の様子を眺めながら辿り着いたのは上でも下でもなさそうな食堂。何かあってはいけないと付いてきた護衛は、一時間後くらいに戻って来ると言い去って行った。その辺の気遣いは言わなくてもしてくれるタイプで助かったとテレンス達は思った。これが、このエリアもこの店も問題があるようならば、そんな気遣いはしてもらえなかっただろうが。

店に入り通された席に着くと、テレンス達は愛想の良い給仕係にお勧めは何か質問した。
「あら、お兄さん達は外国から来たのね」
「分かりますか?」
「勿論。でも、上手いわよ、外国の人にしては喋るの。ええっと、お勧めは…これとこれなんかどう?この国の名物よ」
「じゃあ、お姉さんを信じて、その二つと、あとこれ。それに俺以外には、周りの人が飲んでいる酒を。俺はレモン水で」
「お兄さんはお酒が駄目なのかい」
「ええ、まあ」
厳密に言うと飲めるが、直ぐ寝てしまうが正しい。折角周囲の声が拾える店にいるのにそれは勿体ないのでテレンスはレモン水にしたのだった。
少しすると自制した褒美だろうか、周囲から最近の王都の様子が聞こえてきた。食堂での料理からも分かるように、物資が滞る様子もなく市場に行くと近隣諸国からの物珍しいものも手に入るようだ。王都は概ね問題なく暮らせるのだろう。

場所柄、国政や貴族に対して何か言う者はいないが生活に関する情報を得られたのは大きい。それに給仕係は一枚紙の品書きを持ち歩いていた。この店にやって来る客は文字が読め、給仕係は注文をメモ書き出来る水準ということだ。実際に出て来る料理を見れば、量や食材から物価も想像が出来るだろう。

テレンスがマリア・アマーリエと午前中を共に過ごすのは四日後。それまでに昼間の町の様子も見ておきたいところだ。世話係から侍従長に伝えてもらえば、外出の手配はしてもらえるだろう。しかしその時は、今日の様に外交官達と出掛けられるかは分からない。彼等にはすべき仕事があることを思えば、外出はテレンス一人の確立が高い。勿論護衛が一人か二人付いてくるだろうが。それだったら、如何にもという場所へ行くのも悪くない。テレンスはこの国の貴族街へ行ってみようと考えた。

この国の貴族の街歩きの服装や、店の品揃え。消費を牽引する層の好みを知るのは重要なことだ。テレンスに今後この地でただのテレンスとして生きていく可能性がある以上、色々なことを知っていて損はない。そう、貴族街は本当に色々なことを見聞き出来る場所なのだから。
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