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「三上、これから忙しくなるから、打合せを兼ねてランチミーティングをしたいんだが」
「かしこまりました。本日ですね。どなたとでしょうか?お店を予約しますので、ご希望を」
聞きもらしてはいないはずと、かおるは恭祐にミーティング相手を尋ねた。
「君とだ。それに予約が必要なほど仰々しくはない。次のミーティングは内容と面子からして時間通り終わるだろう。だから、12時15分に一階正面玄関で」
「かしこまりました」
「店は好きなところを選べばいい」
「…はい」
12時15分とは微妙な時間だとかおるは思った。席を確保する為にも予約を入れておいたほうがいいし、ミーティングなのだから静かなほうが落ち着くだろう。
何より仕えて6年目にして、恭祐との初めての昼食。そして、恐らく最後になるであろう昼食。だったら、ミーティングとは言えそれなりの場所へ行きたいとかおるは思った。
かおるは少し考えてから一軒の店へ電話した。
そしてもう一軒。
『三上様、それではお席とお料理のリクエストを承ります』
「天気がもてばテラス傍の大きな窓のところで、雨が降りだしたら奥のちょっと離れた席でお願いできますか?お料理は…」
かおるは手元のノートを見ながら考える。先週水曜日の恭祐のディナーは同じくフランス料理でメインは仔牛。更に別のノートを取り出し、名前とデータを確認する。
そこには今までかおるが集めた恭祐に係わりのある特定の人物達のデータが並んでいる。決してデータとしてコンピューターのどこにも残せない、いざとなったら燃やせる形で。
「そうですね、若林には…本日は鶏肉でお願いします。女性は貝柱があればそれで。なければエビにして下さい。後はメインに合わせてお任せします」
『かしこまりました。では、若林様には本日はカモ、お連れ様には貝柱をご用意させていただきます』
かおるは電話をおくと透かさず先ほどのノートの今日、恭祐が会う女性のページに情報を書き足した。
電話は続く。
『・・・・・ホテルでございます』
「宿泊予約をお願いします」
『かしこまりました。宿泊予約課へおつなぎいたします。少々お待ち下さいませ』
ホテルの予約課の人物は誰であろうといつもと同じセリフを繰り返す。それに対し、かおるも決まりきったことを伝える。恭祐のアシスタントになり、初めて予約したとき以外はいつも同じリクエスト。
『それでは確認いたします。ご宿泊は本日から一泊、お部屋のタイプはダブルでお間違いありませんか?』
「はい、それでお願いいたします。支払はいつものように本人が行います」
ホテルの予約が終わると、かおるは小さなため息をついた。このため息は気持ちを切り替えて次の電話をする為にはどうしても必要なもの。でないと…感情を押し殺せなくなってしまう。
「ごめん、なっちゃん。今日のランチ、無理になっちゃった」
「またぁ?で、今日は仕事の鬼、何だって?」
「それが、若林さんとランチミーティング」
「え、会長、来るんだ」
「ううん。息子」
「えっ、そんなこともあるの?」
「たぶんこれが最初で最後じゃないかな。人事から昨日若林さんに辞めるって連絡があって、今後のことで打合せをしたいって」
「打合せもなにも、引き留めとかは?」
「あるわけないよ。これからのことを考えたのか、面倒くさそうな顔はしたけど」
「面倒くさそうかぁ、そんなもんじゃないでしょう。でも、あれじゃあしょうがないっか、またその内ね」
「うん。ほんとゴメンね」
同期入社の野原菜々への電話をおくと、かおるは今度は大きなため息をついた。
恭祐が近くにいないと、ため息ばかりついていることをかおるは随分前から自覚していた。
「かしこまりました。本日ですね。どなたとでしょうか?お店を予約しますので、ご希望を」
聞きもらしてはいないはずと、かおるは恭祐にミーティング相手を尋ねた。
「君とだ。それに予約が必要なほど仰々しくはない。次のミーティングは内容と面子からして時間通り終わるだろう。だから、12時15分に一階正面玄関で」
「かしこまりました」
「店は好きなところを選べばいい」
「…はい」
12時15分とは微妙な時間だとかおるは思った。席を確保する為にも予約を入れておいたほうがいいし、ミーティングなのだから静かなほうが落ち着くだろう。
何より仕えて6年目にして、恭祐との初めての昼食。そして、恐らく最後になるであろう昼食。だったら、ミーティングとは言えそれなりの場所へ行きたいとかおるは思った。
かおるは少し考えてから一軒の店へ電話した。
そしてもう一軒。
『三上様、それではお席とお料理のリクエストを承ります』
「天気がもてばテラス傍の大きな窓のところで、雨が降りだしたら奥のちょっと離れた席でお願いできますか?お料理は…」
かおるは手元のノートを見ながら考える。先週水曜日の恭祐のディナーは同じくフランス料理でメインは仔牛。更に別のノートを取り出し、名前とデータを確認する。
そこには今までかおるが集めた恭祐に係わりのある特定の人物達のデータが並んでいる。決してデータとしてコンピューターのどこにも残せない、いざとなったら燃やせる形で。
「そうですね、若林には…本日は鶏肉でお願いします。女性は貝柱があればそれで。なければエビにして下さい。後はメインに合わせてお任せします」
『かしこまりました。では、若林様には本日はカモ、お連れ様には貝柱をご用意させていただきます』
かおるは電話をおくと透かさず先ほどのノートの今日、恭祐が会う女性のページに情報を書き足した。
電話は続く。
『・・・・・ホテルでございます』
「宿泊予約をお願いします」
『かしこまりました。宿泊予約課へおつなぎいたします。少々お待ち下さいませ』
ホテルの予約課の人物は誰であろうといつもと同じセリフを繰り返す。それに対し、かおるも決まりきったことを伝える。恭祐のアシスタントになり、初めて予約したとき以外はいつも同じリクエスト。
『それでは確認いたします。ご宿泊は本日から一泊、お部屋のタイプはダブルでお間違いありませんか?』
「はい、それでお願いいたします。支払はいつものように本人が行います」
ホテルの予約が終わると、かおるは小さなため息をついた。このため息は気持ちを切り替えて次の電話をする為にはどうしても必要なもの。でないと…感情を押し殺せなくなってしまう。
「ごめん、なっちゃん。今日のランチ、無理になっちゃった」
「またぁ?で、今日は仕事の鬼、何だって?」
「それが、若林さんとランチミーティング」
「え、会長、来るんだ」
「ううん。息子」
「えっ、そんなこともあるの?」
「たぶんこれが最初で最後じゃないかな。人事から昨日若林さんに辞めるって連絡があって、今後のことで打合せをしたいって」
「打合せもなにも、引き留めとかは?」
「あるわけないよ。これからのことを考えたのか、面倒くさそうな顔はしたけど」
「面倒くさそうかぁ、そんなもんじゃないでしょう。でも、あれじゃあしょうがないっか、またその内ね」
「うん。ほんとゴメンね」
同期入社の野原菜々への電話をおくと、かおるは今度は大きなため息をついた。
恭祐が近くにいないと、ため息ばかりついていることをかおるは随分前から自覚していた。
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