どうかあなたが

五十嵐

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5 理由の分からない出張

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レストラン到着後も沈黙は続く。普段の関係から、沈黙はある種の嫌がらせなのだろうか思う程、恭祐は口を開かなかった。ウエイターがオーダーを取りに来るまで。

「来週、木曜の夜便でニューヨークへ行く」
「かしこまりました。では、予約を致します」
「不要だ。全て済ませた」
一連のスケジュール変更はこの為だったのかと、かおるはこのとき初めて理解した。しかも既に自ら行っていたとは。
ところが次の言葉がまるで理解できなかった。

「三上、お前も一緒だ。パスポートはあるな?」
「あの…」
「パスポートはあるのか」
「はい」
「あとで、メールを送る。そこにインハウスエージェントからの出張に関する連絡があるから明日中に完了しておくように」

恭祐は仕事柄今まで何度となく海外出張へ行っている。しかしながら、かおるを伴ったことは一度もない。そもそも伴う必要などないからだ。
なのになぜ退職することが決まっているかおるを、今更伴う必要があるというのだろうか。どんなに考えても、かおるにニューヨークですべき仕事はない。

更に信じられないのは、その日程。
木曜、現地到着後はそのままホテルへ行き、金曜は支社へ顔を出し、土日は休みだと恭祐は言った。

だったら、日曜出発でいいような気がする。事実今まではそうだった。
だから今回のような7泊9日などという日程を聞いて、かおるはまたもや理解不能に陥った。
もしかするといつものような3泊5日、もしくは4泊6日と言ったのを、聞き間違えたのかもしれないとも思ったぐらいだ。

けれども、恭祐の口からは再び7泊9日という日程が淡々と放たれた。現地で何かあるのだろうか。思ったところで無駄な質問は許されない。かおるは指示に従うだけ。否が応にもそのうちわかるだろうし。

「木曜は会社から直接空港へ行く。だから午前の予定はそのままで大丈夫だ。荷物は前日までに空港へ送っておくように」
「はい」
「それと、食事にも同席してもらう。だから、それなりの服を1、2枚持ってこい。仕事の話は以上」
以上と言われても、仕事以外に話す事などない…。あとは料理が出てくるのを待ち、それを黙々と口に運び、支払いを済ませて、会社へ戻る。そこで、かおるは納得した。帰りは並んで歩く必要はないと恭祐は言いたかったのだろうと。


「父には話したのか」
ところがかおるの予想は外れた。本当に恭祐が仕事以外の話を始めたのだ。
「はい、昨日。入社してから本当にお世話になりましたから。今までのお礼と一緒にお伝えしました」
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