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6 異例の人事
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かおるは入社後現名誉会長であり、前社長であった若林秀一の秘書を一年間務めた。
その大役は、社内の思惑や色々な偶然が重なった結果かおるに降ってわいてきたものだった。
かおるの入社した年度は、若林秀一の現役最後の年だった。これは数年前から決まっていたこと。
秀一は会社の為に、今までの自分の秘書を次期社長の飯嶋付きにすることを早くから決めていた。社内外の人の目、飯嶋自身の立場の早期確立を考えて。第一、退く事が決まっている秀一の仕事量は今までよりは減っていく。だったらコストセービングの為、特定の秘書は不要であると人事へ伝え了承されていた。
ところが、役員達から出ていた『それでは体裁が悪い』という意見が次第に高まり、年度末ぎりぎりの3月終わりに秀一へ秘書を一人あてがうこととなったのだ。
困ったのは人事。翌年の社長交代を見据え、次期社長秘書、役員グループを担当するそれぞれの秘書、人事総務部体制は既に決まっていた。社内の勢力、個人のパワーバランスを考えての決定だった為、今更の変更はかなり厳しい。
人事では新卒採用時に、例年一人か二人余剰人員を確保している。入社後毎年それくらいは辞めることを見越してだ。既に固まった骨格を崩さない為にも、秀一には申し訳ないが人事は新入社員をその職にあてがうこととした。今までに比べ仕事は減るが、その増減を知る由もない新入社員。しかもいきなりの社長秘書。あてがうなら一番期待度が高い社員、もしくは使いきりとして捨てられる余剰人員…。
人事は最終的に余剰人員を選択した。
それがかおる。
かおるが選ばれた経緯は、秀一には伝えられなかった。ただ、挨拶状が増えるであろう一年間のために毛筆の才がある人物を選んだとだけは知らされていたが。
とは言え、秀一は退くことが決まっているとしても会社のトップだ。薄々事情は理解していた。すなわちかおるが、秀一、役員会、人事の作った窪みに落ちたということを。だからかおるに対して申し訳なさも感じていた。
人事ファイルにあった個人データを見ても、本人が秘書を希望していたとはとても思えない。
けれども会社という組織の中では、社員は好もうと好むまいと与えられた仕事を遂行していくものだ。それが当たり前。そしてそのパフォーマンスが評価に直結する。
本来では考えられない新入社員が社長秘書という人事。たとえ新入社員であろうとポジションがポジションなだけに、評価は当然のこととして厳しいものになる。申し訳なさも手伝い、秀一はかおるをしっかりと育てようと心に決めていた。もちろん、かおるが育てば育つほど会社にとっても有益だし、なにより本人の評価もあがるのだから。
そして、かおると顔を合わせた初日、秀一は人事ファイルから読み取れなかったとあることに驚いた。しかしそこは亀の甲より年の功。驚きなど全く見せずに、挨拶を交わす。
まさかこの時の驚きの理由が、かおるに後々やってくる苦しい時間を生むとは知る由もなく。
その大役は、社内の思惑や色々な偶然が重なった結果かおるに降ってわいてきたものだった。
かおるの入社した年度は、若林秀一の現役最後の年だった。これは数年前から決まっていたこと。
秀一は会社の為に、今までの自分の秘書を次期社長の飯嶋付きにすることを早くから決めていた。社内外の人の目、飯嶋自身の立場の早期確立を考えて。第一、退く事が決まっている秀一の仕事量は今までよりは減っていく。だったらコストセービングの為、特定の秘書は不要であると人事へ伝え了承されていた。
ところが、役員達から出ていた『それでは体裁が悪い』という意見が次第に高まり、年度末ぎりぎりの3月終わりに秀一へ秘書を一人あてがうこととなったのだ。
困ったのは人事。翌年の社長交代を見据え、次期社長秘書、役員グループを担当するそれぞれの秘書、人事総務部体制は既に決まっていた。社内の勢力、個人のパワーバランスを考えての決定だった為、今更の変更はかなり厳しい。
人事では新卒採用時に、例年一人か二人余剰人員を確保している。入社後毎年それくらいは辞めることを見越してだ。既に固まった骨格を崩さない為にも、秀一には申し訳ないが人事は新入社員をその職にあてがうこととした。今までに比べ仕事は減るが、その増減を知る由もない新入社員。しかもいきなりの社長秘書。あてがうなら一番期待度が高い社員、もしくは使いきりとして捨てられる余剰人員…。
人事は最終的に余剰人員を選択した。
それがかおる。
かおるが選ばれた経緯は、秀一には伝えられなかった。ただ、挨拶状が増えるであろう一年間のために毛筆の才がある人物を選んだとだけは知らされていたが。
とは言え、秀一は退くことが決まっているとしても会社のトップだ。薄々事情は理解していた。すなわちかおるが、秀一、役員会、人事の作った窪みに落ちたということを。だからかおるに対して申し訳なさも感じていた。
人事ファイルにあった個人データを見ても、本人が秘書を希望していたとはとても思えない。
けれども会社という組織の中では、社員は好もうと好むまいと与えられた仕事を遂行していくものだ。それが当たり前。そしてそのパフォーマンスが評価に直結する。
本来では考えられない新入社員が社長秘書という人事。たとえ新入社員であろうとポジションがポジションなだけに、評価は当然のこととして厳しいものになる。申し訳なさも手伝い、秀一はかおるをしっかりと育てようと心に決めていた。もちろん、かおるが育てば育つほど会社にとっても有益だし、なにより本人の評価もあがるのだから。
そして、かおると顔を合わせた初日、秀一は人事ファイルから読み取れなかったとあることに驚いた。しかしそこは亀の甲より年の功。驚きなど全く見せずに、挨拶を交わす。
まさかこの時の驚きの理由が、かおるに後々やってくる苦しい時間を生むとは知る由もなく。
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