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7 難しい要求
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半年後、かおるは人事の予想を大きく裏切り化けた。かおるとて自分がいきなりこんな大企業の社長秘書になったのには、それ相当の事情があると理解していた。
前任者、総務のバックアップだけでなく、社長の秀一自らの指導。秀一はその立場にも係わらず、誰よりも丁寧、的確に仕事の進め方、人脈の築き方を教えてくれた。厳しい指導だったり、時には怒られることもあったが、ちゃんと出来れば認めてもくれる。
かおるはそれに応えるためにも、一つ一つをきちんと理解し自分のものとしていった。
驚くことに新年度をむかえようとする頃には、かおるは人事担当者達を良い意味で悩ませていた。
それは秀一勇退後のかおるの行き先。
最終的にはニューヨークにあるアメリカ支社から日本へ戻ってくる恭祐が率いる新組織の組織付き兼恭祐のアシスタントになることに決まった。だから、今がある。
「それで、父は何と」
「はい、あ、あの、退職は残念だけれども、その日まで今まで同様頑張るようにとおっしゃって下さいました。若林さんが」
「何だ?」
「あ、いえ、会長の若林さん」
「当たり前だが、オレも若林だ。紛らわしいから、区別してくれないか」
「分かりました。では、若林さんの前では会長と室長という役職で」
「止めてくれ。この会社は役職名で呼ばないことになっているだろう。第一その呼ばれ方は好きではない」
そうはおっしゃいましても、という言葉を飲み込みかおるはいつものように表情を変えず続けた。
「かしこまりました。では、どのようにお呼びすればいいでしょうか?」
本人に聞くのが一番早い。そうすれば恭祐の気に入らないことを言い睨まれることもないだろう。
けれどかおるは気付いていなかった。恭祐が微かに口角をあげたことを。その言葉で切り返してくることを百も承知で好きではないと言ったことを。
「そうだな、恭祐でいい」
「あの…、若林さん」
「聞いていなかったのか、今、恭祐と呼べと言ったばかりだが」
「ですが、それではあまりにも」
「構わない。支社では皆そう呼ぶ。出張も控えていることだ、他の者と足並みをそろえればいいだけだろう」
「では、出張の時は…そのようにお呼びするよう、努力します」
「努力するようなことではないだろ。5年以上一緒に働いているんだ、オレの名前を知らないわけでもあるまいし。そうだな、今この時点から、オレと二人の時は恭祐と呼べばいい。その方が、どの若林を指しているのか明確だ」
紛らわしさを区別する為の命令。かおるには、そう思い従うしかない。
「…はい、分かりました」
かおるはいつものように言葉少なめに了承の返事をした。その裏では、表情に出しはしないが、心は驚きで埋め尽くされていた。
なぜなら、恭祐がかおると働きだしてすでに5年以上経っていたことを知っていたからだ。
結局、その後、会話らしい会話はなかった。第三者の目からみるならば。けれど、かおるにしてみれば恭祐と向かい合ってこんなに話した、否、答えたのは初めてだった。
前任者、総務のバックアップだけでなく、社長の秀一自らの指導。秀一はその立場にも係わらず、誰よりも丁寧、的確に仕事の進め方、人脈の築き方を教えてくれた。厳しい指導だったり、時には怒られることもあったが、ちゃんと出来れば認めてもくれる。
かおるはそれに応えるためにも、一つ一つをきちんと理解し自分のものとしていった。
驚くことに新年度をむかえようとする頃には、かおるは人事担当者達を良い意味で悩ませていた。
それは秀一勇退後のかおるの行き先。
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「何だ?」
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「当たり前だが、オレも若林だ。紛らわしいから、区別してくれないか」
「分かりました。では、若林さんの前では会長と室長という役職で」
「止めてくれ。この会社は役職名で呼ばないことになっているだろう。第一その呼ばれ方は好きではない」
そうはおっしゃいましても、という言葉を飲み込みかおるはいつものように表情を変えず続けた。
「かしこまりました。では、どのようにお呼びすればいいでしょうか?」
本人に聞くのが一番早い。そうすれば恭祐の気に入らないことを言い睨まれることもないだろう。
けれどかおるは気付いていなかった。恭祐が微かに口角をあげたことを。その言葉で切り返してくることを百も承知で好きではないと言ったことを。
「そうだな、恭祐でいい」
「あの…、若林さん」
「聞いていなかったのか、今、恭祐と呼べと言ったばかりだが」
「ですが、それではあまりにも」
「構わない。支社では皆そう呼ぶ。出張も控えていることだ、他の者と足並みをそろえればいいだけだろう」
「では、出張の時は…そのようにお呼びするよう、努力します」
「努力するようなことではないだろ。5年以上一緒に働いているんだ、オレの名前を知らないわけでもあるまいし。そうだな、今この時点から、オレと二人の時は恭祐と呼べばいい。その方が、どの若林を指しているのか明確だ」
紛らわしさを区別する為の命令。かおるには、そう思い従うしかない。
「…はい、分かりました」
かおるはいつものように言葉少なめに了承の返事をした。その裏では、表情に出しはしないが、心は驚きで埋め尽くされていた。
なぜなら、恭祐がかおると働きだしてすでに5年以上経っていたことを知っていたからだ。
結局、その後、会話らしい会話はなかった。第三者の目からみるならば。けれど、かおるにしてみれば恭祐と向かい合ってこんなに話した、否、答えたのは初めてだった。
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