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8 信頼する人物
「三上、毎度のことだが、今日も考えは変わってないか?」
「はい」
「即答か、まあいい、まだ先は長いからオレも頑張るとするか。まあ、もし、気が変わったら直ぐに言って欲しい。三上ならどこの部署でも歓迎されるだろうから。個人的にはこのままこの部署に残ってもらうのが一番なんだけれど」
「秋山さん、ありがとうございます。でも、もう半年以上前から決めていた事ですので」
かおるに毎日のように会社に留まる気はないか質問してくるのは秋山樹、二年前にシンガポールから日本へ戻ってきた恭祐の従兄弟だ。秋山の話によると、二人は子供の頃からよく遊び、高校までは同じ学校だったそうだ。と言っても、秋山が二学年上で同学年ではなかったが。
昨年海外戦略本部編成の話が出た時に、恭祐が真っ先に組織の一員として樹の名を挙げたのは海外での経験とネットワークも仕事上の実力も十分にあるからだ。何より二人が話している様子を見ると、恭祐が全幅の信頼を樹に寄せているのが傍から見ても良くわかる。
仕事をするなら、信頼する人間と行うほうがいい。かおるは恭祐と共に働いているが、そこに信頼などない。かおるがただそこにいただけだ。
恭祐にしてみたら、日本に戻って与えられた部下がかおるというだけ。居たから使っている、程度だろう。
そして樹はかおるがそこにいるから、顔を合わせた時に最低限の礼儀として会釈をしたのだろう、最初の頃は。樹が恭祐のデスクを時折訪ねる際、必然的にかおるが視界に入っただろうから。
しかし頻度が上がれば、会釈での挨拶から、言葉での挨拶、そして挨拶の際にたまに会話が伴うようになった。従兄弟だからか顔立ちや雰囲気が似ているところがある樹と恭祐。しかし、性格はまるで違った。
そんな感想を同期入社の友人に漏らした時には『秋山さんの対応が普通で、若林さんが異常過ぎるだけ』と力説されたが。
でも、かおるは恭祐の態度を異常だとは思っていなかった。面倒ごとを避けているのだろうと予測がついていたのだ。経営者一族である恭祐は、女子社員との無用な接触を一切しない。そしてかおるは自分の心を救う為、傍にいる自分には殊更冷たく接するようにしていると思い込むようにし続けてきたのだった。
そうでもしなければ、とっくに心が挫けていた。
「はい」
「即答か、まあいい、まだ先は長いからオレも頑張るとするか。まあ、もし、気が変わったら直ぐに言って欲しい。三上ならどこの部署でも歓迎されるだろうから。個人的にはこのままこの部署に残ってもらうのが一番なんだけれど」
「秋山さん、ありがとうございます。でも、もう半年以上前から決めていた事ですので」
かおるに毎日のように会社に留まる気はないか質問してくるのは秋山樹、二年前にシンガポールから日本へ戻ってきた恭祐の従兄弟だ。秋山の話によると、二人は子供の頃からよく遊び、高校までは同じ学校だったそうだ。と言っても、秋山が二学年上で同学年ではなかったが。
昨年海外戦略本部編成の話が出た時に、恭祐が真っ先に組織の一員として樹の名を挙げたのは海外での経験とネットワークも仕事上の実力も十分にあるからだ。何より二人が話している様子を見ると、恭祐が全幅の信頼を樹に寄せているのが傍から見ても良くわかる。
仕事をするなら、信頼する人間と行うほうがいい。かおるは恭祐と共に働いているが、そこに信頼などない。かおるがただそこにいただけだ。
恭祐にしてみたら、日本に戻って与えられた部下がかおるというだけ。居たから使っている、程度だろう。
そして樹はかおるがそこにいるから、顔を合わせた時に最低限の礼儀として会釈をしたのだろう、最初の頃は。樹が恭祐のデスクを時折訪ねる際、必然的にかおるが視界に入っただろうから。
しかし頻度が上がれば、会釈での挨拶から、言葉での挨拶、そして挨拶の際にたまに会話が伴うようになった。従兄弟だからか顔立ちや雰囲気が似ているところがある樹と恭祐。しかし、性格はまるで違った。
そんな感想を同期入社の友人に漏らした時には『秋山さんの対応が普通で、若林さんが異常過ぎるだけ』と力説されたが。
でも、かおるは恭祐の態度を異常だとは思っていなかった。面倒ごとを避けているのだろうと予測がついていたのだ。経営者一族である恭祐は、女子社員との無用な接触を一切しない。そしてかおるは自分の心を救う為、傍にいる自分には殊更冷たく接するようにしていると思い込むようにし続けてきたのだった。
そうでもしなければ、とっくに心が挫けていた。
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