どうかあなたが

五十嵐

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11 疑問

返事も聞かずに去っていった樹の背中が見えなくなると、かおるは急いで自分のデスクへ戻った。会社で人気を二分する樹をかおる如きが仕事を長引かせ待たせるなんてことはあってはいけないと。

そう、樹は女子社員の一番人気なのだ。
経営者一族である樹の会社でのポジション、整った顔立ち、女性に対する紳士的な態度は好感を持たれて当たり前と言えば当たり前だ。

もちろん、恭祐とて人気がないわけではない。二分する、その片方は恭祐なのだから。しかし、その雰囲気、態度、もっと言ってしまうとあまりにも手の届かない距離から、やはり樹に人気は集まった。これも友人に言わせれば『確立の高いもしかしてを狙うなら当然だよね。しかも何か起これば、秋山さんなら結婚してくれそうじゃない。若林さんは握り潰しそうだけど。』だった。

そんな樹がかおると個人的に付き合いたいと思う理由はなんだろう。

かおるの実家は湯治客が来る温泉が近くにあるだけの田舎の家だ。実家には兄夫婦が暮らし、かおるには何の権利もない。仕事が忙しいを口実に年末年始に数日帰る程度の実家。だから恭祐が普段付き合うような親が名声や資産を持つ令嬢とは違う。
どう考えても、かおるは樹にとって何の価値もない。

それに樹とて、恭祐が付き合いを持っているような令嬢との繋がりがないわけではないだろう。
最終的にかおるは偶には息抜きに気の張らない相手と食事をしたいのかもしれないと思うことにした。それくらいしか理由が思い当たらなかったのだ。
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