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16 意外
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昨日変更した恭祐の予定は無事に流れているようだ。
先程一度だけ席に戻ってきた恭祐から何の言葉もなかったのが、それを示している。普通の上司だったら『御苦労さま』とか『ありがとう』等の言葉が出てくるのかもしれないが、出来て当たり前主義の恭祐からは当然そんな言葉はない。むしろ何の言葉もないことのほうが良いことなのだ。
「かおる、メシ、行こうぜ」
「あ、秋山さん、もう、そんな時間ですか?」
「ああ、だから仕事時間以外の呼び方にして」
「…」
「さてと、何食いたい?」
「わたし、美味しい親子丼のお店知っているんですけど、どうですか?嫌いじゃなければ」
「いいね、オレ、丼物好き」
「良かった。そこ普通でも量ありますけど、大盛りもできますから」
緊張しながら恭祐の隣を歩いた昨日より、樹の隣は歩きやすかった。一方的な会話ではなく、言葉のやり取りがあるせいか歩く速度も自然にそろっていく。
料理を待つ時間も食べているときも、昨日の昼食とは全く違った。
「そう言えば、明日の午後は若林の伯父さんのところなんだって」
「はい、わたしも今朝若林さんから伝えられたんですが、これから毎週一回、午後に伺うことになりました」
「毎週なんだ、忙しいのに大変だな。かおるは若林親子から退職金を別にもらわないと」
「そんな、わたしこそ、会長の若林さんにはお礼をしなければいけないと思っています。それに今の上司の若林さんにも、いたらないことが多くてご不便を強いているようですし」
「かおるらしいな。でも、ここはオレが正しいって。しかし伯父さん、毎週来いなんて、何の用があるんだ?」
樹の疑問は尤もで、かおるもそこが気になっていた。月一回の役員会と特別な行事以外は然程会社に来なくなった秀一が、何故週に一度かおるを自宅に呼ぶのか…。
「ところで、伯父さんのところへの行き方とか分かる?」
「あ、はい。後で調べます」
「時間掛けることはない。最寄駅からの地図、目印つけて持ってってやるから」
「大丈夫です。自分で」
「甘えること、覚えないと。特にオレには甘えていいから」
「…はい」
「伯父さんとこ住宅街だから、目印らしいものないけど、オレの作る地図ならやけにデカい家とか、屋根がチロル風な家とか楽しく確認しながら着くこと間違いなし」
「ふふ、ありがとうございます」
「ところで、伯母さんとは面識ある?」
「はい。二度程。ご挨拶をした程度ですが。あ、電話でも数回ご挨拶しました。明るい感じの方ですよね」
「そうだね、明るくて良い人だよ。恭の弟達も。確か、今年30歳と26歳だけど、まだ独立しないで同居してるんだ。かおるがいつまでいるかによるけど、会っても緊張する必要は全くないくらい気楽な奴らだから」
そう言えば秀一が社長だった頃は、恭祐の弟である二人の息子の話を時折していた。けれど、秀一から恭祐の話はあまり出たことがなかった気がする。そもそも恭祐はアメリカへ行く前から家を出ていたようなので、秀一が話すような出来事がなかったのだろう。
同様に、恭祐からもかおるには勿論のこと、樹にすら家族の話をしているところを見たことがなかった。
経営者とその長男だと、親子関係もこういうものになるのだろうか。
いや、意図的にかおるが外されているだけ…。そうだった、恭祐はプライベートに係わることは、かおるには聞かれたくないはず。きっとかおるが近くにいない時には、樹に家族の話をしているのだろう。
席に戻り、難しい表情を浮かべる恭祐の横顔を盗み見しながらかおるはふと思った。秀一とその明るそうな妻の奏絵の息子がなぜいつもこのような雰囲気をまとっているのだろうかと。
先程一度だけ席に戻ってきた恭祐から何の言葉もなかったのが、それを示している。普通の上司だったら『御苦労さま』とか『ありがとう』等の言葉が出てくるのかもしれないが、出来て当たり前主義の恭祐からは当然そんな言葉はない。むしろ何の言葉もないことのほうが良いことなのだ。
「かおる、メシ、行こうぜ」
「あ、秋山さん、もう、そんな時間ですか?」
「ああ、だから仕事時間以外の呼び方にして」
「…」
「さてと、何食いたい?」
「わたし、美味しい親子丼のお店知っているんですけど、どうですか?嫌いじゃなければ」
「いいね、オレ、丼物好き」
「良かった。そこ普通でも量ありますけど、大盛りもできますから」
緊張しながら恭祐の隣を歩いた昨日より、樹の隣は歩きやすかった。一方的な会話ではなく、言葉のやり取りがあるせいか歩く速度も自然にそろっていく。
料理を待つ時間も食べているときも、昨日の昼食とは全く違った。
「そう言えば、明日の午後は若林の伯父さんのところなんだって」
「はい、わたしも今朝若林さんから伝えられたんですが、これから毎週一回、午後に伺うことになりました」
「毎週なんだ、忙しいのに大変だな。かおるは若林親子から退職金を別にもらわないと」
「そんな、わたしこそ、会長の若林さんにはお礼をしなければいけないと思っています。それに今の上司の若林さんにも、いたらないことが多くてご不便を強いているようですし」
「かおるらしいな。でも、ここはオレが正しいって。しかし伯父さん、毎週来いなんて、何の用があるんだ?」
樹の疑問は尤もで、かおるもそこが気になっていた。月一回の役員会と特別な行事以外は然程会社に来なくなった秀一が、何故週に一度かおるを自宅に呼ぶのか…。
「ところで、伯父さんのところへの行き方とか分かる?」
「あ、はい。後で調べます」
「時間掛けることはない。最寄駅からの地図、目印つけて持ってってやるから」
「大丈夫です。自分で」
「甘えること、覚えないと。特にオレには甘えていいから」
「…はい」
「伯父さんとこ住宅街だから、目印らしいものないけど、オレの作る地図ならやけにデカい家とか、屋根がチロル風な家とか楽しく確認しながら着くこと間違いなし」
「ふふ、ありがとうございます」
「ところで、伯母さんとは面識ある?」
「はい。二度程。ご挨拶をした程度ですが。あ、電話でも数回ご挨拶しました。明るい感じの方ですよね」
「そうだね、明るくて良い人だよ。恭の弟達も。確か、今年30歳と26歳だけど、まだ独立しないで同居してるんだ。かおるがいつまでいるかによるけど、会っても緊張する必要は全くないくらい気楽な奴らだから」
そう言えば秀一が社長だった頃は、恭祐の弟である二人の息子の話を時折していた。けれど、秀一から恭祐の話はあまり出たことがなかった気がする。そもそも恭祐はアメリカへ行く前から家を出ていたようなので、秀一が話すような出来事がなかったのだろう。
同様に、恭祐からもかおるには勿論のこと、樹にすら家族の話をしているところを見たことがなかった。
経営者とその長男だと、親子関係もこういうものになるのだろうか。
いや、意図的にかおるが外されているだけ…。そうだった、恭祐はプライベートに係わることは、かおるには聞かれたくないはず。きっとかおるが近くにいない時には、樹に家族の話をしているのだろう。
席に戻り、難しい表情を浮かべる恭祐の横顔を盗み見しながらかおるはふと思った。秀一とその明るそうな妻の奏絵の息子がなぜいつもこのような雰囲気をまとっているのだろうかと。
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