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18 若林夫妻の申し出
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樹の用意してくれた地図は分かりやすかった。記入されている注意点も的確で完璧なもの。けれど若林家の大きさを目の当たりにした時、かおるはこの家を見過ごすことはまずないと吹き出しそうになってしまった。
問題は樹の優しい気遣いと邸宅のお陰で早めに到着してしまったことだった。時間をつぶそうにも、閑静な住宅街すぎて見渡す限り喫茶店もない。かおるは仕方なく、思い切って若林家のインターフォンを鳴らすことにした。
恐縮しながら鳴らしたインターフォンからは、すぐに明るい聞いたことがある声が返ってきて門が解錠される音がした。
「お待ちしていたのよ。さ、あがって」
玄関扉を開け、かおるの姿を確認した奏絵が笑顔で声を掛けた。
「あ、はい」
リビングに通され、少しするとサンドイッチと紅茶を奏絵が運んできた。
「あの、若林さんは?」
「今、ちょっと出払っているのよ」
「では何か仕事の指示書等を奥様がお預かりになっていらっしゃいませんか?」
「指示書って程のものはないけど、ちゃんとわたしが聞いているから大丈夫よ。まあ、お茶でも飲んでゆっくりしてちょうだい。こんな時間を指定したから、お食事もちゃんとしていないでしょう。これも、食べてね」
解放感のある大きなリビング、香り高い紅茶、何より奏絵の雰囲気のお陰で最初は恐縮していたかおるも、思いの外寛ぐことが出来た。
「かおるさん、聞いたわ。9月末でお辞めになるんですって」
「はい。皆様には大変お世話になったので心苦しいのですが」
「お世話だなんて。あなたこそ大変だったでしょ。入社早々社長秘書だし、今は今で恭祐さんのアシスタントですもの。若林家よ、あなたに随分お世話になったのは。うーん、違うわね。色々迷惑を掛けてしまったわね」
「迷惑だなんて」
「あながたそう思ってくれていても、わたし達はそうはいかないわ。主人とも話し合ったのだけど、退社まで週に一日だけでもお礼をさせて。なんでもあなた、恭祐さんのアシスタントになってからは、有給をとっていないどころじゃなくて、お休みすら返上して働いているんですって」
「…」
「だから週に一回、公用で会社を抜けて、ここに息抜きに来てちょうだい。今まで消えてしまった有給分とまではいかなのは分かっているわ。でも、せめて、ね?それに、若林家には息子しかいないからもし良ければ、一緒にお菓子作りをしたり…そう、わたしに娘がいる楽しさを味あわさせて」
奏絵と秀一の厚意に甘えてみようと、かおるはしばらく考えた後結論を出した。背中を押すように『人に甘えることを覚えないとな』という樹の言葉がタイミングよく思い出されたのも何かの暗示のように思えて。
「わたしで良ければ、では、お言葉に甘えさせて下さい」
「良かった。でも、恭祐さんには内緒よ」
「はい、わたしもそのほうがありがたいです」
「じゃあ、さっそく出かけましょう」
「は?」
「玄関を出たところで待っていて。車、まわすから」
週に一回、ここへ来ることで半休のように休みを与えてくれるのかと思ったかおるの考えは外れたようだった。奏絵はどこかへ行くと言っている。しかも、樹のように言ったきり、もう車を取りに行ってしまった。
問題は樹の優しい気遣いと邸宅のお陰で早めに到着してしまったことだった。時間をつぶそうにも、閑静な住宅街すぎて見渡す限り喫茶店もない。かおるは仕方なく、思い切って若林家のインターフォンを鳴らすことにした。
恐縮しながら鳴らしたインターフォンからは、すぐに明るい聞いたことがある声が返ってきて門が解錠される音がした。
「お待ちしていたのよ。さ、あがって」
玄関扉を開け、かおるの姿を確認した奏絵が笑顔で声を掛けた。
「あ、はい」
リビングに通され、少しするとサンドイッチと紅茶を奏絵が運んできた。
「あの、若林さんは?」
「今、ちょっと出払っているのよ」
「では何か仕事の指示書等を奥様がお預かりになっていらっしゃいませんか?」
「指示書って程のものはないけど、ちゃんとわたしが聞いているから大丈夫よ。まあ、お茶でも飲んでゆっくりしてちょうだい。こんな時間を指定したから、お食事もちゃんとしていないでしょう。これも、食べてね」
解放感のある大きなリビング、香り高い紅茶、何より奏絵の雰囲気のお陰で最初は恐縮していたかおるも、思いの外寛ぐことが出来た。
「かおるさん、聞いたわ。9月末でお辞めになるんですって」
「はい。皆様には大変お世話になったので心苦しいのですが」
「お世話だなんて。あなたこそ大変だったでしょ。入社早々社長秘書だし、今は今で恭祐さんのアシスタントですもの。若林家よ、あなたに随分お世話になったのは。うーん、違うわね。色々迷惑を掛けてしまったわね」
「迷惑だなんて」
「あながたそう思ってくれていても、わたし達はそうはいかないわ。主人とも話し合ったのだけど、退社まで週に一日だけでもお礼をさせて。なんでもあなた、恭祐さんのアシスタントになってからは、有給をとっていないどころじゃなくて、お休みすら返上して働いているんですって」
「…」
「だから週に一回、公用で会社を抜けて、ここに息抜きに来てちょうだい。今まで消えてしまった有給分とまではいかなのは分かっているわ。でも、せめて、ね?それに、若林家には息子しかいないからもし良ければ、一緒にお菓子作りをしたり…そう、わたしに娘がいる楽しさを味あわさせて」
奏絵と秀一の厚意に甘えてみようと、かおるはしばらく考えた後結論を出した。背中を押すように『人に甘えることを覚えないとな』という樹の言葉がタイミングよく思い出されたのも何かの暗示のように思えて。
「わたしで良ければ、では、お言葉に甘えさせて下さい」
「良かった。でも、恭祐さんには内緒よ」
「はい、わたしもそのほうがありがたいです」
「じゃあ、さっそく出かけましょう」
「は?」
「玄関を出たところで待っていて。車、まわすから」
週に一回、ここへ来ることで半休のように休みを与えてくれるのかと思ったかおるの考えは外れたようだった。奏絵はどこかへ行くと言っている。しかも、樹のように言ったきり、もう車を取りに行ってしまった。
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