どうかあなたが

五十嵐

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25 紫煙

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恭祐はため息に近い大きな一息を吐き出した。
数日前から、明らかに樹とかおるの距離に変化が生じている。互いの呼び方の変化だけではなく、視線でのやり取りからもそれは見てとれる程。

気に入らない。否、いらつかせる。けれど、どうしてそんな感情を抱かなくてはいけないのかと思う、冷静な自分が嘲り笑っているのを恭祐は知っている。
そう、この感情の本当の正体を知っている恭祐が、気付いていない恭祐を嘲笑っているのだった。

たばこの先からくゆる煙を見つめながら、結局のところ火を点けただけで恭祐は深く肺まで吸い込んではいなかった。普段は吸わないたばこ。アメリカへ赴任した頃、吸う場所を探す手間とその時間そのものを惜しいと思うようになり知らず知らずに止めていた。

それが日本に戻り、何故か女を抱いた後にだけ吸うようになっていた。
別に誰かに会って体を合わせてきた訳ではない。ただ不規則に立ち上る紫煙を見ていたかった。
この間を設けず自席へ戻れば、そこにいるかおるにきつい言葉を投げつけるのは目に見えている。
その行為自体には何も感じない。けれども、こんな子供のような理由でかおるに当たってしまう自分への苛立ちは抑えられない。

更には、自分への苛立ちをかおるにまたきつい言葉を放つことで解消しようということは容易に想像がつく。原因も対象も発端はかおるなのだから、その存在そのものだけで、負のスパイラルはとめどなく広がっていってしまう。
恭祐はただ点る火と紫煙の行方を眺めていた。
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