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26 絡む見えない糸
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かおるが投げた小石は望もうと望むまいと、良かろうと悪かろうと波紋を広げていく。同様に周囲からの物事も。
かおるへ対する恭祐の態度、ニューヨーク出張へ同行させられること、そして週に一度の若林家への訪問。かおるに対して何かが動きだしていることは明らかだ。
何よりかおる自身が変化をしようとしている。
樹はかおると別れると、恭祐へメールを送った。
タイミングが良かったのか、間をあけず返ってきたのは望んだ通りの返事だった。
時計は今日がもう2時間もないことを告げていた。この時間から入れる店は限られている。そんなことを思いながら樹は恭祐のデスクへと向かった。
「そろそろ出るか。」
「ああ、悪いんだが、今日はオレのところでいいか?」
「誘ったのはオレだから、オレのところでも。」
「いや、昨日着替えに戻っただけだから、今日は帰っておきたいんだ。」
恭祐の住まいは会社から然程離れていない。なのに忙しさから帰らず働らくことは時折ある。本人に言わせれば自宅より会社という場所が与えてくれる緊張感がいいのだとか。
けれども最近の忙しさは今までとは違う。わざわざ予定を詰め込み、更に忙しくしている。そうまでして、急に長期の出張へどうして行くのか。
何かが引っかかる。あんなに嫌っているのに、何故かおるを同行させるのだろうか。
何より、決めたタイミングは明らかにかおるの退社を知ってから。
「酒はいくらでもあるが、食いものがないな。」
「今のうちにピザでも注文しておくか。」
樹はピザ店に電話をすると、ピザとサイドメニューを注文した。そして、二人は恭祐のマンションへと向かった。
恭祐の住むマンションの下には深夜営業をしているスーパーもあれば、ジムも備えている。専用エレベーターでしか行けない、恭祐の高層階の部屋からは当然のことながら、東京の夜景が見渡せる。
いかにも女性うけしそうなマンションに部屋。けれど、恭祐が自分のテリトリーに女性を決して立ち入らせないことを樹は知っている。
そう、何人もの体を重ねる相手がいるというのに、誰一人として本気になったことがない。それ以前に、そもそも女性という生き物を信用していないようだった。
が、社会にでれば上辺の態度はいくらでも偽ることができるようになる。
では、かおるに対しては?仕事上、常に顔を合わすのだから多少の気遣いはしておいた方がやりやすいはずだ。
けれど、そんなものを日本に戻ってから今まで、樹は見たことがない。恐らく、樹がいなかった時もなかっただろう。容易にそうであることが想像出来るほど、恭祐のかおるに対する態度は酷い。
かおるもかおるだ。どうして、そんな恭祐に従っているのだろうか。現会長である、伯父への恩だけで耐えられるものなんだろうか。
寿でもなく、明確な退社理由が見えないのは…簡単なことだ、心の問題だろう。何かが切れた、途絶えた、もしくはどうでもよくなったのかもしれない。
かおるの心の奥も深い。本人が深い部分にわざとしまっているのか、それとも気付く間もなくどんどん奥へまぎれていったのか。恭祐の威圧的な態度による教育で。
色々なことが引っかかってならない。登場人物は少ないのに、何かが深い部分で解くことが出来ない程絡まっている気がする。
第一、恭祐には糸が絡む前に、捨て去ることが出来たはず。そのくらい簡単に出来る力を会社では持っている。
あんな扱いをするほど、気に入らないかおるをどうして自分のアシスタントとして何年も使い続けたのか。
すっきりしない。何もかもが。
いや、すっきりしないのは他ならぬかおるが絡んでいるからだ。
樹はいかにかおるに対し気持ちがまっすぐ向かっているか、自分の考えることからも思い知らされざるを得なかった。
だから、恭祐と飲みたかった。少しでも情報を集め、何が絡み合っているのか探りたかったから。
知ることでどうなるのかは分からない。でも、かおるを確実に手に入れるためには知る必要があるように思える。
直球で恭祐を攻めたところで、回答が得られるはずがない。そもそも恭祐が相手に直球を投げさせるなんてことはしないだろう。
かおるにしても、不思議と質問をはぐらかす。本人がそれを意図しているのかいないのか分からないところが、また曲者だが。
そんな中で多くの情報を集めるには…。
樹は今朝の恭祐の姿から、夜も会社で働いていたことなど百も承知だった。寝不足に日中の仕事量、加えて残業、その上アルコール。
付け入るようで申し訳ないが、そうでもしなければ欲しい情報にはたどり着けない。
ここまで計算して接しなくてはいけないのが、年下の可愛げのない従兄弟だ。
かおるへ対する恭祐の態度、ニューヨーク出張へ同行させられること、そして週に一度の若林家への訪問。かおるに対して何かが動きだしていることは明らかだ。
何よりかおる自身が変化をしようとしている。
樹はかおると別れると、恭祐へメールを送った。
タイミングが良かったのか、間をあけず返ってきたのは望んだ通りの返事だった。
時計は今日がもう2時間もないことを告げていた。この時間から入れる店は限られている。そんなことを思いながら樹は恭祐のデスクへと向かった。
「そろそろ出るか。」
「ああ、悪いんだが、今日はオレのところでいいか?」
「誘ったのはオレだから、オレのところでも。」
「いや、昨日着替えに戻っただけだから、今日は帰っておきたいんだ。」
恭祐の住まいは会社から然程離れていない。なのに忙しさから帰らず働らくことは時折ある。本人に言わせれば自宅より会社という場所が与えてくれる緊張感がいいのだとか。
けれども最近の忙しさは今までとは違う。わざわざ予定を詰め込み、更に忙しくしている。そうまでして、急に長期の出張へどうして行くのか。
何かが引っかかる。あんなに嫌っているのに、何故かおるを同行させるのだろうか。
何より、決めたタイミングは明らかにかおるの退社を知ってから。
「酒はいくらでもあるが、食いものがないな。」
「今のうちにピザでも注文しておくか。」
樹はピザ店に電話をすると、ピザとサイドメニューを注文した。そして、二人は恭祐のマンションへと向かった。
恭祐の住むマンションの下には深夜営業をしているスーパーもあれば、ジムも備えている。専用エレベーターでしか行けない、恭祐の高層階の部屋からは当然のことながら、東京の夜景が見渡せる。
いかにも女性うけしそうなマンションに部屋。けれど、恭祐が自分のテリトリーに女性を決して立ち入らせないことを樹は知っている。
そう、何人もの体を重ねる相手がいるというのに、誰一人として本気になったことがない。それ以前に、そもそも女性という生き物を信用していないようだった。
が、社会にでれば上辺の態度はいくらでも偽ることができるようになる。
では、かおるに対しては?仕事上、常に顔を合わすのだから多少の気遣いはしておいた方がやりやすいはずだ。
けれど、そんなものを日本に戻ってから今まで、樹は見たことがない。恐らく、樹がいなかった時もなかっただろう。容易にそうであることが想像出来るほど、恭祐のかおるに対する態度は酷い。
かおるもかおるだ。どうして、そんな恭祐に従っているのだろうか。現会長である、伯父への恩だけで耐えられるものなんだろうか。
寿でもなく、明確な退社理由が見えないのは…簡単なことだ、心の問題だろう。何かが切れた、途絶えた、もしくはどうでもよくなったのかもしれない。
かおるの心の奥も深い。本人が深い部分にわざとしまっているのか、それとも気付く間もなくどんどん奥へまぎれていったのか。恭祐の威圧的な態度による教育で。
色々なことが引っかかってならない。登場人物は少ないのに、何かが深い部分で解くことが出来ない程絡まっている気がする。
第一、恭祐には糸が絡む前に、捨て去ることが出来たはず。そのくらい簡単に出来る力を会社では持っている。
あんな扱いをするほど、気に入らないかおるをどうして自分のアシスタントとして何年も使い続けたのか。
すっきりしない。何もかもが。
いや、すっきりしないのは他ならぬかおるが絡んでいるからだ。
樹はいかにかおるに対し気持ちがまっすぐ向かっているか、自分の考えることからも思い知らされざるを得なかった。
だから、恭祐と飲みたかった。少しでも情報を集め、何が絡み合っているのか探りたかったから。
知ることでどうなるのかは分からない。でも、かおるを確実に手に入れるためには知る必要があるように思える。
直球で恭祐を攻めたところで、回答が得られるはずがない。そもそも恭祐が相手に直球を投げさせるなんてことはしないだろう。
かおるにしても、不思議と質問をはぐらかす。本人がそれを意図しているのかいないのか分からないところが、また曲者だが。
そんな中で多くの情報を集めるには…。
樹は今朝の恭祐の姿から、夜も会社で働いていたことなど百も承知だった。寝不足に日中の仕事量、加えて残業、その上アルコール。
付け入るようで申し訳ないが、そうでもしなければ欲しい情報にはたどり着けない。
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